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3.プリンセスって歌いたくなっちゃう人のことでしょう?

んー・・起きても何も変わらなかった。

ネグリジェ姿で、オレンジジュースを注いだグラスを持って出窓に座り窓の外を眺める。

窓の外は整えられた庭園が見える。


「きゃあ!お嬢様危ないです!」

ミアが駆け寄ってくる。


「なんでこの庭園って赤い花ばっかりなんです?」

「この国の国色が赤色だからです」

「何で?」

「建国当時から王家の男子は皆赤い髪をしておいでなのだそうですよ」

ミアに引っ張られ、出窓から降りる。

「ふうん・・第二王子は違いましたよね〜」

ミアの体がビクッと揺れる。

「もしかして・・」

「お嬢様、すみませんでした!」

愛人の子とか!?とゲスなことを言おうとしたところで

ミアが深く頭を下げた。


「な、何が?」

「昨日、1番初めに出会った殿方が第二王子だったのです。私とても急いでいてお嬢様が気に入っているドレスでしたのに、申し訳ございません」


「ん?ドレス?話が見えないのだけど?」

床に倒れちゃったから洗濯しなきゃって話?ドレスってそんなに洗わないのかな。

ビンテージデニムみたいに。


「第二王子はその・・生まれながらにお髪と瞳の色が特殊なんです。それで、お嬢様より第二王子に触れられた物は破棄する様にと言われていました。」

なんだそれ。髪と目の色が違うからってばい菌扱いかい。


「彼は手袋をしていたようだけど、それでも捨てろって私が言ってた?」

「はい。仰っておりました」

「ハァ〜・・最悪。忘れてくださいそんな話。今まで手間をかけさせてすみませんでした」

「いえ、そんな!滅相もございません!そもそも第二王子と触れ合う機会なんてなかったので」

「まあそうよね?なんでそんなこと言い出したの私」

「・・一度、庭園でハンカチを拾っていただいたことがありました。その時にそう仰っていました。今後も第二王子が触れたものは破棄するようにと」

「ふ〜ん嫌な感じ。だから王子も私を抱き上げる時に『嫌だと思うが』って言ったのね。本人にも知られちゃってるんじゃん。あとで謝らなきゃ」

「えぇ!?」

「え!なにか問題?」

「い、いいえ何でもありません」


いや、でもわざわざ謝るのも感じ悪い?

自分の罪悪感のために謝ってる感じするよね?


「まあとりあえず第二王子の話は撤回で、ドレスも今まで通り着るから」

「・・一度麻の袋に入れてしまいましたけど・・」

「うん?出せばいいでしょ?」

「は、はい。かしこまりました」

「あと、ついでに何だかゴテゴテについてた装飾も全部取ってください」

「えぇえ!!全部ですか!」

「だって重いんだもん」

「そんなぁ」

「あと、今日のドレスも1番軽いやつで、コルセットはつけません」

「えええええ!!」

「あ、あとおかわりください」

グラスをミアに差し出す。

この世界のオレンジジュースはとっても美味しい。

朝ごはんも美味しかったし、食事が舌に合うと少しだけ絶望感が和らいだ。

「はぁい」

トボトボと歩いて行くミア。


「ネグリジェだって、足元まで長さがあってヒラヒラしててお姫様みたい」

自分の着ている服を両手で掴んで広げて一回転してみる。

鏡に映った自分と目があう。

「本当、見た目もプリンセスって感じ」


元の世界で見たことのあるミュージカルアニメを思い出す。

その中の歌を歌うと美声が響いた。

「嘘でしょ。あなた声も綺麗なの〜」

こんなに声がいいと歌うのが楽しい。

適当に歌詞をつけてミュージカル調の歌にする。

クルクルと回りながら出窓に近づき、出窓を開ける。

肘をついて両手に顎を乗せ、歌いながら空を見上げると綺麗な色をした小鳥がやってきた。




同じ頃、庭園のベンチに座って本を読んでいたジャックの元に、風に乗って小さな麦わら帽子が飛んでくる。

思わず帽子を掴むと可愛らしい声が聞こえてきた。

「帽子が飛んでいっちゃったー!」

「お嬢様!私が行きますから!お待ちください!」

角から赤い髪の小さな女の子が後ろを気にしながら走ってくる。

「きゃあ!」

女の子はジャックに気がつくと怯えたような顔をする。

急いでフードを被ると、ジャックは女の子に少し近づくと少し屈んで帽子を差し出す。

「どうぞ」

「い、いい!いらない!呪われるから!」

そういうと、走って来た道を戻っていく。

「マーガレットお嬢様!帽子はありましたか!?」

「なかった!またパパに買ってもらうわ」


立って上を向くジャック。

リリーの歌声が聞こえてくる。目を閉じ、歌声に耳を傾ける。



庭園に近い廊下を側近とともに歩いていたウイリアムが歌声を聞いて庭園に向かい、上を見上げる。

リリーが気持ちよさそうに歌っているのを見る。

「ほう・・」

「もう一度医師を呼んで検査させますか?」

「よい。思ったよりも元気そうだ。明日、時間があれば直接様子を見に行くことにする」

「はい。事前に伝えておきますか」

「よい、取り繕われたら今の状況がきちんと把握できないからな」




すげ〜。ここってミュージカルアニメの世界なのかな。

「いつか王子様が迎えにくるかしら・・うふふ」

なーんちゃって。


小鳥を空に放ち、振り返るとミアがオレンジジュースを入れたグラスを持って呆然と立っている。

「あ、あは!なんかプリンセスごっこしたくなっちゃって」

「・・はしたないことはおやめください!プリンセスはそんなこと致しません!」

「え!?プリンセスって歌いたくなっちゃう人のことでしょう?」

「違います!!!」

「違うの!?」

「歌を歌うだなんて」

「そんなにいけないこと・・ですか?」

「お嬢様はもう妃になるのを諦めて娼婦にでもなるおつもりですか」

「娼婦!?」

「歌は男に媚を売るしか脳のない女がすることです」

そんなに・・!?

歌に何か悪い思い出でもあるのかな。


「それと、私に敬語は使わないでください。たとえ記憶を無くているとしても貴族然としていただかないと困ります」

「は、はぁい」

ミアの迫力に押されながら、グラスを受け取った。




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