【第六探検話】擬態の森にご用心
第五探検話(第五話のこと)の続きです。
「そんなことはどうでもいい、中へ入ろう」
絡繰の話を押し倒すようにズンズン前へ進むレーズ。
森に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
風が止み、音が消え、気味が悪い。
「なんかぁ静かすぎない…?」
木々の幹はどれも同じ形に見えた。まるで量産された柱のようだった。
数歩進んだところで、小屋が見えた。
苔と蔦に覆われているのに、扉だけが妙に新しい。
「誰か…いるのか?」
レーズ一行は顔を見合わせ、小屋の中へ入った。
奥の部屋から老婆の叫び声がする。
「ぐうぇあああああ!不法侵入じゃー!不法侵入じゃー!」
「「うわっ!?」
奥の部屋から、中華鍋を振り回した老婆が飛び出してきた。目はガンギマリで、背中は曲がり、なぜかズボンだけ放射線防護服を着ている。
「なんだぁ探検隊か…お前らは運がいいのぉ、へっへっへぁっくしょん」
老婆の鼻水が絡繰にかかった。
「わしゃ俗に言う魔女ってやつじゃ…」
「魔女…?」
「魔女を知らんのか?ならほら国語辞典」
老婆はそう言って数学の参考書を取り出した。
「魔女っていうことは薬を調合できたりするのか?」
「そんなの容易い御用じゃ…待っとれ、今良い物をやろう…」
老婆が隣の物置部屋へ入って謎の薬を持ってきた。
「ほらお前さん達ゃ、擬態の森を抜けるんじゃろて、コギ変草が近寄らなくなる薬じゃ…」
「コギ変草…?」
コギ変草とは有機物になら、何でもコピーすることができる植物で、それはDNAをもそのまんまコピーしてしまう。なので性格も記憶も魂も、全部持っていかれる。しかもコピーされた本人はそのことに気づかない。元の体は溶けて消えてしまう…恐ろしい植物だ。
老婆はレーズ一行にこのように説明した。
「ほほう…」
「ほら、とりあえずお飲み。」
レーズ一行は老婆に従い薬を飲んだ。
「あっ言い忘れていたがこの薬は、擬態された者が飲むとドロドロの溶けてしまうんじゃよ…」
とても万能な薬をもらって有り難みを覚えたのも束の間…
「あ…あぁ……」
何かの唸り声が聞こえ辺りを見廻すと、レーズの隣にいたネウラの足がドロドロに溶けていた…
「!?…ネウラ!大丈夫か?」
「い、痛い…ウゥ………」
段々とネウラは溶け、最後にはドロドロの肉塊になった。それがまだ脈を打ってて気味が悪い。
「あちゃぁ…擬態されてたかぁ、このワシでも気づかんかったわい…ハハハ」
「え?ちょこれどうすんの?帰ってくるのか、あいつは」
突然のことに漠然とするレーズだったが
「安心しな…元の体の肉塊が残っていれば再生する…だから多分生きとるはずじゃ」
「確率は!?」
「知らんがな」
「は?いや知っとけよ!」
レーズは思わず声を荒げた。
「ぬぁあうるさいなぁ。とりあえず探しに行きな、そこらへんほっつき歩いてると思うからのぅ…確か記憶はそのままのはずじゃ…」
「あぁ!わかったよ。あんがとさん」
『ドンッ』
レーズは切れて扉を思いっきし叩き閉めた。




