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陰陽師転生 神は制服を着る 彼女は笑い俺は嘆く  作者: 織部
熊野古道

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天狗騒動顛末

「わしら、頼まれただけやで」

「そうや、人族解放軍にそそのかされたんや。わしらも被害者や」


「晴明がやったことへの仕返しをしようとしただけや。それは当然の権利やろ」

天狗たちは、自分たちが悪いとは少しも考えていなかった。


「他にも被害が出てるんだぞ。このままだと山が死んでしまう!」

加茂鬼が怒鳴った。


「どこが死んどるんや? どこも変わってへんやろ」

「なんや、山神が気でも狂うたこと言うとるんか? あいつらアホやで。すぐカッとなりよる」


「ああ、笑えるくらいにすぐ釣られよるな」

天狗たちの答えは、呑気というか、危険さをまったく理解していなかった。


俺ですら、危機を感じているというのに。

「昔の天狗たちは、修行を積んで強くなった者たちだ。だが、お前たちは何だ?」

「ふん、鬼ごときがわしらに偉そうに言うな! わしらは選ばれし山の民の末裔やぞ!」


「ならば、何故、山を穢す?」

天狗たちは大笑いを始めた。

「あんなもん、汚したうちにも入らんわ」

「ああ、それにこの山々はわしらのもんや」

「お前たちのものとか、つけあがるな!」


加茂役が真っ赤な顔で叫ぶ。頭から湯気が見えそうだ。

「修行するもんも、めったに居らんようになったな」

「ああ、それに、わしらへの敬いもあらへん。まるで無視されとるみたいや」


「それやのに、国はあれこれ規則や言うて文句ばっかりで、金は一円も出さん。解放軍とはえらい違いや」


「お前たち、本当にあいつらが正義だと思ってるのか? 奴らはテロリストだぞ!」

加茂役は呆れた声を出した。


「おんどれらみたいな、選ばれた連中は、えらい贅沢な暮らししとるそうやな?」

「解放軍がそう言うとったんや。間違いあらへん。わしらの立場が、こいつらには分からんのや!」


俺には、人族解放軍に完全に洗脳されていると感じられた。

奴らは不満を拾い、利を魅せ、信用を作り、操る。


「お前たち、修行はどうした? さぼっていたのだろう?」

「アホらしゅうて、やるわけないやろ!」

もし修行を続けていれば、有名な天狗も出ていただろう。


騰蛇と言えど、簡単に捕まえることは出来ないはずだ。

加茂役のような修行狂いには理解できないだろうが、俺も少しは気持ちがわかる。


「堕落した天狗か……。もういいよ、騰蛇」

俺は指示を出した。

「わかった。じゃあ始末するよ!」

「駄目ダメ! 解放して!」


加茂役はガッカリして座り込み、黙ってしまった。

「わかった。ほら、行くぞ!」

紐を引き、数十の天狗を連れてすっと消えた。


その日の夜は、十津川温泉の温泉旅館に泊まることになった。

夕飯を食べ、地元の飲み物を飲んで温泉に浸かる。


百虎には肉、天后には魚、騰蛇には卵、太陰には煮物、俺と葛葉には油揚げと団子。

「あれ! おかしい」

「太陰、何でいる?」


「我が主が呼び出すのを忘れたみたいだから、出て来てやった!」

みんなくすくす笑っている。

「まあ、いいじゃない! 清明」


葛葉が言うので俺は黙った。

「敵対する山神は倒したよ」

「汚れは浄化したよ」

白虎と天后も、仕事を果たしたようだ。


「でも山神がいなくなって、問題無いのか?」

「主、奴らは霊力の塊みたいなもんだ。だから、ほっといてもやがて復活する」


白虎は咆哮し、尾で払い、爪で斬り、牙で噛む。

俺も闘いの現場を見たことがあるが、恐ろしい者だった。


ちょこんと座布団に座る人形の白虎は、淡い廃銀の目で俺を見た。

「なんか、体が光ってるね?」

「ふふふ、霊力を喰ったからね!」


食事を終え、地元の飲み物を飲んでいると来客があった。

「葛葉様、ご報告です」

「七つ尾、どうした?」


「クズの天狗どもが、五鬼村へ向かっています」

「何故?」

俺は納得できなかった。

だって、騰蛇に捕まったばかりなのに。


「清明様は諦めておらず、逆恨みで鬼の村を襲撃するつもりです。隠れて進んでいますが、バレバレです」

「騰蛇、頼めるか?」


葛葉が否定した。

「清明には、もう関係ありません。加茂役と私が、この件について国から依頼されています。任せてください」


彼女は七つ尾という自分の眷属と廊下に出て指示を出すと、すぐに戻ってきた。

「明日も早いわ。ゆっくり温泉に浸かって体を癒しなさい」


感情が揺さぶられる。天狗たちのことだ。

それを察して葛葉が言ったのだろう。

宿の温泉は露天風呂だった。


俺のやったことは、山を歩き、十二天将を呼び出しただけだ。

俺はゆっくり体を伸ばし、満天の星を眺めた。


「天狗たちのこと、主には責任無い」

「主人は真面目過ぎるのだ。百虎とぶつかっていれば、既に死んでいる」


「はぁ、何でお前たちがここにいるんだ!」

騰蛇と白虎が、裸で俺の両脇にいる。

「混浴ですよ、清明。恥ずかしがらなくても」

俺の足の先には、葛葉がこちらを見ている。


「そうじゃ、わしの色気に照れてるのか?」

月光に照らされるのは、金髪の少女・太陰だ。


蛇に、虎に、母親に、老婆――見た目に騙されてはいけない。


目にやり場に困り、顔を背けた先には、黒髪でスタイルの良い女性、天后が立っていた。

彼女は見せつけるように立っている。


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