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神は制服を着る 彼女は笑い俺は嘆く  作者: 織部
紅葉伝説

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12/21

空梅雨

その年、雨が降らなかった。いわゆる空梅雨というやつだ。

 天気予報にも、天気にすら興味のない俺は、人に言われなければ、その事すら気が付かなかった。


「各地の貯水池の水が無くなってきたらしいぞ」

 朝食を食べようと食堂に顔を出すと、加茂が新聞記事を手に記事を指差して俺に話しかけてきた。


「そのうち降るんじゃないか」

「だと良いけどな」

 それだけ言うと、奴はニヤリと笑って朝練に出かけて行った。


「なんか嫌な予感がするな」

 俺が着替えに部屋に戻ると、白鈴が話しかけてきた。

「清明様の出番かも知れませんね」

 ベッドメイクしていた白菊も黙って頷いた。


「何で俺なんだ?」

「だって、得意じゃないですか。雨乞いの加持祈祷」

「いや、俺はそんなことやったこと……」

前世の記憶も無く、その時は比較にならないほどの非力な俺に頼まれても困る。


 白菊と白鈴は、俺が問題なく成し遂げるだろうと、揺るぎない崇敬のまなざしを向けていた。その視線が胸に突き刺さる。――何とかしなければ。


 まあ、まだ依頼もされていないのだけれど。

「保名先生にやり方だけでも聞いておくかな」

 放課後の教室。誰もいなくなるのを待って俺は顔を上げた。

「ねぇ、清明くん」


 凛とした佇まいで、長い黒髪の凛とした佇まいの女の子。

「げっ」

 睡眠学習を終えた、俺の前に立っていたのは、クラス一の清楚系女子 大祝さんだ。


「げっ、て失礼ね」

「ごめん。放課後、この教室ってすぐに誰もいなくなるじゃん」

「そうね。みんな部活やらで忙しいものね」

 そんな彼女も吹奏楽部だった気がする。


「笛、吹きに行かないの?」

「またまた、失礼。クラリネットよ! 清明って小馬鹿にするわよね」

「そうじゃない。無知なだけだ」


 間違っても、何の用だ? と聞いてはいけない。俺にも危機管理能力くらいある。

「それでね。あなたの為に、とっておきの情報を持ってきたの!」


 嫌だ、情報なんてものは不要だ。

「ああ、その情報なら蘆屋に教えてやってくれ!」

 同じクラスの蘆屋、勝手に俺をライバル視してくる面倒な奴だ。俺が、静かなクラス崩壊者なら、奴は正真正銘の崩壊者。


 その名前だけで、眉をひそめ、目つきも険しくして嫌そうな表情を浮かべた。

 良かった。俺より嫌われ者がいた。

「清明って性格も悪いのね」


 まずい。俺の含み笑いを見られていたようだ。

「小物だからね。それじゃ」

「待ちなさいよ。雨乞いやるんでしょ。このままじゃ失敗するわよ!」


 大祝さんが、珍しく大声を出した。

「え? 誰がそんなこと言ってるの?」

 俺は思わず反応してしまった。

「兄さんに聞いたから、間違いないわ」


 彼女の義兄は、建御名方神の生まれ変わりで、生徒会の一員。そして彼女は守屋家から大祝家に養女に入っている。諏訪巫女なんだけど、女神じゃないかとも言われている存在だ。


「いや、俺は依頼されていないぞ。それに俺にそんな力は無いのに……」

 だが、実際、この学校の生徒会は、物凄く力があるからな。


「ごめん。聞かなかったことにして。兄さんに怒られる」

「いや、怒らんだろう。仲良し兄妹と聞いてるよ」


 俺の言葉にとても嬉しそうな顔をした。

「それでね。私のペットの洩矢龍が話したことを教えるわ」

 いやいやいや、どこの世界に龍をペットにしている奴がいるんだ。まあ、ここなら普通の事かもしれないが。


 洩矢龍の話というのは、龍社会そんなもんがあるらしいでの大事件。

 九頭龍大王が、『雨を降らすな!』と指示を出して小龍だけでなく、他の龍にも圧力をかけてるという事件。洩矢龍のところにも依頼が来たらしい。


「もちろん、私の可愛い龍は断ったけどね」

「それで、九頭龍大王が激怒している理由は何なんだ?」 

「……詳しくは聞いてないみたい。だから、呼び出して交渉するにも準備をしておく必要があるわ」


「わかった。ありがとう」

 俺は素直に礼を言うと、教室を出た。勿論、向かう先は、職員室じゃなくて図書室だ。

 稗田さんは、受付に座り本を読んでいた。


「どうしたの?」

 その一言で心が休まる。彼女は、「離席中」のプレートを出してそそくさと

休憩室へと向かった。


 休憩室のソファには、太陰じゃなくて、紅葉の姿があった。

「何でここにいるんだ?」

「私、図書委員になったから」

「はぁ……」


 彼女の腕には、腕輪が光っている。

「それなら、受付お願いするよ!」

「清明先輩、冷たくなりましたね。もう、彼氏ヅラですか?」


「どこが……」

 稗田さんが笑い転げている。

「それで、今度はどうしたの?」

「雨が降ってないの知ってますか?」


「そうね。降ってないわね」

 そう、この反応。俺と同じだ。

「俺に雨乞いしろと、そんな話が出ているんです」


 俺は、大祝さんから聞いた話を説明した。

「そう言う話なら、私は関われないかも」

「どうしてですか?」

 俺の質問に、紅葉が吹き出した。


「高天原の神々は、その惟神に則って行動し、地上の人間事に無闇に干渉しない。そんな基本も知らないんですか?」


「紅葉ちゃん、彼をやり込めちゃ駄目よ」

「はーい!」

 態度が違う。俺の言い負かされた顔を見て、稗田さんが助け舟を出した。

お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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