【第十四探検話】復元したデータ……
第十三探検話(第十三話のこと)の続きです
レーズが把手を持ち上へ引っ張ると、暗い地下へ続く階段が姿を現した……
レーズが思わず声を上げる。
後ろから覗き込んだネウラが、気楽な声で言った。
「地下室があるんだねー」
「ワクワクするじゃん」
「俺はイヤな予感しかしない……」
クリが懐中電灯を点灯する。白い光が階段を照らし、石段の縁が浮かび上がった。
ところどころ欠けているが、最近崩れた様子はない。
「構造安定度、許容範囲内です。崩落の危険は低いと推測」
「推測かよ」
「保証はできません」
「そうかぁ……」
レーズは銃を構え、深く息を吐いた。
「……行くぞ」
「はーい」
「後ろでいいのぉ?」
「真ん中にいろ」
一行はゆっくりと階段を下り始めた。
一段、また一段と。
靴音がやけに大きく響く。
外の世界とは違う、閉じた音の反響だった。空気は冷え、わずかに油と金属の匂いが混じっている。
壁には古い配線が走っていた。ところどころ被覆が裂け、中の線が露出している。
だが完全には朽ちていない。
階段は想像より長かった。
建物一階分どころではない。かなり深い。
やがて、平坦な通路に出た。
コンクリートの床。直線の壁。人工的な角度。
明らかに研究施設系の造りだった。
通路の先に、扉が三つ並んでいる。
それぞれの扉にはプレートが取り付けられていた。
レーズはライトを向けて読み上げる。
「……部屋か」
左の扉。
【自室】
中央の扉。
【物置】
右の扉。
【自室】
「自室が二つ?」
ネウラが首をかしげる。
「人の生活圏だった可能性が高いです」
あまりにも静かすぎる。
生活の痕跡があるはずの場所なのに、音が一切しない。
レーズが一歩前へ出た、その時だった。
――カチリ。
右側の【自室】の扉から、はっきりとした音がした。
「止まれ」
レーズが低く言う。
空気が止まる。
呼吸すら音になりそうだった。
次の瞬間。
ギィ……と、ゆっくり扉が開いた。
蝶番が軋む音が、やけに長く響く。
中は暗い。
ライトがまだ届かない奥行きがある。
だが、気配がある。
わずかな動き。影が揺れた。
「来るぞ」
銃口がまっすぐ向けられる。
指が引き金の圧を測る。
そして……
「あ!いたいた!」
場違いなほど明るい声が地下室に響いた。
緊張が一瞬で裏返る。
扉の中からひょっこり顔を出したのは、サイマだった。
「なんだ……ってかサイマじゃん!何してたんだよ!」
レーズの銃口が下がる。
「いやぁ……斯く斯く然々でぇ……」
サイマは悪びれた様子もなく頭をかいた。
話をまとめると、こうだった。
トイレに行きたくなり、少し離れた川の方へ行った。
足場の悪い石場で足を滑らせ、そのまま崩れた地面ごと落下。
気づいた時には洞穴の中にいたらしい。
戻ろうとしたが、上へ続く道は崩れて塞がっていた。
仕方なく前へ進んでいたら、人工通路に出て、ここに繋がった……という流れだ。
「運だけで生きてるだろお前」
「よく言われる」
「威張るな」
ネウラが手を振る。
「そういえば自室が二つあるけど、特に何もなかったよ」
「もう見たのか」
「うん、ちょっとだけ」
「じゃあ真ん中の物置に入ってみるか」
レーズは中央の扉の前に立ち、取っ手をゆっくり回した。
抵抗はほとんどない。
扉が開く。
中は思ったより広かった。
大型の表示装置が壁一面に設置されている。
電源は落ちているが、割れてはいない。
床には紙束が散乱し、ダンボール箱がいくつも積まれ、いくつかは崩れて中身が飛び出していた。
記録媒体、工具、部品、見たことのないモジュール。
「あ!これカセットテープ」
ネウラが紙の山をかき分けながら一本つまみ上げた。
ラベルは手書き。
だが擦れて読めない。
そのカセットテープをクリに渡すと、クリは胸部スロットを展開した。
【ミュージックを読み込み中……】
軽快な表示音が鳴る。
数秒後。
「これ違うやつじゃん」
「えー」
「どうりで軽いと思った」
ネウラが次を漁る。
「じゃあこっちは?」
次に持ってきたカセットテープには、はっきりと印字されていた。
【機構記録媒体】
「それっぽいな」
クリが受け取る。
スロットへ装填。
内部で小さな駆動音がした。
【修復可能データを確認中……】
「おぉ!これだ!」
あまりにもすんなり見つかってしまった。
逆に拍子抜けするほどだった。
全員の視線が、クリの表示部に集まった。
【データを修復中……】
「おぉー!」
三人が声を上げて喜んだ。
すると突然、後ろから
「人様の敷地に勝手に忍び寄り、物まで物色するとは……けしからん」
第十四探検話をご拝読いただきありがとうございます。
明日は23:00に第十五探検話を投稿します。




