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第13話 ギルド『最前線』VSホワイトナイト

 その時、スクランブル交差点の中央に白い閃光が走る。




 そこにいたのは全身をボディースーツ型の真っ白な甲冑(かっちゅう)(おお)った騎士。頭部も真っ白な涙滴形のマスクに(おお)われている。そして、右手には白銀の長剣。




 それこそはホワイトナイトだった。




「あのホワイトナイトが……世界大会に現れた……」

「ああ……最強ギルド『最前線』のメンバーを、たった一撃で3連勝しているあの……ホワイトナイトが……」

「ギルド『最前線』の奴らは相当に怒っているって聞いたぞ。こりゃ『最前線』全員対ホワイトナイトが観れるってことか……」

「それだけじゃねえよ、今、戦場には『隻眼の使徒』もいる……こりゃすげえよ!!」


ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア   

ウオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ

ウアアアアアアアアアアアアアアアアアァァ


ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア   

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ

ウアアアアアアアアアアアアアアアアアァァ



 新国立競技場は未曾有の興奮に包まれた。



 観客たちはその興奮を抑えられない。観客同士で顔をみあわせる。どの顔も驚愕と興奮。この事実を会場外の人々に伝えたい。そう思った観客たちは、知人に電話をしたり、ツイッターやLINEで情報を発信する。そんな興奮は、新国立競技場の外でも同じだった。この世界大会の模様はインターネットでも、YouTubeやニコ生公式などが全世界にリアルタイムで無料配信していたし、個人でもこの時代には日本でもグーグルグラスが普及していたことから、それを利用して新国立競技場からツイキャスやニコ生で実況する者が多かった。これらを通じて世界中の《HYPER CUBE》ファンが世界大会を観戦していた。また札幌ドーム、東京ドーム、横浜国際総合競技場、京セラドーム、ヤフードームなど日本各地でのパブリックビューイングや、渋谷のスポーツカフェなどには、興奮や喜びを多くの人と共有したいと思う沢山の《HYPER CUBE》ファンがつめかけていた。そんな《HYPER CUBE》ファンたちも大騒ぎしていた。その興奮は新国立競技場のファンたちに負けないほどの狂気に似た興奮であった。《HYPER CUBE》世界大会は、国民的な関心事であったことから、NHKで生中継されており、また民放でも放映権を得られたTBSが生中継をしていた。ホワイトナイトが出現したときの瞬間視聴率はNHKが60%、TBSが36%、あわせて96%という稀に見る高さだった。またこの瞬間、警視庁長官は興奮した若者たちにより世界大会後に大きな混乱が生じることは必定(ひつじょう)、それが発展し暴徒化する蓋然性が高いと判断。警視庁長官は、それまで現実()世界(アル)の渋谷駅前スクランブル交差点周辺に機動隊員6000人を出動させ厳戒体制を敷いていたが、さらに1万3000人の機動隊員を増員、渋谷の完全封鎖を指示する。同時に長官は、非番であった都内の全警察官に緊急出勤命令を発動する。世界各国の警察トップも、自国の主要な繁華街について同様の指示をしていた。世界は、かつてない興奮に高揚していた。


 この瞬間、ツイッターのトレンドワードは「ホワイトナイト ホワイトアウト 隻眼の使徒 神殺し ギルド最前線 エターナル・ウェーブ・サデニシオン インペラル・タイム 興奮 信じられない #《HYPER CUBE》世界大会」という今回の世界大会の関連ワードが独占する。それは翌日の昼間になっても変わらなかった。それほどの狂気に近い興奮が《HYPER CUBE》ファンたちにあったことから。




 ホワイトナイトがギルド『最前線』のメンバーに3連勝した後に大きな話題になったテーマが2つある。1つは、『ホワイトナイト』と『隻眼の使徒』が戦ったらどちらが勝つかというテーマである。『ホワイトナイト』なら《HYPER CUBE》世界に君臨せし絶対的序列第1位『隻眼の使徒』と互角に戦えるはずと言う者も多かった。そして、もう1つは、ギルド『最前線』全員と『ホワイトナイト』が戦ったらどちらが勝つかというテーマである。ギルド『最前線』は名誉を傷つけられ、憤慨している。そんなギルド『最前線』全員が束になってかかれば、互角の戦いになるだろうとの意見も多かった。


 『ホワイトナイト』が《HYPER CUBE》世界に参戦してくれること。それは世界中の《HYPER CUBE》ファンたちの熱い願望であった。だが、謎のプレイヤー『ホワイトナイト』は、ギルド『最前線』のメンバーに3連勝した後に、消息を絶った。


