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第7話 不確定要因

「では、第4の質問です。あなたの特殊()能力(キル)は、ヒールとリザレクションだけじゃない。あなたは『心理(メンタル)掌握(アウト)』を使える」


 無表情のまま蔵人は続けて言い放つ。


「ちょっと待ってくれ。質問は3つのはずじゃなかったのか?『心理(メンタル)掌握(アウト)』なんて使えないよ。君の質問の意味が分からないんだが……」


 白河院先輩は困惑を浮かべる。


 蔵人は、おもむろに立ち上がる。


「ああ、4番目は質問じゃない。これは命令だからな。俺は、言わば間接的な方法であなたに命令したんだ。今、この俺に『心理(メンタル)掌握(アウト)』を使ってみろとな」


 蔵人は、そう言うとピシっと人指し指を白河院先輩へと向ける。


「白河院先輩。あなたの正体は『ホワイトナイト』。そして、あなたは『心理(メンタル)掌握(アウト)』という特殊()能力(キル)を使える。あなたは、とても優秀だ。『ホワイトワーム』を使って国家機関から機密情報X、すなわち《HYPER CUBE》についての極秘情報を入手して隠蔽した手口は見事だよ。そして、『ホワイトナイト』としてのあなたの立ち振る舞いも、見事だった。俺は今まで『ホワイトナイト』 の正体に辿り着けなかったのだから。だが、あなたは京介さんとの戦いで、ただ1つのミスをした。しかし、そのミスは致命的だった。そのミスのおかげで、俺はあなたが『心理(メンタル)掌握(アウト)』を使えることに気づいた。あなたは俺があなたが『心理(メンタル)掌握(アウト)』を使えることに気づいたという事実を知らなかったようですがね。そして、あなたがその事実を知ったのは、今の俺の第4の質問をした時。だから、あなたは身の危険を感じ、今、俺に『心理(メンタル)掌握(アウト)』を発動した。ゆえに第4の質問は、質問というより命令だ。最初の3つの質問なんて前座にすぎないよ。この命令のためのな。だがな、白河院先輩、いやホワイトナイト。あなたは、それにより俺の罠にかかったっていうことなんだ!あなたは、あなた自身で自分が『ホワイトナイト』だと証明したことになったんだからな」


 蔵人は力強く言い放つ。


「そ、そんな……」


 泉は言葉を失う。


 そして。



「私は演劇部に入部するつもりはないんだが……君は何かの舞台の練習をしているのか? ……私はホワイトナイトではないし、今の君の話をほとんど理解できないでいる。君は何か大きな誤解をしているようだ……」


 眉を(ひそ)めながら、白河院先輩は戸惑いを隠せない。



「ええ、誤解かもしれません。それならば私は謝らなければならない」


 蔵人は白河院先輩に頭を下げる。


「え?」


 泉は驚いて蔵人を見る。



「でも、仮にあなたがホワイトナイトだとすると、俺がさっきの演技をしない限り、あなたは身の危険を感じなかったでしょう。そして、身の危険を感じなければ、ホワイトナイトは『心理(メンタル)掌握(アウト)』を発動しなかったでしょう。だから、俺は真実を知るために、あなたに今の演技をする必要があったんです。いずれにしろ、真実は、まもなく明らかとなります。泉、俺がさっきお前に頼んだこれから毎日この部屋ですることになっていた俺への質問を、今の俺にしてくれないか」


 蔵人はそう言って泉を見る。



「え? さっきのって、あれだよね。」


 半信半疑なまま泉は言う。


「蔵人くん、あなたは感情操作されてますか?」


 泉は不安げに蔵人へ尋ねる。




「ああ、俺は感情操作されてるよ」


 蔵人は笑顔で泉に答える。


「! 良かった~! これで蔵人くんが逆に感情操作されてないことが証明された!そして白河院先輩は『心理(メンタル)掌握(アウト)』なんて使えないし、ホワイトナイトじゃないことも証明されたってことだよね!」


 喜びに泉は涙を浮かべる。



「そうさ。白河院先輩、長らくの失礼をお詫びします。あなたがホワイトナイトだという嫌疑は0.1%です。0と言ってもいいくらいです。審判の結果、あなたは白です。あなたのコンピ研の入部テスト合格が決定されました」


 蔵人は白河院先輩にそう言うと、軽く頭を下げる。



「やった~!! 先輩これから宜しくお願いします」


 泉は笑顔で白河院先輩のところへ飛んでいって、同じく嬉しそうな白河院先輩とハイタッチを交わす。




                ◇




 丁度、その時、泉のスマホの着信音が鳴る。


「なんだろ?」


 泉はスマホに着信したメールを開く。


「そ、そ、そんな……」


 メールを見た泉は絶句する。


「どうしたんだ?」


 蔵人は心配げに声をかける。

 白河院先輩も心配そうに泉を見つめる。



「私が所属しているギルド『旅団幻影(ファントム)』にいる友だちからのメールだよ。《HYPER CUBE》のアフリカ予選決勝が終わったらしいんだけど……」


 泉の手は震えている。


「アフリカ予選って、今まで3連覇しているカーシー兄弟の4連覇じゃないのか。カーシー兄弟は世界大会で最も優勝に近い者の1人と俺は認識している」と蔵人。



「ええ。ネットのアンケートでもカーシー兄弟のアフリカ予選優勝は、ほぼ100%の支持を集めているし、私も同様にそれを支持した」と言う白河院先輩。



「それが……違うの。しかも、優勝したのはタッグを組まないソロプレイヤー……そんなのありる?」


 泉の顔からは血の気が失せている。

 蔵人も白河院先輩も、泉から告げられた事実に言葉を失う。


「ソロでか……」

「ソロプレイヤーが……カーシー兄弟を・・・」


 蔵人と白河院先輩は、同時に驚きの言葉を発する。




「あれ? 友だちは優勝者の顔写真を添付してくれてるんだけど、どっかで見たことあるよ? あっ! 分かった、駅前のファーストフードにある人形だ!」と泉。



 今度は蔵人が顔の色を失う。


「い、い、泉、その優勝者の名前を教えてくれないか?」と蔵人。



「うん。これは軍人さんかな? 称号つきだよ。優勝者の名前はね。」

 泉は続ける。




「サンダース大佐(カーネル)だって」




「サ、サンダース大佐(カーネル)が生きていた……」


 蔵人は苦しげに言葉を絞り出す。


 それは蔵人が最も危惧していた状況の現実化であった。

 《HYPER CUBE》世界大会にホワイトナイトが出現することは、蔵人にとっては規定事項だった。ホワイトナイトに苦戦はするが、辛勝できるだけのギリギリの勝算はあった。だが、そんな勝利の可能性を著しく減少させかねない不確定要因があった。それは世界屈指のプレイヤーからなるギルド『最前線』の中でも最強と言われる『皇帝』と呼ばれし男の存在。そして、さらなる不確定要因の介在、それを蔵人は最も怖れていた。さらなる不確定要因の介在、それは蔵人の計算を根底から(くつがえ)しかねない危惧すべき存在となる。そして長らく消息を絶っていたサンダース大佐の出現は、さらなる不確定要因に他ならない。



「だが、俺は戦わねばならない」


 蔵人は1人つぶやく。




 《HYPER CUBE》世界大会が間もなく始まる。



次回より、いよいよ世界大会となります!

次の更新は1月7日です。

タイトルは「世界大会開戦」です。

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