02 男ふたりを友人にして手玉に取るなんて、深く考えるとシュミの悪いヒロインだこと!
初回よりは、落ち着いてると思います。
初回がひどすぎただけです。多分!
タグチなのですが、誤ってタブチになってたらミスです。正しくはタグチです。
作者に名前を間違えられやすいアニメ主人公とは⋯⋯。
あたしは、このクソアニメ世界のヒロインちゃんこと、カタギリちゃんに転生って⋯。
主人公のタグチは絶望に打ちひしがれるし!! サブキャラというかザコのオオクシはあたしを褒め殺してきてめんどくせーし!! もう殺すなよ! また転生するぞ! むしろしたいぞ! 殺せ! この世界はいやだ! ハズレ世界だ!!
とは言えさーー! この世界のあたしこと、カタギリは大金持ちのお嬢様設定だったらしく、BSCSの観れないテレビの貧乏暮らしだった前世からして、だいぶ生活水準は良かったと言わざるを得ない!! パパとママも妹ちゃんも、いいひとたちだ! しかし声のひとは一緒だ!
ヒロイン補正で、どんだけ食べても太らないし、結構ナイスバデーーな体つきだし、顔もかわいい! しかし声のひとは一緒だ!
ほんとさーーーーー! 声だけまじなんとかなんなーい? そこらへんのモブとか、うちの家族というモブとかと、ヒロインが同じ声とか正気の沙汰ではないでしょ!! 誰の声か判別できなくて不便すぎるでしょこの世界? みんなどうやって日々の生活が成り立ってんのよ?
わたしはあの男ふたりから追いかけられている! まーー今の今まで友人同士という関係ではあったのかもだし、あたしの異変には居ても立っても居られないってことーーー?
この世界に「ストーカー行為等の規制等に関する法律」があるのかよくしらねえけど、通報したほうがいーい??
とにかく、非力なヒロインを走らせて疲れさせるどうしようもない男ふたりの相手を渋々することにした。
「⋯カタギリちゃんどうしたのさ? こんなに破天荒じゃなかったはずなのに?」
「別にいいじゃない!! あたしはあたしよ! 別にあんたらとは、はぐれる訳にはいかないとかじゃないから! ジャスラックはこのセリフを気にするな! あたしがこれからどう振る舞おうとあたしの勝手じゃん?」
「こんなアッシの名前を知ってくれて、呼びかけてくるなんて、今までのカタギリちゃんではあり得なかったでヤンス! 別人に決まってるでヤーンス! それでもいいんです 付き合ってくださいでヤーンス!!」
どんだけ、元のカタギリちゃんにスルーされた存在だったんよこのザコ! だったらこんなあたしにチョロするわけね! 名前を呼んだだけで惚れるとか、どんだけチョロなのよ!! いろいろと危険すぎるでしょ! 危険生物でしょ!!
にしても、このアッシは変にさっしがいいな! って、名前がアッシしか出てこなくなったじゃないかああああ! あ、オオクシだった! そらヒロインちゃんに忘れられる運命だわ!
まぁいいさ、ほんとのことを打ち明けてやるか! そうすれば友人やめてくれるでしょ? 頭おかしいなコイツと思われて、もう会わなくてよくなるでしょ! さすがに!!
「あたしは、別の世界から来た人格だから、元のカタギリちゃんの人格じゃないし! でも、あたしはあたしだから!! もう放っておいて? じゃあ、あたしはこれで、はいはいーさよならーー!」
「カタギリちゃん⋯!」
タグチくんが失恋したような怪訝そうな顔をしたけど、さすが主人公だな! やっぱヒロイン狙いだったようだな!! 残念だったな!!
そして、タグチくんは「さよなら、別のカタギリさん」と言って去っていった。主人公って物分りがいいんだな!! おい! 見習えよそこのアッシザンスのザコが!
「ならば、アッシと付き合うでヤンスァーーーーー!!」
懲りねえな!
