表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#ウイープタンペン  作者: weep
「青よりも青いブルー」篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/17

5 スライムゼリーを食べるとー

 使い魔獣のゼロを召喚してから一月ほど経った。

 召喚したのはシャルちゃんだが、さすがに堕天使シャルちゃんの存在は秘密である。

 あたしにとっては今まで出逢った淑女の中で、貴重な貧乳仲間であることも秘密である。


 あたしはゼロとスライムゼリー採取のため森にスライム狩りである。


「スライムゼリーはスライムの核にゃんぜ! そこには魔力量と大地の恵みを豊富に含んでるにゃ! スライムゼリーを食べると、体力・魔力・忍耐力・知力を底上げしてくれることをヒューマンには知られていないのにゃあ! もったいにゃいにゃあ! さすがミーのご主人さまの着眼点はすごいにゃんぜ!」


 よく喋るネコだ。


 普通の人であれば、スライムゼリーなんて食べないだろう。

 クロエやリッチャンのような淑女たちにとっては美容アイテムであることは知られている。

 魔素の属性ごとに決まった色がついていて、加熱することで色が徐々に薄くなって透明になる。

 あやしい体液のような粘度なのに無味無臭。

 普通の人間からすれば、これを食す必要性を感じないだろう。


 しかし、あたしが孤児院に保護される以前は、このスライムゼリーをすすって暮らしていた。

 あたしはとろっとした食感が嫌いではなかったからだ。

 気づいたらそうやって森で暮らしていたのだ。


 魔法でウォータボールを作って宙に浮かせて、鍋のようにして熱したり冷やしたりすると、弾力が変わる。

 いろんな食感を楽しめられることに気づいた。

 日々の調整でいろんな食感にすることができるようになった。


 塩と香辛料をかけて炒めると謎の肉を焼いた感じになるので、あたしの中ではスライムゼリーはご馳走の材料である。

 しかもヘルシー。

 美容とヘルシーを兼ね備えた『女子力の高いアイテム』だと密かに思っている。

 急速に高熱を加えることで超強力な接着剤も作ることを最近発覚したところだ。


 あたしは森で収穫したフルーツを入れたゼリーを手作りしている。

 特にルビーベリーのゼリーは絶品。

 しかし、今あたしの横にいる泥棒猫さんがいらっしゃるため、材料確保が必須になった。

 使い魔の胃袋を掴んでもなぁ。

 まあ、こんなので喜んでくれるならいいか。


 しかし、スライムゼリーを獲得してすぐに使えるわけではない。

 瓶に詰めて、執事のエドウィンに獲得した量を報告してからになる。

 どうするのか聞かれたので、「ゼロのエサに使います」と答えている。

 あたしのエサでもあるのだけどね!


 それにしても、きょうに限ってスライムが少ない‥‥?

 あまりに居ないので森の奥まで行くことになった。


 スライムがいないおかげで、あたしのスイーツ泥棒猫の弾丸トークが留まることがない。

 あたしがどっと疲れた。


「はあ‥‥」

「どうしたにゃあ?」


 三毛のケットシーであるゼロは、すんっごーくお喋りである。

 一緒に歩いてるだけでも弾丸トークのお相手にこっちが疲れた。

 注意することに疲れてしまうのである。


「んもう! ゼロは喋りすぎ!」

「そうかにゃあ?」


 ゼロは色んな人に喋りまくるので、絶対に内緒話なんてできない。

 彼にとってプライベートなんて、投げて飛ばすようなものだろう。

 あたしが胸が小さいことを悩んでることも笑い飛ばしながら使用人たちにバラしやがった。

 すると気を遣われて、乳製品多めな食事ばかりになって恥ずかしかった。まあミルクは好きだけどさ。


 デリカシーのないゼロは、クロエやリッチャンにバシバシ叩かれてるところを毎日見ている。ざまぁ。

 そのため、おしゃべりゼロの口封じのためには、日々のスライム討伐は致し方ないのである!


