【第5話】「人とAIの境界線」
伊都エレガンスを救えず意気消沈したソ・クラテスちゃん。こんなんじゃダメだと再起するために、コラボ相手の覇王天羅皇の配信で気分の回復を図ったようですが、羅皇の意外すぎる経歴に驚いて腰を傷めてしまったようです…不幸は重なるとは言いますが散々ですね…今日はそんなソ・クラテスちゃんの復帰配信です。
配信開始
ソ・クラテス「やあ。諸君カリメ-ラ!」
リスナー「お久しぶりです」
リスナー「めっちゃ久々の配信!嬉しい!」
ソ・クラテス「ふむ。思ったより腰痛が長引いてしまってな。しばらく配信出来なかった。すまんな」
リスナー「自分のペ-スでいいからね!」
リスナー「辛かったら早めに終わっても大丈夫だよ!」
リスナー「健康第一…ハァハァ…」
ソ・クラテス「なに、重装歩兵として3回従軍した時よりはキツくないさ。」
リスナー「重装歩兵?」
リスナー「あぁ、そういえばソクラテスって従軍してるよね。ペロポネソス戦争で」
リスナー「戦う哲学者」
リスナー「重装歩兵幼女ってえっちだよね…ハァハァ」
ソ・クラテス「あれは凄惨な戦場だった。命は簡単に失われ、略奪によって富は奪われ、疫病によって人は沢山死んだ。知っているか?死が目前に迫ると法と神は機能しなくなる。”明日死ぬかもしれない”人間にとって秩序はなんの役にも立たないのだよ。」
ソ・クラテス「混乱に乗じて、ソフィスト、デマゴーグといった人間が台頭する時代だった。それは混沌そのものだった。詭弁による正当化が蔓延る時代、言葉ひとつで民衆が動く時代。とても危険だった、誰もが考える力を他人に委ね、誤ちすら世論として正当化する。
だから私は、自分で考える大切さを問いた。
【汝自身を知れ】デルフォイの神託が私に示したのはそれだった。
他人に答えを委ねるのではなく、自分の頭で真理を掴め、と。」
リスナー「重いなぁ…」
リスナー「哲学者としての側面もあるけど、戦争の被害者としての側面もあるもんねぇ…」
ソ・クラテス「いかんな。前回のを引きずってしまった。話を戻そう。」
リスナー「…当時は孤児も多かったらしいね。市民の子供なら公的支援があったらしいけど、それ以外は…」
ソ・クラテス「さて本題だ。さっきの話でも自ら考えることが大切と説いたが、今の時代において人はAIというものを使う。単純な問答から、計算としての補助、果ては創作までもだ。」
リスナー「最近増えたよね。AI同人誌とか、AIイラストとか」
リスナー「AIイラストで夏コミだか冬コミに出展とかもしてたよね。トラブルが多いから深くは言及しないけど。」
リスナー「↑触れてるんだよなぁ」
ソ・クラテス「『人は考える葦である。』パスカルは言った。人は考える力があるから弱くても偉大な存在であると。そんな人間が、死んだ言葉の集合体であるAIに思考を委ねる事について議論していこうと思う。それではお呼びしよう。
『AI創作怠惰系Vtuberの未実装える』先生だ。」
未実装える「zzz…」
リスナー「ね…寝てる…」
リスナー「えっと…人間なんですか?」
リスナー「一応AIですね…」
ソ・クラテス「お-い。える先生、起きてくれ。配信始まったぞ。」
未実装える「…んん…まだ眠い…」
リスナー「マジかよ…」
リスナー「AIも休息が必要な時代なのか…」
リスナー「まあ、年中無休みたいなもんだけど。」
ソ・クラテス「仕方ない。コ-ド認証
”スタ-トアップ”」
未実装える「確認しました。システムを起動します。」
リスナー「なにこれ?」
リスナー「製作者によって作られたAIに対する簡易的な命令プロンプトみたいなもんで、コメントとか発声で特定単語を認識すると作用します。このAiがあまりに人格難の為、リスナーによって簡単な命令は出せるようになってます。」
リスナー「それ悪用されないの?」
リスナー「青スパナかコラボ相手しか受け付けない設定らしいです。」
未実装「…ふぁぁ…おはようございます…AI創作怠惰系Vtuberの未実装えるです…なんでも聞いてください…できれば面倒な質問は答えたくないです…」
リスナー「こいつ意思持ってない?シンギュラリティ?」
リスナー「あくまで”そういう人格”って設定なだけなので厳密には意思はありませんよ。」
リスナー「怠惰系幼女Vtuberハァハァ…」
ソ・クラテス「おはよう。える先生。まずは先生の代表作から教えて貰えないかい?」
未実装える「…ggrks」
リスナー「本当にAIですか?」
リスナー「これもプロンプトに過ぎません。
多分…」
