表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/20

13.そうだそうだー!ダメだぞジャックー!

「不慮の事故だったのだが、あの時の兄は見ていられない程憔悴していたよ・・」


またしばらく沈黙が流れる。

こんな重たい話をさせてしまった。

謝らなきゃ。

大泣きしたことも、ハンカチを借りたことも、今まで無礼を働いたことも。

でも声にならないまま床ばかり見てしまう。

リリーちゃんも、事故で大切な人を亡くしてしまったのか。

自分とはかけ離れた存在で違和感しかなかったこの可愛いお姫様に少し親近感が湧く。



「やはり、少し薬草園を回ろう。こう見えて植物には多少の知見がある」

「ジャック殿!用意できましたよ」

第二王子が立ち上がって私に手を差し伸べたタイミングでマークとミアがやってきた。



「あら?お邪魔でした?」

「マーク!お前は何か勘違いをしていないか!?」


マークと第二王子が戯れ始めたので、ミアが私に手を伸ばす。

「お嬢様、お茶の準備が整いました」

「ありがとうミア」

「あら?お嬢様目が赤い!何かあったんですか?」

「え・・っと」

大泣きしたなんて言うの恥ずかしいな。



「あ、それは私のせいで」

「えー!あ!目を!植物を触った手で目を擦っちゃったんですよ!殿下に触っちゃダメって言われていたのに触っちゃって」

「え!どの植物ですか!?すぐに医者に見せないと!」

第二王子が馬鹿正直に言おうとするので、咄嗟に言い訳をしたがマークが焦り出して、私も焦る。



「あ、えっと大丈夫です、殿下にすぐ水で洗い流してもらいました!」

「ジャック!ダメじゃないか!そういうことがあったらすぐ俺に報告しないと!」

「いや、報告するも何も・・」

「いえ!私が言いつけを守らず!えっととにかく大丈夫で」

「大丈夫じゃないです!で?どの植物を触りましたか!?」



「あははははは!」

第二王子が声をあげて笑っている。

「どうして君は・・あはは!そんな嘘つかなくたって・・」

声にならないほど笑っている。

笑うとこんなにも綺麗に口角が上がる人だったのか。



「わ、私は泣いちゃったことが恥ずかしいんです!」

「お嬢様、泣いたんですか?なぜ」

怖い!ミア!顔が。



「あーっと、色々記憶がないことがしんどくて溜まりに溜まった感じで」

「・・お嬢様」

ミアがすぐ悲しそうな顔になる。

百面相メイド。


「そうなのか?僕が一緒に薬草園を回らないと言ったからでは」

第二王子を睨みつけるが、時すでに遅し。


「はあ!?そんなこと言ったのかよジャック!」

あぁっもう!切り抜け方が分からない!ヤケクソだヤケクソ!

「そうだそうだー!ダメだぞジャックー!」

全部第二王子のせいにしよ。泣いたのもトリガーは第二王子だし。

もう無礼は働きまくりだし。今更って感じだし・・後で謝ろ・・

「君は僕が嫌いだろ!?」



場がシーンとなってしまった。どうしよう。なんでマークは何も言わないの?

第二王子の顔がみるみる赤くなる。

えーと。どうする?助け舟出す?助け舟って何?

「お嬢様はそんなこと言ってないぞジャックー!」

マークの後ろから拳を上げ、声色を変えて応戦する。


「な、なんの真似だそれは!記憶をなくす前の君は完全にそうだった!」

「記憶をなくして辛い思いをなさっているのに、記憶をなくす前のこと言うなんていけないぞ!」

「ソウダゾジャックー!もっと怒られろー!」

「お嬢様!!!」

3人でやいのやいのしていたらミアの怒号が飛んできた。



「第二王子殿下を呼び捨てにしない!マークさんも見知った中だとは存じますが、お嬢様や私のいるところで殿下を呼び捨てにするのはいかがかと思います」

「「・・あ、はい。すみません」」

私とマークの言葉が重なる。


「恐れながら第二王子殿下、なんであろうと妃候補であるお嬢様をエスコートすることは当然のことです。それをそんな冷たいお言葉を投げかけてお嬢様を泣かせるとはどういうことです?」

ミアが第二王子を見てにっこりと微笑む。

「お・・すまん」

こわーい。怖いよー。

完全にミアのお小言劇場が始まって、3人とも小さくなってそれを聞いた。



お茶もすっかり冷めてしまったので、今日はもう部屋に戻ることにした。

「マークは殿下を呼び捨てにできる間柄だったのですね」

「先ほどミアさんには話したのですが、殿下が小さい時から遊び相手としてお相手しておりました」

「そうなのですね」



だから今も仲がいいのか。マークには心を許している感じがする。

「そうだジャック殿、これくらいでいいですか?」

マークが薬草園を出る前に第二王子に謎の粉末が入った袋を掲げる。

「あぁ、ありがとう」

「それはなんですか?」

「マタタビです」

「マタタビ?」

って猫が大好きっていうあれ?



「これには身体を暖めて血行を良くする効能があって、殿下は時折これを煎じて飲んでいます」

「こんなにいっぱい飲むんですか?」

「私も飲むが、領地の医療機関にも少し配るんだ」

「ジャック殿下は少しの間領地に戻るので、多めに用意したんです」

「領地に戻るんですか」

「あぁ」

「私も連れて行ってもらうんですよ」

「マークも?どうして」

「殿下の領地は今冬なんです。冬にしか咲かない草花をこの薬草園でも咲かせたいので、実際の草花を見に行きます」

ミアの方を見ると少し落ち込んだ顔をしている。

いや、お小言劇場が終わったあたりから、やってしまった感をひしひしと感じている。

お部屋戻ったら慰めてあげよう。



「へぇ〜どれくらいの期間留守にするんです?」

「えーと、領地まで馬車で3日ほどかかって、3日ほど向こうに滞在予定なので約10日ほどですかね」

「馬車で3日!!!」

何それ超大変。

「行きは急ぎだが、帰りはせっかくなら寄りたい街があれば寄ってくる。10日よりもっとかかるかもしれない」

「わー!いいんですか!楽しみだなぁ。お嬢様にお土産買わないとですね殿下」

「旅行に行くわけではない」

「ミアさんにも買ってきますね、お土産」

「へ!?あ、ありがとうございます!」


嬉しそうな百面相メイド。

わかりやすくてかわいいな。

それから私たちは第二王子とマークに別れを告げると部屋まで戻った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