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第11話 トライアングラー

 泉が《HYPER CUBE》東京予選の会場に入り、チケット記載の席を探す。泉の席の隣には、泉と同じくらいの年の、かわいらしいピンクの髪の眼鏡の女の子が座っていた。


 席をもらった経緯から考えると、泉の席の隣席は、もう1人の出場者である時雨の招待席であろう。泉は、この席に同年齢くらいの男子が座っていることを期待していた。同年齢くらいの男子が座っているなら、それは時雨の彼氏ということになる。これにより時雨と蔵人がつきあっているという泉の不安は、解消される。だが、座っているのは、同年齢くらいの女子。泉は失望しながら、眼鏡の少女に軽く黙礼しつつ、指定席へと座る。


「あの~、蔵人さんから招待された方ですよね。はじめまして。私は時雨の友だちの粟山千秋と言います」

 眼鏡の少女は笑顔で丁寧に自己紹介する。


「は、はじめまして。私は水内泉、蔵人の友人よ」


 友人グループというのは、だいたい同じタイプが集まる。だから、いつもエラそうで不貞不貞しい時雨は、その友人も、そういうタイプだろう。普段そう考えていたから、泉は少し戸惑いながら、自己紹介をして、挨拶をかわす。



 試合開始まで、しばらく時間があったことから、2人は、とりとめもない世間話をする。《HYPER CUBE》のこと、お互いの学校のこと、最初は当たり障りのない会話だったが、粟山さんも泉も、明るい性格なので、会話は盛り上がる。そんな中。


「私は時雨と蔵人くんの戦いサポートをしてるんです。だから2人のトレーニングには、いつも私がいるんですよ」


 粟山さんは、そう言った。

 この少女は、時雨だけでなく蔵人とも知りあいなのか……ならば自分が昨日から悩みつづけている疑念、不安を思い切って聞いてみよう……たとえ最悪な結果となったとしても……泉は決心する。



「あ、あのさ……時雨って蔵人くんの彼女なの?」


 粟山さんは、今まで明く輝いていた泉の瞳に、急に不安の色が浮かんでいるのに気づく。

 そういうことか……と察する粟山さん。

 でも優しい粟山さんは、気づかないふりをしてポーカーファイスで、さっきからの笑顔を変えず、明るい声で即答する。


「違いますよ、時雨は蔵人くんの彼女じゃありません。2人は《HYPER CUBE》のための契約者です」



 泉の瞳に明るい輝きが戻る、心からの安心の色を浮かべて。



「でも、時雨は蔵人くんに好意をよせてます。自分ではまだ気づいていませんが」


 粟山さんは、このことを心の中でのみつぶやいた。言葉には決して出さない。言葉にしては、誰も幸せにならない。むしろ不幸になる。放っておいても、来るべき時は、来るのだから。

 泉と裏腹に、粟山さんは、深く胸を痛めていた。


 粟山さんは分かったから。時雨と泉、どちらかは分からない、だがこの2人の少女のうち1人は確実に不幸になるという宿命を。

 

 トライアングラーゆえの宿命を。


 ポーカーフェイスで表面上は笑顔を取りつくろいつつ……。



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