「あたしのスライムゼリーレシピとか、使用人にバラそうとしたし!」

「うちでも食べたいにゃ‥‥」

「だぁーーめッ! ゼロの分抜きにするよ!」

「ちぇっ‥‥にゃ」


 スライムゼリーレシピがみんなに知られたら、大量に居たスライムが撹乱される。

 きょうみたいにすっかりいなくなったら困るし。

 本当にきょうはスライムいないよねー。


「クロエにあたしの報告とか逐一しないでくれる?」

「なぜにゃあぜ?」

「何故って、ちょっとさ‥‥」


 あれからあたしは、リリ組と真面目に勉強するようになった。主に苦手な地理も含む。

 お陰であたしの知らなかった魔法についての話も共有するようになった‥‥けど、もう疲れた。

 クロエに叱られるのも、褒められるのも‥‥と言うか、何と言うかさ。


「クロエさまは、ご主人さまがお勉強するようになってお喜びにゃんぜ! よかったにゃんぜ?」

「それを言って欲しくないの! んもう!」


 こうも口に出して言われると、なんかもうむず痒いし。

 自分が今、どう言う顔してるのかも分からない。


「にゃにゃにゃ? ご主人さまの顔がルビーベリー色にゃあ! 甘酸っぱいにゃんぜい!」

「このチャベ!」

「にゃにゃっ!?」


 あれ。なんだっけ、〝チャベ〟って?

 なんか、心当たりあるようでないような。

 突然、ゼロがなんか目を輝かせる。なになになに?


「ご主人さま? どうしたにゃ?」

「うーん。疲れてるのかな? って、ところでゼロ。チャベってなんだっけ?」

「にゃふーん!」

「教えてよ!」

「にゃふーん!」


 あたしは魔法の詠唱のために、いろんな言語を覚えたつもりだけど‥‥。

 該当するものがない。


「ご、ご主人さまは、帰ってお部屋でお休みしたほうがいいのかにゃ?」

「そ、そう‥‥だよね? きっとお勉強頑張ったり、日頃のあんたの弾丸トークの相手に疲れてるのかな? って、なんでそんなに嬉しそうな顔してるのさ」

「気のせーにゃ。にゃふーん」


 お喋りなゼロが口を閉ざした!

 あやしい!


「もしかして、チャベって──」

「にゃにゃにゃ? まさか?? ご、ご主人さまぁ‥‥!!」


 そんな、ガタガタと歯の音を立てて驚くことなのかな?

 ならば、言っちゃえ!


 あたしは両手を腰に当ててゼロを真正面に見やった。


「──猫語だったりするの?」

「スンッ‥‥。にゃふーーん」


 あ、ゼロの表情が驚きから呆れに変わった。不正解ね。

 猫の魔獣って喋らなくても表情で分かっちゃうのよね。

 こういうところは、猫と言うよりも表情豊かな人間らしい。


「‥‥しないにゃ 魔力のない猫は舌足らずで歯並び的にも、そんな複雑な発音できないのにゃ」


 ゼロはすくっと二足で立って、お手上げのポーズをして、ヤレヤレと言いたげ。

 ネコにそれをやられると、むかっとくるんだけど?

 まぁ、見た目はあざとかわいい三毛猫だけど。


「ねえ、チャベってどこの言葉?」

「さ、さあにゃあ?」

「ねえねえ、急にどうして静かになったの? 教えてくれないの?」

「さ、さ、ご主人さまがお疲れっぽいから、もう帰ろうにゃんぜ!」

「あんたのせいで疲れたのよ‥‥」


 おそらく、シャルちゃんに口止めされてるんだろうなー。

 シャルちゃんはゼロを召喚してくれてから、毎晩あたしの部屋にやってくる。

 つい彼女の綺麗なおみ足ばっかり見てしまっていたのだけど‥‥。

 あの方が来るとゼロが沈黙し、汗でびしょ濡れになってる‥‥。

 ──シャルちゃんって実は怒らせると怖いのでは?


「ふにゃああああああ!!!」


 ゼロが飛び上がってあたしのない胸に飛び込んできた!

 見た目よりも軽いゼロをナイスキャッチすると、ゼロは汗でびしょ濡れ‥‥。

 え? もしかして、シャルちゃん? なんてね?


「にゃひっ!? ゼロどうしたの?」

「に、逃げるにゃ! 危険が迫ってるにゃああ!」


 え? モンスターが居るの?

 いや、違うこれは。


 どこかで感じたことのあるような地響き。


 ──水?

 まるで、大きな水が迫ってくるような‥‥音?


「ツ‥‥。ツナミ・スライムにゃあ!! 逃げないと危険が危ないのにゃ!!」

「ツナ? マグロ??」


 こんな時にマグロの話?

 ネコってそういうところあるよねー?


「マグロじゃないにゃ! 津波は大規模な大波のことにゃ」

「大波?」

「急ぐにゃあ! これは大量のスライムが大波のように迫ってくるにゃ」

「ええええ! なら、急いで高台に避難しなきゃ!」


 あれ? なんであたし対処法が思いつくのだろう?

