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page00:Prologue
オカルト用語が時々ちらほら出て来ますが、そこらへんは気にせずお願いします。
雨が降っていた。
黄色いテープで遮られた境界の向こうに、元々、そこに在る可き物では無いモノが放置されていた。
タイルか何かで出来た石畳の上に、無造作に垂れ流された、インクでは無さそうな液体。――其の色は画家か何か…絵の専門家――プロフェッショナル――で無い限り、出せそうに無い見事な緋。
其の上に、芸術家が造った人形を、テロリストがこれでもか、という位に破壊し尽くしたかの如く、あらゆる細い場所が歪曲した人形が、黄色テープと緋の上に陣取っていた。
「…う」
見ていた彼女――立柳 颯稀――は、立ち込めるうざったい位の異臭に、思わず顔をしかめ、鼻を摘まんだ。しかし目だけは人形から逸れる気配を見せず、釘付けになっている。
(また…)
颯稀は人形から目を逸らした。
(出たか)
―――――
彼女は自身を吸血鬼と呼び、彼女の友は人間と呼ぶ。
――彼女は、
半吸血鬼なのだ。