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神は制服を着る 彼女は笑い俺は嘆く  作者: 織部
紅葉伝説

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紅葉会

俺は彼ら事情を聞いた。

 鬼武たち鬼。それは、俺たちと同じ魂の転生者。国として見つけ、保護する者は格によって決められている。彼らは、市井の者だ。


 彼らは、魂に導かれて戸隠に来るうちに知り合い徒党を組んだ。最初は、徒党と言ってもただの歴史研究会だ。


 そんな彼らの元に、知らせが届く。

「紅葉が学園に捕らえられている」と。

 国家は昔、紅葉を、俺たちを冤罪で討伐した。取り戻さねば、悲劇が繰り返される。


「逃走を手伝う条件に、仕事をしてもらおう! 難しいことじゃない。俺たちも人が足りてないから」


 人族解放軍の攪乱部隊と名乗る者達だった。だがこちらから連絡をとる方法は無い。

「良かったわ。国から討伐対象になる前に止められて」


「だが、湖を汚してしまった」

「それは、清明先輩がなんとかしてくれる」


 天后が、汚れた湖の淵に立つ。

「やっと私の出番」


 彼女はそっと手をひたした。波紋が、湖全体に、波のように広がっていく。湖面に白い霧が立ち込める。湖の濁りが蒸発しているようだ。やがて、長い音が終わるように、波紋も消える。


「清明、これで契約終了よ。また会おう」

 天后は天に舞い上がり消えた。

 鬼武たちが貸し切っている宿坊で、その日は宴会だった。三郎も混ざっている。


「もう、無理。帰って寝る。紅葉は……」

 彼女を捜すと楽しそうに、鬼たちと会話している。


「え? 二人は九州に生まれたの? 仕事は何してるの?」

「俺は、豊後の国東半島から来ちょる。大工しちょる」

「おれは、日向の奥、椎葉山から来た。林業だ」


 俺が話した奴らも、生まれた場所もばらばら。年齢も仕事も。そして、今日いないメンバーがあと数十人いて、交代で来れる奴が今日も来ていたらしい。


 そりゃそうだ。ここに来るのも一仕事。

「俺たち、ついてる!」

「自慢できるな!」

「いや、悔しがるだろ!」


「それはまずいな。紅葉様の外出できる時に、全員で集まろう。京がいいな」

 鬼武が話をまとめて、計画が進んでいく。紅葉は困り顔だ。鬼武は、善光寺に引っ越して、建築会社を経営している若手の経営者だ。


「心配するな、清明が上手くしてくれるわ」

 ただ酒をもらいに、太陰も会に参加している。

「わかった。俺は帰って寝るから、紅葉と一緒にいてくれる?」


「ただで呼び出しといて、仕事までさせるとは、酷い男だわ」

 無視して自分の宿に帰り、布団に潜り込む。長い一日がやっと終わった。瞼はすぐに閉じた。


 翌日起きたら、紅葉と太陰も寝ていた。朝方、音がしたから、寝たばかりだろう。

 俺は、朝風呂に入った。露天風呂が気持ち良い。


 朝から赤ら顔の男が風呂に入っていると思ったら、三郎だった。

「早いですね。かなり飲んでたのに!」

「だからよ、酔い覚ましだで。大祓に戻らにゃならんのさ。清明ありがとう」


「え?」天狗に感謝されるとは……。

 彼は、紅葉と会った時の話を始めた。


「まだ、修験行者から天狗になりかけの頃でな。この辺の山ぁ駆け回っとった。今みてぇな力のある天狗じゃなかったで。よく襲われた。紅葉に救われて、知り合いになった」


「紅葉は強かったのです?」

「ああ、その頃はわしよりずっと上の存在だったで。だからよ、あやつらが討伐されるとは思わんかった。理由ぁあったんだろうが、弱いわしじゃ、到底救えんかった」


「……」

「ほいじゃ、そろそろ行くわ」

 部屋に戻ると、太陰が起きていた。


「主、帰る」

「ああ、助かった」

「ちょっと話しとく」


 彼女の話とは、紅葉の息子、経若のことだ。彼もどこかにいる可能性があること。人族解放軍とかいうテロ組織に狙われるかもしれないこと。


「なるほどね」

 紅葉が気持ちよく寝ているのを見て、俺は、そっと息を吐いた。

 昼前になって、やっと紅葉は眠たげな目を開けた。


「おはよう、清明先輩!」

 いつもの元気いっぱいの声に俺は安心した。

 同時くらいに「お迎えにあがりました」と鬼武たちが宿坊にやって来た。


 その日は、五社めぐりや善光寺に行き、鬼武の家で、バーベキューをやった。俺も連れ回された。


 団体行動は苦手なんだが……。

「今日は、体調が良さそうだな。清明様」

 鬼武が話しかけて来た。

 彼とはこれからの話をした。


「学園の保名先生に、連絡を取った。信頼のできる人だよ。相談に乗ってくれるはずだ」

「捕まるか?」

「法律違反のところは、私にはわからない。だけど学園の方はなんとかなる。経若の件は、相談して欲しい」


「さすがだ、清明様、わかってら」

 わかってたのは、俺じゃないけどね。


「さあ、帰るぞ!」

「阿智様ぁ」

 彼は全て見通していたのかも。神がかってる。さすが天津神一の知略家。


 その阿智くんは、お務めが終わってすぐ、わざわざ鬼武の家まで迎えに来てくれたのだ。


 その足で諏訪まで移動して一泊。次の日に、大祝兄弟も一緒に学園に戻って来た。こうやって三泊四日の旅は終わりを告げた。


「紅葉、おかえり」

 萬に、お土産の詰まった荷物を数個を渡したが彼女は軽々と持ち上げた。


「寮で話すことがたくさんあるわ。ごめん、先は運んでて」

 待ち構えていた保名先生に、俺と紅葉は面接室に連れて行かれた。


「不法投棄の件は、法律で裁かれる。学園は、国に命じて鬼武たちの集団を、監視対象団体に指定する」


 先生は宣告した。

「そんなぁ……」

「紅葉、これで変なテロ組織が簡単に手を出せなくなる。別に行動が規制される訳じゃない。逆に会いに行くことも出来る」


「良かったじゃん。それで保名先生、その組織の名前は?」

「紅葉会だよ。怖いだろ?」


 俺たちは、くすくすと笑った。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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