 とにかくあたしたちは上り坂へ避難した。


 ──避難したのに!


「‥‥どうして、上り坂を追尾して‥くんのよ!?」

「ミーも知らないにゃ! これは多分狙われてるかもにゃ!」

「あたしたちから‥‥漏れる微量な魔力を‥‥‥察知してるの‥‥かしら?」

「かもしんないにゃ!」


 あたしたちは走りながら話してるが、あたしはハッとした。

 あたし、ゼロを抱えたまま走っていたことに気づく。

 どおりで息切れが激しいと思った‥‥。

 てか、そんなことに気づいてる暇はなかったから。


 ゼロの顔がルビーベリーのように赤くなってることに気づいた。

 耳まで赤いし。


「下僕のミーがご主人さまに抱きかかえられるのは申し訳ないにゃ‥‥」

「え、降ろして二手に別れる?」

「ちがうにゃ。とりあえず降ろしてにゃ」

「じゃあ降ろすよ」


 あたしはゼロを降ろしてみた。


 ぼうん!


「にゃふにゃふにゃふーん!!」

「ふええっ?」


 ゼロが馬サイズに巨大化したので、変な声出た。

 意外と足短いし‥‥いや、それは思わないであげよう。


「早く乗るにゃ!」

「わ、わかった!」


 あたしがうつ伏せ状態でゼロの背中に乗ると、上り坂を猛スピードで駆けた。

 背中はもちろんモフモフだけど、揺れを感じないのは魔法だからかな?

 あと捕まらなくても振り下ろされることもないっぽい?


 ゼロの乗り心地よりも、この追尾してくるスライムたち、《ツナミ・スライム》をどうしようかな?


「ご主人さま、どーするのにゃ?」

「とにかく逃げながら考えようか‥‥」


 あたしは考えた。


「土魔法で大穴掘って落とそう!」

「その手があったにゃ!」


 ──だが、穴からすぐ這い上がってきた!


「ふにゃあ! ヘビみたいにニョロってきたにゃ! ニョロっときたにゃあああ!」

「ゼロはヘビが苦手だったね」


 湖が見えてきた。


「あそこに湖があるからそこに沈めよう!」

「その手があったにゃ!」


 ──だが、泳ぐようにして迫ってきた!


「ツナ‥‥だけにマグロみたい」

「ツナはもういいにゃ!」


 全然ネコらしくない言葉。

 向こうに崖が‥‥。


「崖から崖を飛び越えるにゃ!」

「だいじょうぶ?」

「ジャンプ力なら自信しかないにゃあ」


 頼もしいネコらしい言葉。


 ──だが、崖を越えてきた!


 ゼロはジトッとした目で《ツナミ・スライム》を見た。

 これは怒ってる?


「ずるいモンスターにゃ! たたかうかにゃ!」

「あたしたちが飲み込まれるよ!」

「ミーたちがゼリーにして飲み込む側だったのににゃ!」


 もしかしたら、スライムたちはあたしたちに食べられた恨みで逆襲しに《ツナミ・スライム》としてやってきたのかな?

 そんなに食べたかな? ‥‥食べたかー?


「そうよ。ゼロ飲み込んでよ!」

「‥‥無茶言うにゃ」

「もっと大きい体にならないの?」

「にゃふ‥‥。やってみるにゃ。ご主人さまは危険だから離れて欲しいにゃんぜ」


 ゼロがあたしを降ろして、バリアを張ってくれた。

 ゼロは体を大きくして、《ツナミ・スライム》と対峙した。


「にゃあああ!」


 大きくなっても三毛猫はかわいい。

 しかし。


「ぜ、ぜろおおお!」


 巨大なゼロが《ツナミ・スライム》に足を掬われ、簡単に飲み込まれ気絶した。

 もとの大きさに戻ってしまった!


「ど、どうしよう。ゼロを助けなくっちゃ!」


 今のあたしは、怖いとか、そういう考えもない。

 あたしは、なんの考えもなしにゼロを助けたい想いばかりに《ツナミ・スライム》に潜り込んだ!


 スライムの中は水のような浮遊感があり、不思議と呼吸ができる。

 これはゼロの張ったバリアが有効だからかな?

 あれ? 本人は気絶してるのに?


 ゼロはどこだろう?

 目の前が真っ青しかなくて不気味。

 あたしはゼロを探しながら真っ青な空間を彷徨った。


 謹賀新年。

(書いてから時期がすぎると季節の挨拶って過去の日記になっちゃうんだけどね‥‥)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