4.うーわー楽〜いいじゃんいいじゃん!
次の日、そんなに元気ならとミアがマナー講師として必要なマナーを叩き込んでくれるという。
なんでもミアは男爵家のお嬢さんで行儀見習いとしてリリーの元に来てくれているらしい。
しかし、ミアと私の予想に反して私は何もかも完璧にこなしてしまった。
ネグリジェ姿に裸足のままでカーテシーをしている私に、ミアはため息をついた
「・・ここまで完璧に淑女教育が行き届いているなんて意外です。」
「へ?」
「私が聞いた話では、淑女としてのマナーですらきちんと出来ないとのことでした」
「へ、へぇ・・」
「わざとできないふりをしていたんですか?」
「さぁ私にもわかりません」
「私にも分からないわ、です」
「わ、分からないわ」
「問題があるのは言葉遣いだけですね」
「そうかしら?」
私、まだネグリジェ姿なんですけどね!?
昨日、色々注文をつけて『お任せください!』とミアが言ってくれてからどうなっているんだろう・・私の服。
部屋の扉がノックされて、ミアが対応する。
あーあ、庭園にも行ってみたいし、念の為もう少しこの国のことも知っておきたいから歴史を知れる資料室みたいなところがあれば行きたいな。
ミアに聞いてもいいんだけど、ミアはたった1人で私の身の回りのことをしてくれているから、あまり負担もかけたくはないし。
出窓に近づき、庭園を眺める。
「はぁ・・」
いい景色だな。
「お嬢様!できましたよ!」
振り向くとミアが黄色いドレスを一着手に持ってきた。
1人で軽々とドレスを持ち上げている。
「わあ!嬉しい!早速着るわ!」
裸足のままミアに駆け寄る。
「はしたないですお嬢様!いつなんどきも優雅に歩く!」
「はい!」
「うーわー楽〜いいじゃんいいじゃん!」
「お嬢様」
「すごい楽だわぁ!」
ミアの睨みは凄みがあるな・・
どうしてもドレスが重くて辛くて何着かドレスの装飾を取ってもらうようにお願いしていたのだ。
大きなワイヤーのパニエもコルセットもお断り。
代わりにこの黄色のドレスは腰にリボンを巻いてもらう。
こうすれば腰は細く見える・・すでに十分細いと思うけど。
くるりと回るとひらりと裾が靡く。
「お嬢様とっても素敵ですが、本当にいいんですか?これで」
「え、うんすごく気に入ってる!」
「やはりコルセットをしないというのもなんというか・・裾がふんわりと広がっているのも流行りの最先端ですし」
「・・え〜」
流行りよりも楽を優先させたい。
「できれば公式の場では以前のようなドレスをお召しいただきたく・・」
「分かった、公式の場に出る時はミアに全て任せる」
「はい!!ありがとうございます!」
「装飾はもう少し工夫して軽くして欲しいけど」
「・・善処いたします。」
絶対しない顔だよそれ・・
これは、できるだけ軽くて華やかで見劣りしないドレスを作ってもらうか、流行を変えるかしかないかな・・。
靴もどうにかしたいなぁと思い、昨日ミアが履いているフラットシューズと同じものを履きたいと言ったら全力で断られたので、どうしようか考え中。
「さて、次は靴よね〜」
「何足かお持ちしてます」
ヒールの高いこれまたゴテゴテに装飾のついた靴ばかり。
「無理、履けない。ヒールの低い靴一足もないの?」
「はい、この中からお選びくだ」
「じゃあ裸足で過ごします」
「・・・こちらです」
奥からローヒールで編み上げのショートブーツが出てきた。
「え!いいじゃん!それ履く」
「正気ですかお嬢様!」
「なんで?これもなんかダメなの?」
「ヒールが高いものを履きこなしてこそだと以前お嬢様が・・」
「以前のお嬢様のことは忘れて」
不服そうなミアを尻目に、ブーツに足を入れた。