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神は制服を着る 彼女は笑い俺は嘆く  作者: 織部
学生生活

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11/24

北山に雨が降る前に

太陰の話。


「女鬼寮に他のものが忍び込むのは容易ではない。それはすぐにわかった。となると、内部の犯行だ。そして、あんなもの盗む価値のないもの。それを知らない、わからない人物。つまり小鬼くらいだ」


 鉄輪を盗んだ犯人は、紅葉の同級生の小鬼の子。

 理由は、紅葉が、「鉄輪が無ければ、両親の元に帰れるのに。鬼にならずに済むのに」と毎晩泣きながら話していたからだとか。


「まあ、余計なおせっかいと言う奴だ。鬼であることは変わらない。本人もなぜ盗んだのか朧げだと言っていた。何者かに操られていた気配もある。だから不問にする。そう言う結論に、茨木と稗田様とで決めた。良いか?」


「俺は、構わない。探してくれていた、盗まれた鉄輪はこのように……」

「やはりな。河童どものおもちゃか」

 太陰は、手に取ると、ゴミ箱に投げ捨てた。


「おい、呪具じゃないのか?」

「ああ、だが、紅葉が呪いを発する時に身をつけていたらの話しだ。それはタダの鍋の底だ、全く呪いが溜まっていない。ははは」

「大騒がせな話しだったな」


「そうでもない。鉄輪が無ければ、紅葉の心が落ち着かない。やがて荒れ狂うだろう……ところで新しい鉄輪は?」

「ああ、頑張って作ったよ!」


 俺は、作った鉄輪を太陰に見せた。彼女は目を細めて言った。

「優しい主様じゃな、誇りに思うぞ。又、あまり時間を開けずに呼んでくれ」

 そう言って太陰は、姿を消した。


 金曜日の教室、俺は爆睡をかましていたが、はっきり言って地獄だった。

 辛島クラス委員長の冷たい声で俺が目覚めると、俺の机の周りを、女子全員が取り囲んでいた。


「起きたかしら、清明君」

 いつもなら、近くにいるはずの賀茂が、スポーツバックを持って教室を出ていくのが見えた。

「俺は、四天王の中でも最弱じゃなくて、最弱四天王の中でも最弱」


 そう言えるはずもなく、「どうしましたか?」と答えるのが精一杯だった。

「私たちが、昨日の女鬼寮のこと、知らないとでも思っているの?」


 いや、知ってるから怒ってるんだよね。理由は何となくわかる。でも、俺のせい、いや、俺のせいだな。

「まあ、よくあることじゃない、他の寮への訪問なんて……」


 しまった。言葉選びを間違えたらしい。やはり、沈黙が金。

 武闘派巫女の望月さんや、梓さんの顔が怖い。

「ある訳ないでしょ。稗田様のお渡りなんて。しかも鬼女寮よ! そして、舞われたとか……」


「私たちの巫女寮でも、実現してないらしいわ……」

 ここは、知らんぷりを決め込もう。

 いつもは騒がしく元気な、ダンス部の出雲が、静かに涙を流していた。

 痛い。痛い。


「わかったよ。様子を見ながら、お願いしてみる。だから許して!」

 困った時の、稗田さん。

 俺は、図書室に逃げ込んだ。

 だが、彼女はいなかった。そうだ。今日は金曜日だ。


「まあ、来週にでも、会った時に話をしよう」

 一時帰宅していく人々が見える学園のエントランスを、見下ろす校舎の屋上に行った。


 迎えに来た車が、列をなして並んでいる。呼び出しの度に、学園から人が出てくる。俺は、その様子を眺めていた。

「あ、ここにいたんですね」


 振り返ると、紅葉の姿があった。

「ご迷惑をおかけしました! 太陰様に寮まで来て相談に乗ってもらって、みんな喜んでました」


 その声は、元気に弾んでいた。それは、彼女の本質なのだろう。

 二日酔いで疲れた顔をした稗田さんが、高貴な客車のついた蒸気自動車に乗り込んでいくのが見えた。


「あ! 稗田様ぁ!」紅葉は大声を出して手を振った。

 気がついたのだろう。稗田さんが手を振り返してくれた。


 恥ずかしかったが、俺も小さく手を振った。

「とっても、素晴らしい舞でした。それだけでもここに来れてよかったです」


「でも、ああやって、毎週帰れて羨ましくないのか?」

「何を言ってるんですか!  稗田様たちは、週末は自分の領域で御務めではありませんか⁉︎」


 そうなの? 俺は知らなかった。

「そっか、それじゃ、たまには俺と週末、外に遊びに出よう!」

「デートに誘われちゃいましたね」 紅葉は笑った。


 俺は思わず赤面した。そういう意味ではないんだけど。

「そうだ。鉄輪見つかったんだけど、原型がないくらい潰れてて」


「そうなんですか? 川に捨てたって、酷いですよね。でも、もういいいんです。謝られたし、私の為だし」


「そうなの? 代わりの鉄輪作ったんだ。受け取って! これなら盗まれないでしょ」

 青みを帯びた美しい鉄輪。いやブレスレットだ。


「本当に! やっぱり清明様はお優しいです。好きになりそうです」

 彼女は嬉しそうに、腕にはめた。

 いやいやいや、女鬼に愛されるほど、危険なことは無い。


「さて、図書委員やらないと」

「じゃあ、私も手伝います」

 全てが解決した訳じゃない。彼女の友人を唆した者。愉快犯だろうか、俺は忘れてはいない。


 空は晴れている。


 だが、京都の北山にある学園は、梅雨の季節が迫っていた。

お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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