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第9話 混沌(カオス)

第9話 混沌(カオス)


 試合スタートのためのカウントダウンは続く。

 7秒、6秒……2秒、1秒、スタート!


 新国立競技場いっぱいに広がる強力な明るい光。観客たちは眼を開けていられなくなる。と同時に。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドン


 観客の誰もが耳の鼓膜が破れたかと思うほどの大きな雷鳴。

 この時、新国立競技場の観客たちは、みんな競技場に落雷があったと思った。雷鳴の余韻に空気が震える。


 やがて観客たちは視界を回復する。

 そして、その強い光と爆音の源たる者を知る。


 そこにいたのは、ゴシックロリータの赤と黒の衣装の少女。赤いスカートの丈は膝上20cm。そして黒のニーソ。両手には深紅の皮の長手袋、右手には先端に大きなルビーを備えた漆黒の杖。ツインテールにした炎髪に大きな緋色の瞳。左耳にはルビーのピアス。


 二神(ふたがみ)時雨(しぐれ)、その人だった。


 時雨が発動した特殊()能力(キル)(ドラゴニア)()(ンダー)』の最終形態たる『竜神の逆鱗』。それこそは《HYPER CUBE》界で随一の貫通力を誇る特殊()能力(キル)

 それを第1ターンから誰よりも早く発動させることで、先制攻撃に成功したのだった。



オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



 興奮した観客たちの絶叫が新国立競技場を包む。


「みんな、遅すぎぃ。よくそんなノロい発動で予選突破できたわね」


 時雨は笑いつつ挑発するかのように憎まれ口をたたく。


 その特殊()能力(キル)『竜神の逆鱗』により犠牲になったのはアルト・ネイチャー。12才でありながら前回《HYPER CUBE》ヨーロッパ選手権優勝者にして世界大会第3位の実績を持つ。金髪と青い瞳というアングロサクソンの特徴を持つ、まだ幼さの残るその美少年もまた、最強ギルド『最前線』のメンバーであった。

 アルト君のHPは453から260まで激減している。


「い、痛っ。もう時雨ちゃん、いきなりなんてズルいよ」


 アルト君は抗議する。


「ごめんね。アートネーチャーくん!」と時雨。


「アートネーチャーじゃない! 僕の名前はアルト・ネイチャーだ!」

 

 この戦いの最中にあっても、この2人は、そんないつもの緊張感のないやり取りをする。



 その時。


「時雨ちゃん、(すき)ありっ!」


 そう叫びながら、矢沢月乃がミスリルの小剣を時雨に(かざ)す。小剣から爆炎が上がる。


「ひゃん」


 そんな声をあげながら、時雨はその爆発の爆風で、数メートル後方に吹き飛ばされる。



 『爆発(ファイヤ)する小剣(ボム)』。

 連続攻撃の中でミスリルの小剣が一定の超高速度に達することを発動条件として、小剣はたとえ対象者(ターゲット)に触れなくとも術者が被対象者への攻撃意図を有している限り小爆発を起こすことで対象者(ターゲット)を攻撃するという特殊()能力(キル)

 


 1ターンめ、月乃は昨年の南米選手権優勝者でギルド『最前線』のメンバーであるネルソン・セレーゾ神父への連続攻撃をした。これが良いアップとなりミスリルの小剣が一定の超高速度に達するとの発動条件を充足したところで、月乃はアルト君と軽口を叩いている時雨を発見し、『爆発(ファイヤ)する小剣(ボム)』を発動したのだった。


 時雨のHPが450から300へと激減する。



 そんな月乃にネルソン・セレーゾ神父がお返しとばかり特殊()能力(キル)『レンジドライブ』を発動させる。ネルソンネルソン神父のメイスによる打撃で月乃のHPは452から290まで激減する。そんなネルソン神父の足元を同じく『最前線』に所属するプレトが素早く蹴り飛ばし、ネルソン神父が派手に転倒する。


 戦況は一瞬ごとに大きく変化する。



 それは、まさに混沌(カオス)だった。



 歴戦の勇者たちが、ノーガードで戦いあうその様子は、緊張感にあふれ、壮絶で、優雅で、また美しく、新国立競技場のファンたちは魅了されていた。スクランブル交差点の中という舞台の中央で、真っ向勝負を挑む勇敢なる8人の『最前線』プレイヤーたち、その勇姿に新国立競技場の観客たちは誰もが酔いしれていた。




 と、その瞬間、スクランブル交差点の中にいたギルド『最前線』のプレイヤーたちの動きがピタっと止まった。

 時雨も、アルト君も、月乃も、誰もピクリとも動かない。

時雨は『(ドラゴニア)()(ンダー)』を発動しようとして漆黒の杖を振り上げたまま、銅像のように全く動かない。ネルソン神父に倒された月乃は、立ち上がり、歩こうとした瞬間、完全停止している。



きたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


待ってたよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


皇帝ネロおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


インペリアルタイム来るうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう



 会場中で歓喜の叫びが聞こえる。


「やっぱり、こうなるわよね。あのチートね。そして、また、あれが始まる……」


 泉は力を失ったようにつぶやく。


 わざわざ新国立競技場へ足を運ぶほどの熱心な《HYPER CUBE》ファンなら、誰もが知っていた。『最前線』のメンバーの動きが完全に止まったわけを。そして、この瞬間を待ちわびていた。



 皇帝(インペリアル)の出陣を。



 新国立競技場が新たな興奮に包まれる。



 その特殊()能力(キル)を発動したのは世界最凶のプレイヤーの名を欲しいままにする男、ロックコ・ビンセント。

 ロックコは前回の《HYPER CUBE》アメリカ選手権の優勝者であり、またギルド『最前線』の中でも最強と言われる男。『隻眼の使徒』が再来する2ヶ月前までの《HYPER CUBE》界での序列は第1位。すなわち《HYPER CUBE》界の皇帝(インペリアル)

 

 だが、ロックコは、ただの皇帝ではなかった。ロックコの2つ名、それは『皇帝ネロ』。ロックコは、その行状から、史上最も残虐非道と言われた暴君、ローマ帝国第5代皇帝ネロに(たと)えられることが多い。そして、そんな2つ名よりも、また、ロックコ自身の名前よりも、もっと有名なものがある。それこそが今、ロックコが発動したエクストラ特殊()能力(キル)である。




 その特殊()能力(キル)の名は『絶対(インペリアル)時間(タイム)』。

 絶対(インペリアル)時間(タイム)が発動した場合、ロックコと同じバトルフィールドの全プレイヤーは2ターンにわたって全く動くことができない。ただし、術者ロックコのみは自由に動くことができる。そして、この2ターンにわたって、ロックコは残虐非道に、陵虐の限りを尽くす。

 ゆえに、世界最凶と言われ、また『皇帝ネロ』と呼ばれるようになった。ロックコは。



 灰色の長髪、瞳は燃え盛る火のように赤い。


「真打ち登場と行こうか。」


 静かにそう言いながら、ロックコはスクランブル交差点の中央へ、ゆっくりと進む。

 ロックコは月乃の正面へ立つ。月乃は逃げようとするが、ロックコが発動した特殊()能力(キル)絶対(インペリアル)時間(タイム)』のために、1歩も動けない。


「やめてえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」


 月乃の悲鳴が新国立競技場に響き渡る。



第10話以降の内容を考慮し、「R15」と「残酷な描写あり」をキーワードに追加しました。ご注意下さい。

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