18.少々お転婆ですが、くれぐれもよろしくお願いいたします
第二王子には一度部屋に送ってもらって、荷造りを開始する。
極力身軽な方がいい。
クローゼットと睨めっこする。
ゴテゴテした服は持っていかないにしてもメイドっぽい服・・もない。
1番質素な服を着て行って、全部最初についた街で揃えよう。
リリーちゃん個人は現金を持っている節はない。
まあ、リリーちゃんとして過ごした数日間現金なんて必要な機会は全くなかったから持っていないのだろう。
お金は何着かのドレスから取った装飾の宝石を現金に変えることができればなんとかなりそうだ。
結局植物図鑑とノートが入っていた鞄に下着と寝巻き1着に宝石を入れただけになった。
「リリーお嬢様!どういうことですか!?」
植物図鑑とノートを見ていたらいつの間にか眠っていたらしく、ミアに起こされた。
「えぇどういうことって何が?」
「第二王子についてサリムアに行くと伺いました!」
部屋の外を気にしながら小声で話しているけど、顔の迫力がすごい。
「うん。私が行くって事は秘密だから後のことはよろしくね」
「よろしくねってお嬢様」
部屋の扉をノックする音が聞こえる。
何か言いたそうな顔で扉と私を交互に見てため息を付くと扉の方に向かうミア。
「第二王子殿下付きの者が迎えにいらっしゃいました。出発前にお渡ししたい物があるそうです」
「え?なんですかこれ」
第二王子の側近が案内してくれた小さめの部屋には
町娘やメイド風の洋服がずらりと並ぶ。
「王妃様・・第二王子殿下の実母にあたる方の遺品です」
「遺品!?王妃様って平民だった・・なんて事はないですよね」
「もちろんです。王妃様は幼い頃から王妃になる事が決まっておいででしたので、王妃となる前から国民の声を聞かねばとお忍びで城下に出向くことがありました。その時にお召しになっていたものです」
「そんな大切なものを私に?」
「行きは急いでおります。途中で服を買いに行く時間はありません。仕方なしです」
「え?私服買いたいなんて言いましたっけ?」
「お忍びで行かれると伺いました。忍べるお召し物をお持ちでない事は容易に想像できます」
う・・読まれている。
けれど助かる。
「きちんとクリーニングしてお返ししますね」
王子達にとっては大切な物である事に違いない。
並んでいる服を見ていくと茶髪のウィッグまであった。
「え!こんなものまで!?」
「ええ、変装の装備は一通り揃っています」
これも借りよう。
そうすれば髪色についてはクリアする。
「ミア、どう?」
ウィッグを軽く被ってミアの方を振り返る。
「お嬢様!ミアも連れて行ってください!」
「私がいない間もまるで私がここで生活しているかの様に装わなければいけないのに、ミアを連れてなんて行けないわ。私のメイドは1人しかいないのに」
「しかし・・」
「私大体のことは1人でできているでしょ?」
「確かにそうではありますが病み上がりですし」
「大丈夫よ。この通り元気だし」
中身が私になっただけで、身体にこれといった不調もない。
「不安になるお気持ちもわかります。行きは急いでいるとは言え、夜はきちんと宿に泊まって身体を休める予定です」
第二王子の側近がクローゼットを開けるとバッグや帽子等小物が出てくる。
「わあ!」
「向こうにつけばメイドも数名います。滞在期間中はベテランのメイドをシャイリマール様の専属につける予定です」
「・・ですが」
「見て!ミア!どれが似合う?」
いくつも帽子を手に取る私にミアはため息をつくと、第二王子の側近に頭を下げる。
「少々お転婆ですが、くれぐれもよろしくお願いいたします」
「承りました」




