神様から人間に!?
「わが息子よ、お前は神たる身でありながら世界の管理という義務を怠った。罪というほどのものではないがやはりその罪は許しがたい。わたしの言うことがわかるな?」
「結局のとこ罪なのかそうじゃねえのかどっちだよ」
「あー、どっちだろ?まあ、どっちでもよくね?」
ものすごくアバウトな感じで父である神王が言葉をつむぐ。
そう、俺の父親は神王。つまりは神々の王なのだ。その息子である俺も神の一柱である。
今この場では父は父であって父ではない。神には序列というものは存在しないのだが、唯一つだけ例外がある。その例外こそが神王という存在だ。神王がその他の神々の頂点に立ち、唯一無二の上位の存在として神界を統治する。神であれば先に生まれようが力が強かろうが同列であるが、神王だけは同列として並ぶことはない。ありていに言えばめちゃくちゃ偉い。
そんな偉い神王という存在に対して俺はただただ頭を下げる。
「うざっ」
付け加えるならあまりのうざさに思ったことがこっそりと口からこんにちわしてしまったということだろうか。
「聞こえてっからね?」
「ちっ」
地獄耳かよ。神の癖に地獄と頭に付く能力持ってんじゃねえよ。
「舌打ち?あっ君舌打ちした?」
「あっ君言うな」
「わりぃ」
まったくもって誠意がない謝罪。ま、謝ってもらうつもりもなかったから別にかまわないんだけどな。
「で、結局俺をどうするわけ?」
話を元に戻して尋ねてみる。こういう場合、一体どのような罰が下されるのか見当がつかない。何せ、
世界の管理を怠った神など存在したためしが俺の記憶上はいないからだ。
神は世界を監視しなければならない。
監視する世界は無数あり、それを手分けして監視する。これが神の仕事だ。
なぜ監視しなければならないかというと、神が監視を怠れば世界に混沌が溢れ、それが俺たち神が住む神界に影響を及ぼして神界を崩壊させ、死という概念がない神が消滅してしまう。ついでに神が監視していた世界までも消滅するという悪循環が生まれる。言ってしまえば世界の終わりって奴か。故に神は世界の監視を怠ってはいけないといわれている。
まあ、所詮は憶測でしかない。昔にそういうことがあったならまだしも、ただ予言の得意な神がそういったからという理由でそう信じて過ごしているだけだ。
「まったく考えとりませんが何か?」
あっけらかんとした答え。はい、俺の父はアホです。
呆れたような目で父を見る。
「だって前例ねえし。ただでさえ世界の数が増えて手が足りないってのに……」
「足りないなら補えばいいだろ。嫁のうちの数名にファイト一発仕込んどけ」
「それはいつもしてっから問題ない。その証拠に現時点で身重の妻が一、二、三、四……十四……」
「指折り数えなくていい」
わが父親ながら節操ねえな。まあ、神に倫理観もへったくれもねえか。今数えられた中に姉や妹とかも入ってるし。
「三十七……あ、あいつはまだ確定じゃないから数えないでおこう」
「妊娠させてる数多すぎだよ!」
「だよね~。つかそれ考えたら代わりはいくらでもいるってことじゃん。よし、ならいい事考えた」
これをいやな予感といわずになんと表現すればいいのだろう。
「お前さ、一回人間になってどっかの世界で暮らしてみ? んで、それを面白おかしく家族で観察するから」
「はあ?何言ってんの馬鹿なの?」
「題して『息子観察日記~息子のいけない秘密覗いちゃいました編~』うん、なんかわくわくしてきた」
聞いちゃいないようだ。
「さっそく皆に言ってくる。どの世界で過ごさせるとか、諸々話し合って決めなきゃ」
そう言って父が俺の前から姿を消した。
そして、いくらの時間が経ち、俺は他の神が監視の担当をしていたとある世界に人間として送り込まれた。
それが俺が神であった頃の最後の記憶。
そして、ある一家の元に人間として生まれたのが現在の俺。
神代光 本日十七歳。
誕生日である今日、俺は自らがかつて神であった事を思い出した。