第7話 決戦・ギルド『最前線』VSバジリスク(破)
第7話 決戦・ギルド『最前線』VSバジリスク(破)
第3ターン
一斉攻撃を浴びて怒り狂ったバジリスクは、先端の尖った尾を高貫通の特殊能力を発動させた時雨に食らわそうとする。
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
時雨の叫び声がお正月イベント会場入口へ響く。
ズキューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
重い銃声がイベント会場入口に木霊する。
銃弾がバジリスクのこめかみを撃ち抜き、バジリスクは、動きを止める。
「ギリギリ間に合ったな」
イベント会場入口手前にある時計台の屋上で、まだ硝煙を上げるライフルを手に、男はつぶやく。
その男の名は矢沢京介。
世界最高の遠隔狙撃手。矢沢月乃の実兄。そしてギルド『最前線』9人のうちの1人。
京介の特殊能力は『奇跡の林檎』。
『奇跡の林檎』。それはライフルによって2500メートル離れたビルの上からでも、少女の頭上にあるリンゴだけを確実に打ち抜くという特殊能力。
京介の発動した『奇跡の林檎』がバジリスクのこめかみを捕らえ、バジリスクによる時雨への攻撃を阻止できたことを京介は確認する。
《HYPER CUBE》は世界中のゲーム愛好家より戦略ゲームとも言われており、知略を働かせることができる者は圧倒的に優位に立てる。そして、知略を働かせることを最も得意とする京介は、戦略を練ることで、レベルを上げていき、最前線に立つまでになった。
戦略的見地より、京介は『最前線』のメンバーの心理を考察し、彼らがバジリスクに対して自らの高貫通の特殊能力に任せてそれらを一斉発動するものと予期した。同時に、京介はバジリスクの反撃対象をも予測した。その反撃対象は、『竜神の逆鱗』という最も高貫通の特殊能力を放てる二神時雨に違いない。そこで、京介は時雨を守ることが戦略的に最もバジリスクにギルド『最前線』が勝利する可能性を高めることになると判断した。だから、京介は開戦と同時に時計台へと飛び込み、屋上へと上り、狙撃ポイントを探し、時雨をバジリスクから守るための狙撃体制を敷いた。そして、バジリスクによる時雨の攻撃が開始されようとした瞬間に、京介は『奇跡の林檎』を発動させたのだった。
◇
第4ターン
だがバジリスクは再び動きだす。その鋭く尖った角を時雨へと向けて。
「おい、おい嘘だろ」
京介は驚愕する。
『最前線』にここまで特殊能力を受け続けたボスは、たとえ最新マップのボスであっても、著しく運動能力を落とすのを常としていた。だから、『最前線』のメンバーはこの時間を利用して気を貯めたり、次の攻撃への準備をすることができる。だが、このバジリスクが落とした運動能力は一定程度にすぎない。ゆえにバジリスクは進行を続ける。
「粟山のやつ、HPだけじゃなくってリジェネでもドジっ娘全開じゃないか」
時雨は涙目になりながら、逃げようとする。だが『竜神の逆鱗』ほどの高貫通の特殊能力を発動するとリキャストタイムの間には運動速度も著しく低下することから思うように足が動かない。
「時雨ちゃん、逃げてえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
時雨の姉の雫が叫びながら、漆黒の杖を振り上げ『竜の雷槌』を発動する。だが、時雨が襲われていることからくる動揺が、手元を狂わせ、バジリスクから外れる。
「来るなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
時雨が叫ぶ。
◇
第5ターン
バジリスクの鋭く尖った角が、時雨の体を貫く。




