14.やっぱりストーカー?
シャワーを浴びて、寝巻きに着替えたらやる事がない。
スマホも漫画もテレビもゲームもないから、追加で図書室で借りてきた植物図鑑を机の上でパラパラとめくる。
「お嬢様、本日はこれで失礼してもよろしいですか?」
お茶を運んできたミアが立っていた。
「うん!大丈夫ありがとう」
お茶を受け取って、ミアが部屋を出たのを確認すると、机の引き出しからノートを取り出した。
自分の記憶が書いてあるノート。
異世界に来る前の文字で書いているので、ミアが見ても分からないと思う。
「あれー?ペンがこの辺りに・・」
引き出しに手を入れてペンを探していると何かが手にある。
「メモ帳?」
メモ帳をみると何も書いていないが、なんか少しボコボコしている。
ボコボコしている部分をペンで軽く色をつけると文字が浮かび上がる。
『13日 焼却』
「13日、焼却?」
扉をノックする音が聞こえる。
「はーい」
「お嬢様、ミアです。布巾を忘れてしまって」
引き出しにノートとメモ帳を入れて、ミアを迎え入れる。
「ちょうどよかった、ねぇ、ゴミってどうやって処分するの?」
白紙のノートを破って丸めたものをミアに見せる。
「あ、明日焼却の日なので、もらっていきますね」
「明日?」
「はい。今月は13日と26日が焼却の日です」
「お城で焼却するの?」
「はい。一部ですが、外部に出せない機密文書もあるので紙の多くは裏手の焼却炉でまとめて焼いています」
「そうなんだぁ、ありがとう!じゃあこのゴミもよろしく」
また部屋から出ていくミアを見送ると上着を羽織って、ブーツを履く。
13日焼却って明日のことだよね。
何か分からないけど、何か手掛かりがあるかもしれない。
部屋を出ようとしてミアの言葉を思い出す。
ただでさえ目立つ髪をどうにかしなければ
クローゼットにキャップなんて都合のいいものはあるわけもなく。
持っている帽子じゃツバが広すぎて邪魔くさい。
唯一あった地味めなスカーフを頭に巻くと、部屋を出る。
一応、部屋の外に出る時は色々見ながら歩いていたつもり。
まだ城内は明るい時間だし道に迷うことはない・・と思う。
使用人がいると分かると柱に隠れる。
「明日から第二王子は少し領地に戻るそうだ」
「マジかよ!よかったー!」
「なんでお前が喜んでんだよ、接点ないだろ」
「ないけどさー、どこかでぶつかったりするかもしれないじゃん、それで呪われたらどうすんだよ」
「考えすぎだろー」
あはははと大笑いしながら歩いていく男性達。
服装的には医師団の人たちかな?
ああいう人たちがたくさんいるんだろうな。
髪がピンク色なだけでそこまで言われんのってなんかムカつく。
自分のことじゃないのに、なぜここまでイラっとするのか。
今日の全てを諦めたような顔した第二王子を思い出し、拳を握る。
「君たちまだ居たのか?早く帰りなさい!」
「団長!すみません、お疲れ様です!」
団長?あぁ、薬草園の出入りを許されている人か。
顔が見たいけど、見るわけにはいかない。
人の気配が消えた後に、城の裏手に回るとレンガ造りの焼却炉があった。
「うわ、大きい」
想像より大きかった。
人が余裕で入れる大きさ。
中を覗くが一見何も見えない。
四つん這いになって、中まで入ってみる。
息を吸うと灰まで吸い込んでしまい、咳き込む。
上着の袖を伸ばして、口に当てながら中に入ると
端っこに小さなバッグが置いてあった。
「なんだろうこれ」
中を見ると黒いカバーが付いている本と、古びたノートが一冊ずつ入っている。
開いてみると本の方は植物図鑑のようだったが、文字が読めない。
呼吸が限界なので、とりあえずバッグを持って、焼却炉を出る。
「けほっ」
身体中についた灰を払う。
スカーフも取って、灰を払った。
どうしようこれ。ミアにどうやって言い訳しよう。
「何をしているんだ君は」
未知の生物でも見ているかのような驚きと信じ難さが入り混じった顔をしている第二王子殿下と目があった。
しまった!ここまできたら誰もいないと思って油断した!
喋ろうと思って咳き込んでしまう。
「大丈夫か?誰か使用人を呼んでこよう」
「ま!ゴホゴホ」
使用人を呼びに行く第二王子を止めようとして咳き込みながら首を横に振る。
「しかし、今の格好では部屋にも戻れないぞ?」
よく見ると前髪が下りていて若干ラフな格好の第二王子にドキッとする。
「なんでここにいらっしゃるのですか?1人ですか?」
「あぁ、明日の積荷の確認で・・いや、僕が先に聞いている」
「やっぱりストーカー?」
「ス?どういう意味だそれは」
「なんでもありません」
「どうして焼却炉から出てきたんだ君は」
「記憶を辿れるかもしれないものが見つかったんです」
ここは正直に話すしかない。
バッグを持ち上げるとニッコリと笑った。




