【第一探検話】彼方の緑へ
第三次世界大戦によって地上が核に汚染されてから数百年――2354年。
人類は太陽を捨て、地下洞で生きていた。
長い地下生活と放射線の影響により、人々の身体にはさまざまな“変異”が現れている。強力な能力を得た者は地上の探検を許可される一方、能力を持たない一般人は地上への立ち入り、探検を固く禁じられていた。
そのため、人々は地上は死んだ世界だと思っていた。
しかし、探検隊の探検報告では、死んだ世界ではなく、異常な変異を遂げた緑の大海原⦅通称⦆となっているようだ。
そんなイミテに興味を持つ一人の無能力者の少年が危険を承知で地上を目指す。
探検家に憧れた少年の小さな探検は、やがて世界の真実へと繋がっていく。
地下から始まる、莫大な地上の探索物語
「今日も探検家の探検報告か……俺もいつか、ああやって報告してみてぇな」
レーズはモニターを見上げながら呟いた。
画面の中では、防護装備の探検家が緑の密林を進み、淡々と解説を続けている。
「お前には到底無理だな、一般人」
隣に座っていた大柄な男が、肩を叩きながら笑った。
「なんだぁ、俺だって能力はあるさ!」
レーズはムッとして声を荒げる。
「じゃあ何ができるんだってんでい? 一般人さんよォ」
男はニヤつきながら、さらに挑発を重ねた。
「えぇと、ほら。この引き金を引くと――」
レーズは見せつけるようにリボルバーを持ち上げた。展示用のダミーだと思っていた。
《バキュンッ!》
乾いた破裂音が店内に響いた。
男の頬が弾け、椅子ごと後ろへ倒れる。
数秒遅れて悲鳴が上がった。
「……ん?」
手が震える。煙の匂い。硝煙。
本物だった。
「あぁこれ、やっちまったな……」
非常警報が鳴り始める。
「ヤベェ、逃げるか」
レーズは駆け出した。
(俺は悪くねぇよな。先に挑発したのは向こうじゃけ……)
レーズはぶつぶつ言い訳をしながら自宅の扉を閉めた。
警報もサイレンもここまでは届かない。薄暗いワンルームに、古い換気機の音だけが回っている。
靴も脱がずにベッドへ倒れ込み、そのまま寝ようとした、その時だった。
卓上ラジオが急にノイズを吐いた。
「〜〜昨日発表されたイミテの汚染源は偽物だったことが判明。本物は依然として未発見とされています……ザ、ザザッ〜〜」
「んお?」
レーズは飛び起きた。
「偽物? おぉマジか」
地下政府が“解決間近”と発表していた例のニュースだ。多くの探検家たちの間でも話題になっていたはず。
つまり、まだ誰も見つけていない。
「…んてことは、まだチャンスあるってことじゃねぇか」
レーズは部屋の隅のゴミ箱に突進した。
丸めて捨てた紙を引っ張り出す。
『地上脱出ルート(仮)』
『警備見廻り時間表』
『地下洞昇降坑警備員交代時間表』
「ッよし」
ベッドの上に紙を広げ、ペンで新しい線を書き足す。
「どうせ捕まるんだ、だったらでっけぇことやって死刑の方が楽しいだろ」
その時、再びラジオが鳴った。
「〜〜本日、違法発砲事件の通報あり。該当区画の住民は外出を控えてください〜〜」
「へへ、もう出回ったか」
レーズはカーテンを閉めた。
「……今夜だな」
レーズは三時間、地下洞の見取り図とにらめっこしていた。
何本もルートを書いては消し、消しては書き直す。成功率はたぶん三割。体感だと一割。
「うん、十分だろ」
深夜二時。
地下洞警備と昇降坑警備、双方の交代兼メシ休憩が重なるわずかな空白時間。
レーズはそこを狙った。
防護コート(中古)、呼吸マスク(型落ち)、非常灯(点滅気味)、サップレッサーをつけたリボルバー(違法改造品)。
装備チェックは三秒で終わった。
「ヨシ!」
「絶対ヨシじゃない気がするがまあヨシ!」
深夜の地下は昼よりもうるさい。
配管の振動、換気の轟音、遠くの機械音。
だから足音が紛れる。都合がいい。
立入禁止区画のシャッター前。
「ここを右、監視カメラは死角三秒……」
《シュピュンッ》
「うん完璧」
ダクトの下を這って通過する。
服が引っかかってちょっと破れた。
「お気に入りのズボン…」
そして…
イミテ行き地下洞昇降坑のハッチが見えた。
分厚い金属扉。封鎖テープ。警告表示。
『能力未検出者の地上進出は重罪』
レーズはそれを三文字読んだ。
「長ェ文章だこと」
レーズはハンドルに手をかけ、そのまま地上、イミテへ向かった
「こ、これがイミテか…」
最後までお読みいただきありがとうございます。このお話は気に入っていただけましたか?
このお話と似たような類似作品は沢山あると思います。ですが、やはり作者が違うのでお話の展開やその他諸々も変わってきます…ってのを描いてる途中で何を表現したいかわからなくなってきたのでもうやめます。
続き、楽しみにしといてください!
次回の投稿は二月十三日の午前八時です。




