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Case01 篠原余白の記録  作者: 鳶丸


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6/9

File06 侵食 記事:篠原余白

本日3回更新3回目です


数日前に篠原余白という女性の動画を見た。

それからというもの、おれは少なからず異変を感じている。


彼女がインタビューの中で語っていた感覚。

どこかから誰かに見られている、と思ってしまう。


はっきりとしておこう。

おれに精神疾患はない。


統合失調症や社会不安障害などの類いではないのだ。

いや、べつに疾患を抱えている人を差別する意図はない。

おれは、そうした疾患にかかったことはないというだけの話だ。

なにせ、人に見られている感覚などと言えば、疑われて当然なのだから。

おれは――そうではない。


なら原因はどこにあるのか。

篠原余白という女性は、としくんという謎の存在に悩まされていた。


昔、流行ったホラーがある。

それは呪いのビデオを見た者に呪いが感染するというものだ。


もしかしておれにもそれと似たようなことが起こったのか。

そんな訳はない。


だって、あれはホラーというフィクションなのだから。


では――なぜ。

医師でもないおれには明確な答えは出せない。


ただ漠然とした不安があり、謎の視線にイラついている。

それがおれの自己分析であった。


加えて、おれはまたあのインタビュー動画を見返している。

これで何度目だろうか。


話の内容はすべて頭に入っているというのに目が離せない。


同時に思うのだ。

この篠原余白という女性、どこかおれに似ている、と。


荒い画像だから顔は判別できない。

声は女性なので似ても似つかない。


ただ――ちょっとした会話の間の取り方や、仕草が気になる。

言いよどむときの癖、視線の泳がせ方。

どこか自分を見ているような気になってしまう。


また、だ。

今も見られている。

誰かに。


この部屋にはおれ以外、誰もいない。

虫くらいならいるだろうが、人はいないはずだ。


わかっている。

振り返ったところで、誰もいないことは。

予感ではなく、確信だ。


だが、それでも振り返ることができない。


思い過ごしだ。

そう、何度も思った。

それでも振り返る勇気がでない。


おれは――おかしくなってしまったのだろうか。



そんなおりである。

おれは机の奥にあった一冊の手帳を見つけた。

偶然だったのだ。


ペンのインクが切れて、そのインクを探していたら出てきた。

大学のときに使っていた手帳である。


当時のおれは几帳面にスケジュールを手帳に書き記していた。

なんとなくの感覚で、古い手帳を開く。


気になるのは、件の事件を見たはずの日付の前後のことだ。

講義の予定、友人との約束、アルバイトのシフト。

そこだけが、不自然に空白だった。

記録がない。

忙しかったから書き忘れた?

いや、なぜここだけ記録がないのか。

記憶の紐をたぐってみる。


だいたいのことは思い出せるのだ。

友人の名前、学食で好きだったメニュー、嫌いな教授の名前。

だが、奇妙なことにその空白の期間だけ記憶も曖昧だった。

おれは確かにニュースを見た。

だが、それを見ていた「おれ自身」の姿が思い出せない。

学食にいたはずなのに、誰と一緒だったのかも、何を食べたのかも、そのあと何をしたのかも、抜け落ちている。

おかしい。

明らかになにかがおれの身に起きている、そう思った。


お気に召しましたら応援よろしくお願いいたします。

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