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7.実際に好きな色なんですから仕方がありません

どうしよう!完全に妃教育のこと忘れてた!


ミアがどうしても持っていけと言って譲らなかった日傘を差し、1人庭園の庭園を歩きながら考えを巡らせる。


この身体の子、リリーちゃんはここに妃教育のために来ているんだよね。どうすんの?

恋愛?結婚?恋愛だって今までうまくいった試しなんかなかった!

いいなーって思った人もいたけど、なぜか避けられる様になったし。

ていうか妃ってどっちの?王子二人いるじゃん。

リリーちゃんはまあ第一王子の方がいいんだよね?

いや第一王子て、いずれは一国をおさめる王の妻!?

絶対嫌なんだけど。絶対男産まなきゃ肩身狭かったり、うっかりパンがないならお菓子を食べればとか言ったら処刑じゃん!

そんなこと言わないけどさ!

この優雅な生活に慣れて同じ様なこと言っちゃうかも分かんないじゃん。

いろんな抗争に巻き込まれて有る事無い事・・主に無いことばっかり言われて

濡れ衣かぶって処刑じゃん!処刑の未来しか見えない!


「そうだ!!帰ろう!!!」

私の魂がここに居るっていことは、リリーちゃんの魂はどこ?魂が抜けた私の身体は?

帰り方を探ってみる価値はあるよね!

「そうと決まれば部屋に戻って状況を整理しよ!」

「また迷子か」

くるっと振り返り歩こうと足を上げたところで横の垣根の向こう側から声が聞こえる。

む!この声は!


垣根の葉の間から黄緑色の瞳と目が合った。

「いやですよぉ殿下、私は一度も迷子になったことなどございません」

「君は体調が優れないのだから仕方のないことだ」

「ですから」

「恥ずかしがらなくとも良い」

「私の言葉が届かないのかしら」

「幸いにも僕はとても耳がいいんだ」

「あらまぁ、では言葉を処理する脳みそがとてもお疲れなんですわ。一刻も早くお部屋に戻ってお休みにならないと」

「お気遣いありがとう、しかし心配には及ばない。君こそその達者な口をどうにかしたほうが良いぞ」

「まぁ〜!!!」

「あっはっはっはっはっは!」

突然の第三者の笑い声に体がビクッと動く。

「ど、どなたかとご一緒なんですか」

「あぁ庭師のマークと一緒だ」

早く言ってよ!意地悪王子!

「ご挨拶に向かいますわ」

第二王子殿下がそんなに笑うことないじゃないか・・と言っているのを聞きながら垣根の向こう側に向かう。

うっかり売り言葉に買い言葉。

ユウタと喋っているみたいになってしまった。気をつけないとミアに殺られる。


マークはガタイの良い若い男性だった。体力仕事ならお任せあれ!って感じの頼もしさを感じる。

「どうも、初めましてシャイリマール公爵家より参りました、リリー・アドライナ・シャイリマールです。以後お見知り置きを」

「いやいや!そんなご丁寧な!こちらこそ大変失礼しました!この城の庭園を管理しています。マーク・ウェイザーです。」

カーテシーにて挨拶をすると帽子を取ってお辞儀をしてくれる。

「まぁこの庭園をお一人で?」

「そんなわけがないだろう」

「マークに伺っているのです!」

呆れたように言う第二王子を睨みつける。


「いやぁあはは・・先代の国王様の時より代々城の庭園はウェイザー家が担当しております。今は祖父母と両親、それから姉夫婦と一緒に管理をおこなっております。」

「そう、ではこの庭園の造形なんかは先代の国王様のご趣味かしら」

「先代の国王のお妃様のご趣味だと伺っています」

「赤い花ばかり。赤がお好きな方だったんですね」

そりゃそうか、赤毛の家系の庭なんだし。

「えぇ・・」

なんだか空気が重くなる。何かいけないこと言っちゃったかしら?

第二王子の方を見ると垣根の葉を触っていて我関せずの様子。

鼻の頭が赤くなっている。白い肌で明らかに日焼けに弱そうだもんな。

第二王子に近づいて日傘の中に入れると日陰になった瞬間に顔を上げる。

「帽子などはお持ちではないのですか?」

「あぁ」

「鼻が赤くなっております。これをお使いください」

「いや、結構だ」

「あとでヒリヒリ痛くなっちゃいますよ」

「結構だ。慣れている」

日傘を私の方に押し返そうとして日傘の柄にある私の手に触れてしまうと気まずそうに手をズボンの方に持っていく。

「それはそれは余計なお世話を大変失礼いたしました!」

またこの人は!!人をバイキンみたいに!そういうのは小学生くらいで卒業しなさいよね!