 だが、そのホワイトナイトが今、再来した。



 新国立競技場を満員した熱狂的なファンたちから、やがて自然発生的にコールが起こる。



「ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!シホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!ホワイトナイト!」



 しばしの沈黙を経て、この《HYPER CUBE》世界大会という大舞台へ出現したホワイトナイト、あなたを我々は歓迎する。そんな(おも)いを込めた《HYPER CUBE》ファンたちによるホワイトナイトコールの大音響が新国立競技場に響き渡る。




                ◇




「京介兄さんの(かたき)っ」


 そう言いつつ最初に飛び出したのは世界最巧の近接戦闘家矢沢月乃だった。

 かつて京介を一撃で沈めたホワイトナイトへ報復すべく月乃が先制攻撃をかける。


 この瞬間、ギルド『最前線』全員VSホワイトナイトという《HYPER CUBE》ファンたちの願望が現実化することが確定した。


 月乃はミスリルの小剣をホワイトナイトに(かざ)す。小剣から爆炎が上がる。月乃は特殊()能力(キル)爆発(ファイヤ)する小剣(ボム)』を発動した。


 『爆発(ファイヤ)する小剣(ボム)』。それは連続攻撃の中でミスリルの小剣が一定の超高速度に達することを発動条件として、小剣はたとえ対象者(ターゲット)に触れなくとも術者が被対象者への攻撃意図を有している限り小爆発を起こすことで対象者(ターゲット)を攻撃するという特殊()能力(キル)。世界最巧の近接戦闘家矢沢月乃を世界最巧たらしめる最上の特殊()能力(キル)

 


 だが、その瞬間、新国立競技場は白い閃光に包まれた。真っ白な視界、観客たちは数十センチ先さえ見えない。

 それえこそがまさしくホワイトナイトの神殺しの特殊()能力(キル)『ホワイトアウト』だった。

 やがて、徐々に白い閃光が収まる。



 観客たちは観た。そこに矢沢月乃が存在しないことを。



 オーロラビジョンのステータス表示には、月乃のHPが0であることが表示されている。

 世界最巧の近接戦闘家矢沢月乃が、わずか一撃での敗北。神殺しの特殊()能力(キル)『ホワイトアウト』の常識外の威力、異様な光景を目の前にして、新国立競技場の誰もが言葉を失った。 


 新国立競技場を絶対的静寂が支配する。



「月乃までもが……か……」

「これで『最前線』の4連敗……信じられない……」

「ホワイトアウト……どれだけ化物みたいな威力なんだ……」


 なんとか言葉を発することができる余裕を持つ者が観客席に何人か現れる。

 その時。



 観客たちは気づいた。

 今、スクランブル交差点の中央で誰も動いていないという事実に。

 ギルド『最前線』のメンバーも、そしてホワイトナイトも。


 だが、ただ1人の少年だけは、ゆっくりと歩く。交差点中央のホワイトナイトへ向かって。


「ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョ」


 少年は雄叫びをあげる。そして続ける。


「ウヒョヒョヒョヒョヒョ。いいねえ、いいねえ、いいねえ。お前、面白いね、最高だよ。だが、雑魚に4連勝したくらいで自分が最強って勘違いしてるんじゃないだろうな?

 最強はな、俺を倒してから名乗れよ。なぁ、三下(さんした)。あ、ゴメン、お前、今指先ひとつ動かせないんだったぁ。ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョ」



 世界最凶のプレイヤー、『皇帝ネロ』ことロックコ・ビンセントは特殊()能力(キル)絶対(インペリアル)時間(タイム)』を発動していた。


 『絶対(インペリアル)時間(タイム)』。この特殊()能力(キル)が発動された場合、発動者と同じバトルフィールドに立つ全プレイヤーは2ターンにわたって完全に移動の自由を奪われ、全ての動きを停止させられる。もっとも、発動者のみはその自由を奪われない。



 そして、京介に撃たれた直後にロックコは自らにリジェネをかけていたことから、すでにロックコのHPはフル。


 観客たちも次第に事態を把握する。

 ホワイトナイトはピクリとも動けない。


 新国立競技場が状況を理解した観客たちからの再度の大きな絶叫に包まれる。


ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア   

ウオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ

ウアアアアアアアアアアアアアアアアアァァ


ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア   

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


エンペラーズタイムウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ


皇帝ネロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ




 今や観客たちは誰もが気づいた。




 皇帝ロックコが帰還したことを。




 皇帝が復活したことを。



次の更新は明日です。

タイトルは「皇帝の復活」。

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