わたしはオオクシの前にソフトボール的な球を転がしてやった。するとオオクシはソフトボール的な球を躱すことなく踏んで、見事に直角を描くようにして飛び去った。はいクソアニメ!
これで、わたしは自由を手に入れた。よくわからない男ふたりを友人にして手玉に取るなんて、深く考えるとシュミの悪いヒロインだこと!
とにかく、まずはこの監督声をなんとかできないものか?
こういう声優男一人のアニメって、ほっとけば徐々に破綻していき、しまいにヒロインちゃんが「もっとヒロインらしい声がほしい」とか言い出す自虐ネタを出していくものだが、ただそれも結局声は変わらないという安定オチまでもがセットである⋯。
わたしは考えた結果導き出した答えは、男の格好をすれば良いと。
あたしはロングヘアーをひっつめ髪にして、服装を黒のジャケットと紺のシャツにグレーのテーパードパンツだ。前世のわたしも大抵こんな格好だったからちょうどいいや!!
家族から変に思われながらも、わたしはこれからボーイッシュな装いでこの世界を謳歌することにしたのだ!
これなら、声が低くても不自然ではないし。自分としても性別は女性だが、見た目と声は男性なので精神衛生上、割りとすんなり納得できた。
するとどうだろうか?
自分とまったく同じ声のする女性たちから、すごい眼差しと、美男子だとでも思われてたのか逆ナンが横行したのであったのは、また別の話だ!
外はめんどくせーなと思ったので、家に引きこもることにした! 複数人が同じ声の人である外はストレス過多だ。
この世界の娯楽は、前世にあったパロディだらけだ。さすがは万策尽きた一人の男声だらけのクソアニメだ。
「ゲームボタン」というゲーム機があって、「蹴マリシスターズ」とか「蹴マリカート」とかあった。ゲームをプレイするも、全員あの声。
なんと言っても、効果音も音楽もナッシュミュージックライブラリーのものだ。まぁ、ナッシュは実際いろんなゲームソフトで使われてることはよくあるが。
まさかお姫様は「ケリ姫」などとでもいうのか? そっちはパロディどころか実際に前世であったぞ! スイーツ!
スマホで動画サイトを観たら、全部声が一緒で見るに堪えられなかった。合成音声の「ゆったりボイス」、VTuberもだ。狂ってんなこの世界。
あーあ。「○ンコツクエスト」のほうに転生したかった⋯。まだあのかたのお声のほうなら堪えられたのにさーーー。
こんな世界、あたしが、ぜーーんぶ、ぶっこわーーーーーーすっ!!!
『ピンポーン』
チャイムが鳴ったので出てみたら、オオクシがオシャレ決め込んで花束を持ってきやがった! なんの腹の足しにならねえ花なんかいらねえし しかもうちに来るな!! 早急に「ストーカー行為等の規制等に関する法律」をパロって適用させろよこの世界!
「あんたは、あたしがこんな男の格好をしていても許されるわけ? おかしんじゃないのお?」
「いえ⋯⋯ むしろとてもいいでヤーンスァー! 毒吐くボーイッシュなご令嬢さまなんて、アッシのドドドド⋯ドストライクゾーンで⋯ヤーンスゥゥゥー」
オオクシは赤面しながら、花束を差し出してきた。随分といろんな種類を持ってきたけど、こいつほど花言葉なんか知らんだろ?
ザコのクセに粘り強すぎて、もはやザコではなくなってきてるのでは?と思い始めた。
あたしは花束を受け取って、それをオオクシにスイングすると、あの大乱闘ゲームのようにカキーンと聞こえるスマッシュヒットとなり、「おぼえてろバイバイキーン」と言うバイキンと同じように、山の背景のある空へとすっ飛んで行ったが、副音声だと「ほら飛んで行っちゃった」とか解説が聞こえてくるらしい。
あたしは、その飛んでいく光景をみて、「ドキ○ちゃんも居ま~~す」というセリフをふと思い出してしまったあああ!
ああああああ!
懐か死ぬ!