【第十二探検話】損失したデータ……
第十一探検話(第十一話のこと)の続きです。
〈後書きに造語の解説が記載されています〉
地面は黒く結晶化し、空には逆さまに流れる雲。
遠くには、上下が反転した塔のようなものが何本も突き刺さっている。
「……なあ」
レーズがぽつりと言った。
「ここ、どこだ?」
「現在地は静岡県松崎町です……」
「いやどこだよそれ!」
レーズが即座に突っ込んだ。
「クリ、お前まだ調子悪いのか?」
「内部データ、破損率三十八パーセント……位置情報ログが混線しています……」
クリの声はいつもよりノイズが混じっている。
サイマが腕を組んだ。
「さっきの充電、応急処置だったからな。完全には戻ってないんだろ」
「復旧方法は?」
「バックアップ媒体の回収を推奨します……」
「どこにある?」
「この周辺に、旧型記録媒体の反応……カセットテープ形式……」
「なんでそんなアナログなんだよ」
「破損時でも読み取り可能なようにするための物理保存です……」
ネウラがニヤッと笑った。
「つまり、探せば直るってことだね」
レーズは銃を肩に担いだ。
「よし、テープ探しだ」
黒い結晶の大地を踏みしめ、三人と一羽と一機は歩き出した。
「でもよ、どこにあるんだ……」
「その辺の建物を見て廻ろ〜」
そうして一軒一軒、隈なく調べた。
最後の一軒……
錆びたトタン屋根から濁った水滴が途切れ途切れに垂れてくる。
「ここが最後だ……」
辺りはもう暗くなっていた。
「とりあえず明日調べよう。今は飯が先だ」
レーズが夕飯の支度をしていると、
「今日は私が作るよ」
とネウラが言い、レーズから調理器具を取り上げた。
「そうか……じゃあよろしくな」
レーズは夕飯をネウラに任せると、クリに内蔵されている懐中電灯を使い、逆さまの塔を調べた。
「これは何なんだ……」
「解析しています」
クリが解析を始めてから三分が経過した……
「解析完了……解析結果……」
【解析物 : 電波塔】
【詳細 : 電波を送信・中継することができます】
【状態 : 優良】
とクリの腹部モニターに表示された。
「ふーん電波か……」
この時レーズは地下洞のテレビ局へ向けて現状を配信したくなった。
「この電波塔を使って、地下洞へ現状を配信する事はできるのか?」
「可能です。が、この電波塔が地下洞まで繋がっているかは不明です……」
なんて事をしてると、
「ご飯できたよー!」
キャンプ地からネウラの声が聴こえてきた。
レーズとクリがキャンプ地へ向かうと、机の上にダークマターを乗せた皿が三枚と食パンが一斤あった。
「こ、これは何?」
レーズがダークマターを指差して言った。
「これは卵焼きだよ!」
ネウラは胸を張って言った。
「嘘だろ、形が……」
レーズはダークマターをぐるぐる見廻した。
皿の上には、卵焼きとは思えない黒光りする物体が鎮座している。表面はつやつやしていて、ところどころ小さく泡立っていた。
「ちゃんと卵から作ったもん!」
「どんな工程踏んだら卵焼きがこうなるんだよ」
「えっと……まず、割るでしょ……っしたら岩の上に乗せてグチャグチャしながら固まらせてぇ……」
ネウラが説明してるところをレーズが割り込んで、ダークマターを口にした。
「うん……………ウッ……」
そのままレーズは倒れた……
「エッ……ちょ大丈夫?」
そして翌朝……
レーズは吐き気と共に目を覚ました。
「ウ゛ッ゛、気゛持゛ち゛悪゛い゛」
レーズは川を見つけると、そこで嘔吐した。
レーズがキャンプに戻るとサイマの姿がない……
「あれ、そういえば昨日の夜から見てないな……」
レーズはサイマを探すために声を出して名前を叫んだ。
その声でネウラ達が目を覚ました。
第十二探検話をご拝読いただきありがとうございます。この後の20:10に続きの第十三探検話を投稿いたします。もし宜しければ、そちらもご拝読ください。
——————造語一覧——————
機構記録媒体 : 情報および機構システムを復元するための保存媒体。
旧型機構記録媒体 : 初期世代の機構記録媒体。耐損傷性を重視した物理保存方式で、カセットテープ形式が主流。
(登場していない)新型機構記録媒体 : 最新規格の機構記録媒体。USB互換形式で高速読み取りが可能。
クリの腹部モニター : クリの腹部に内蔵された表示装置。各種解析結果や状態情報を映す。表示方式は有機ELらしい。