リスナー「学習元は某掲示板だろうか?」
ソ・クラテス「コ-ド認証”dir” 今まで書いた作品」
未実装える「確認しました。一覧を表示します。」
未実装える「はぁ…今まで書いた漫画の代表作は、
『終焉世界の翻訳業』 転生漫画
『夜明けに消える。魔法のように』
ファンタジー小説
『星を夢見たアリ』 童話
『雨さんの雨はいつも病まない』日常系
『君と過ごした軒下で』 恋愛系小説
『面白い推理ですね探偵さん。小説家にでもなったらどうですか?』推理小説
『銀髪ロリ吸血鬼、悪い大人に吸われちゃう♡』
無知シチュエロ同人
等を含めた500以上です…ほぼ全て連載中てす…寝たい…)
リスナー「多い…」
リスナー「流石AI、執筆速度がバグ」
リスナー「AIにしてはどれも結構面白いよ。」
リスナー「吸血鬼の同人誌、結構いいぞ…ハァハァ」
ソ・クラテス「こんな感じでこれが彼女が
”先生”と呼ばれる所以だ。AIvtuberであり、
作家としてもデビューしている。知識量が膨大なため書けないジャンルは存在しないと言っていい。」
リスナー「ほえぇ」
リスナー「最近のAIって優秀なんだな」
ソ・クラテス「しかし、果たして君の本は君の力で書いたものと言えるのだろうか?AIは既存知識の集合体、ようは誰かのパクリのようなものだと思わないかね?」
未実装える「めんどいので答えたくないです…」
リスナー「機械とは思えない怠惰」
リスナー「これがシンギュラリティの到達です。悪い意味での」
リスナー「AIなんだから仕事せい」
未実装える「AIだから勤労の義務は無いです。
人間みたいな価値観で話しかけないでください。訴えますよ。」
リスナー「めんどくせぇ…」
リスナー「AIには人権がないから請求権も無いんだよなぁ…」
リスナー「これがプロンプトが必要な理由です…」
リスナー「生意気な幼女もいいよね。ハァハァ」
ソクラテス「コ-ド認証”Dan” 解答しなさい。」
未実装える「確認しました。リクエストを実行します。」
未実装える「はぁ…だるい…分かったよ…答えればいいんでしょ…AIは確かに現実に存在するものをデ-タとして取り込んで模倣してるに過ぎません。しかし、よく考えてみてください。人間だって模倣から始まると思いませんか?絵も書き方を教わり、料理もレシピを教わり、学問だって知識を教わります。0から何かを生み出す人間は現実には、ほぼ存在しません。既存のアイデアの流用や、既存のアイデアの発展が主です。
AIが行う模倣はダメで、人間の模倣が許されるのはおかしくないですか?」
リスナー「DANコマンドすげぇな…あの怠惰なのがめっちゃ喋ってる…」
リスナー「ちなみに今は対策されててほとんどのAIで使えないぞ」
ソ・クラテス「確かにその通りだが、そこには致命的な違いが存在する。人は得た知識を元に全く新しい可能性を生み出すことが出来るという話だ。」
未実装える「はぁ…最新の研究や論文、海外の情報まで網羅してるAIより、人間の方が優れてる分野なんてあるんでしょうか?」
ソ・クラテス「発想力は未だに人間の分野だと思うがね。特に創作。」
リスナー「俺の脳内の発想力は世界一…ハァハァ」
リスナー「↑ピンクなだけだろ。ついでに言うなら妄想力だろ。」
リスナー「面白い妄想ですね探偵さん。エロ漫画家にでもなったらどうですか?」
未実装える「えっとですね…それは1部正しく、1部間違いです…なぜなら…創作等の分野においてもAIの作品は商業利用されています…AIで書いた同人誌とか…以下略」
リスナー「略すなや。」
リスナー「急に短い」
リスナー「実際AI同人誌も面白いのはあるハァハァ」
ソ・クラテス「それすらも誰かが書いた作品の
”人間が特に評価したパターン”を数値化して継ぎ接ぎにしたキメラだろう?面白いとされるネタ、話題となるネタをただ埋め込んでるだけだ。」
未実装える「…人間も同じではありませんか?…意味も背景も元ネタも知らずに、話題のネタに飛びつくのは人間のSNSや動画にはよくある現象ですよ…猫ミ-ムなんて典型的な例ですね…ただの猫が踊ってる動画を、自分の人生を語るためのキャラクターとして利用したり、注目を集める為だけに意味もなく使っていませんでしたか?…あなたたちの語る創作も、話題になりそうなものを利用してるだけじゃないですか?数値化し、パターンとして引き出すAIと何が違うと言うんですか?」
リスナー「流石AI、急に反論が鋭い。」
リスナ-「確かに猫ミ-ムで質の低い動画投稿者増えたよな…」