私と第二王子が言い合っている間マークがワタワタとしていたし、マークに悪いからもう行こうかな。

「では、マークごきげんよう」

「あ!あの!シャイリマール様はお好きな花はありますか?」

「好きな花?う〜ん、、桜かなぁ」

「桜?・・初めて聞いた花の名です」

「今度その桜の花がないか商人に聞いてみますよ」

困った様子でマークが私の顔色を窺ってくる。

「ふふ・・いいの。この庭園に桜を植える場所はなさそうだし」

「え?」

「桜は大きな木に小さなピンク色の花が咲き誇るんです。この既に出来上がっている庭園には植えるところが無いわ」

マークの困り顔や第二王子の眉間の皺を見てピンとくる。

ないんだ。この世界に桜は。やってしまった。

「まぁ妄想ですけどね」

「妄想、ですか」

「え、ええ花にはあまり詳しくなくて別段好きな花が思いつかず、毎日庭園を見ながら常々こんな花があったらいいなぁって妄想を」

苦しい、苦しすぎる言い訳。


第二王子からため息が聞こえる。

何よー!私が悪いけどさー!

「シャイリマール様『ピンク』とはどんな色ですか?」

「え!?」

「あ!これも妄想ですか、すみません」

「そんなわけないわ!第二王子殿下の髪の色ですもの」

「「え」」

え、じゃあこの国では第二王子の髪色のことなんて言ってんの?

ピンクじゃないの?赤も緑も青も黒もミアには通じてたけど。

「そのピンク色っていうのがお好きなんですか?」

「えぇ、特にこの色はキレイですよね」

ピンクの中でもベビーピンクはとても好きな色だ。

第二王子を見ると顔を真っ赤にしている。

マークまで顔を赤らめて少し俯いた。

な、何?何その反応。

「き、君は病に侵されているんだ少し休んだ方が良い」

「えぇ!?この通りピンピンしてますけど?」

記憶がない以外に体は正常だって知ってますよね!?

「いいから、部屋まで送ろう」

第二王子に背中を押され足が自然と動く。

「え、え!殿下?マークどうもありがとう、またお話聞かせてくださいね」

「えぇ、いつでもどうぞ」

マークは今にも泣きそうな顔でニコリと笑うと頭を下げた。

え!やだ!私が不治の病だとでも思っているのかしら!

そんなこと全然ないのに!


「マークが変な誤解をしてしまいます」

「マークも私も誤解などしていない」

「殿下に誤解されたってどうでもいいですけど、マークの誤解は解かないと」

「どう・・でもいい?」

「マークは私が深刻な病気なんだと勘違いしているやも」

深く、深いため息をつく第二王子。

いちいち癇に障る。図書室で言われた言葉そっくりそのままお返ししたい。

「君はいつ記憶が戻る」

「そんなの私が1番知りたいです」

「あのようなことは迂闊に口にするな」

「あのようなとはどのような」

だから!と言った後また顔を真っ赤にして手で口を塞ぐ。

なんなんですか本当に。

「僕の髪の色が好きだとかそういう・・」

「実際に好きな色なんですから仕方がありません」

今にも沸騰しそうなほど顔が赤い。

自分の髪色が褒められてそんなに照れる?

「私もしてみたいです、その髪色」

アイドルみたいでかっこいい。

今の私の顔なら似合うと思うんだけどな。

「もう・・やめてくれ」

「殿下のような髪の色のことをなんと言うんですか?忘れてしまいました」

真っ赤だった顔がスッと元に戻る。

「ピ・・ンクだ」

「絶対違いますよね」

マークの反応も然り、絶対にピンクじゃない!

「今日からピンクになった」

「王子だからってそんな易々と色に名前・・まあつけられますよね」

「そうだな」

はぁ、なんだかもう疲れちゃった。

とりあえず1人になりたい。

「お部屋へは送っていただかなくても結構です」

「さきほど部屋に戻ると言いながら向かった方向に君の部屋はないぞ」

しまった。また間違っていたんだ。

だから迷子かって聞いてきたのね。

図書室でも部屋が分からなかったことバレてたんだな・・

それからは恥ずかしくなって黙ったまま第二王子に部屋まで送ってもらった。


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