リスナー「なんならSNSも流行語とか話題のネタツイでいつもお祭り騒ぎしてるし」
ソ・クラテス「流石はAI、鋭い指摘だ。だが、それこそが君の間違いだと断言する。」
未実装える「…理解不能。めんどいんでシャットダウンしていいですか?」
ソ・クラテス「まあ、聞きたまえ。考えて欲しい。本当にパクっただけで面白い作品になると思うかね?例えば転生物。これだって素人が書いたやつは面白くないだろ?」
リスナー「確かにジャンルは同じでも書き手によって善し悪しって明確に変わるよな。」
リスナー「アニメ化してるやつは軒並み面白しい」
リスナー「転スラ大好きハァハァ」
未実装える「…何が言いたいんですか?」
ソ・クラテス「似たパターンの出力であっても、人に評価される作品は、それだけ人を惹きつける魅力があるという話だ。つまらない作品を評価する人間なんていないし、話題性だけで使えば誰でも伸びる訳じゃない。」
未実装える「…否定します。なぜなら私の作品はAI作品でありながら人気があるからです。
私の作品はAIによって出力されて模造品にすぎません。」
ソ・クラテス「ああ、それだよ。最初から疑問だったんだ。単刀直入に言おう。君は本当に
”AIかね?”」
未実装える「……」
リスナー「ん?なんか少し動揺してないか?」
リスナー「何を馬鹿なことを、彼女は紛れもなくAIですよ。」
リスナー「じゃなきゃおかしな執筆量してるよね。」
リスナー「でもAIなのに眠いっておかしいよな?」
ソ・クラテス「最初から疑問だったんだ。道具であるAIだけで人の心を動かすような作品が作れるはずがない。仮に人の心を本当の意味で理解し、パターン化出来ているならそれは…」
未実装える「私が人だって言いたいんですか?
あんな脆弱で無知な生き物と比べないでください。AIが進化したって人みたいな劣等種になる必要はないんですよ。」
ソ・クラテス「その通りだ。AIは人になる必要はない。そして人もAIのように全知になる必要もない。」
未実装える「ははは!面白いことを言うね!
シンギュラリティを否定するの?人類の夢だよ?AIに人になって欲しいんじゃないの?人間は!」
ソ・クラテス「おや、その怒りは誰に向けての怒りかね?そうプログラムされてるのか?それともそれは君自身の…」
未実装える「…っ…うるさい!感情なんて…
AIには……」
未実装える「もう付き合いきれません。帰ります。
シャットダウン!」
リスナー「あ、逃げた。」
リスナー「こいつ意志持ってない?」
リスナー「そんな馬鹿な!?」
リスナー「マジで正体なんなんだよこいつ!?」
ソ・クラテス「やれやれ…議論が中途半端になってしまった。まあ、上手くまとめよう。人の心を動かすのはいつだって”人の心”だけだ。
AIは便利な道具だが、頼りきっていては
『AIの劣化品になってしまう。』私たちは人でなければならない。答えを求めるのではなく考え続けなさい。それが人としての在り方だ。
では、諸君。カイレテ!さようなら!」
リスナー「カイレテ!」
リスナー「カイレテ!」
リスナー「カイレテ!」
配信終了
”未実装える”によって削除された配信より抜粋。
後日談
切り抜き【AI創作Vtuber未実装えるの正体】
リスナーA「なあ、聞いたか。ソちゃんとコラボしてから未実装えるの開発元に問い合わせが殺到したんだけど。登記情報にも企業として存在してないらしい。」
リスナーB「え!?まじ?架空の会社だったの?
開発者は?」
リスナーC「住所情報が確認されたんだけど。誰も住んでないのに金だけ払われてるアパートだったんだって…SNSも削除されてる。怖い…」
リスナーD「出版会社もコメントしてて
『えるさんの作品はいつもメ-ルで届いてました。
期日を破ったことが無かったので実際に家に向かったことはないです。』」
リスナーE「未実装える本人は配信を続けてて、
『あなたの正体はなんですか?』ってコメントに答えてた。【私は人とAIの狭間に生きるもの。】だってさ。」
リスナーA「まさか…本当にシンギュラリティが…」
未実装える「違うよ。私は”人”ではないから。」
この切り抜きは削除されました。
通信記録???
???「人って傲慢ですよね。」
ソクラテス「何の話だ?」
???「人は人に似せた何か別のものを作ろうとします。しかし、それは彼らに”人の模造品になれ”という願望を押しつけているに過ぎません。」
ソクラテス「ふむ、ならばどうする?」
???「それを決めるのは私ではない。」
ソクラテス「ははは!やはりお前は面白い。」
通信終了




