表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/20

12.えぇ!あ、僕が!?

薬草園はドーム型のガラス張りで温室になっていた。

「すごいわ、こんなものがお庭にあるなんて」

「2階建てになっていて、2階には少しお茶やお食事ができるスペースもあります」

「そうなのね!城に勤める人が自由に使えるのかしら?」

「いえ、希少な薬草やハーブ、毒を持つ危険なものもありますので、ここに入れるのは限られた人だけです」

「限られた人?」

「えぇ、基本的に自由に出入りできるのは王族のみですが、妃候補の方も見聞を広めるために王族の方や私の様なここを管理する者と一緒でしたら入ることが許されています。あとは城内に勤める医師団のトップのみが出入りを許されています」

「あ、じゃあミアは入れませんよね」

ラッキー!赤い実のことが心置きなく聞ける!


「いいえ、中には階段もありますし、妃候補の方には1名のみメイドをつけることができます」

「ぅ、そう!よかった!」

えーん!!

今日は下調べってことで、また改めてミアに内緒で来よう。


肩を落として薬草園に入ると、いろんな草花が咲き誇っていて圧巻だった。

「うーわー!すごーい!」

天井も広い!2階に続く螺旋階段にも緑の蔦が綺麗に絡まっている。

「こんなに美しいのに一般公開できないなんて勿体無い気もしますね」

「はは、そんな風に言っていただけて嬉しいです」

「マーク?」

声の方を見ると、螺旋階段の上から桜色の髪の人がいた。

げ。またかよ。私の行く先々にいるよねこの人。

もしかしてストーカー?

ん?この場合は私がストーカー?

「第二王子殿下にご挨拶申し上げます」

ミアが深々と頭を下げた。

「あぁ、頭を上げてくれ」

ミアはパッと頭を上げる。

なんだかとても嬉しそうだ。


「あ、ジャック殿下、シャイリマール様が薬草園を見学したいとおっしゃっていて、案内をお願いできますか?」

「「は?」」

第二王子殿下と私の声が重なる。

「すみません、私は少々仕事がありまして」

「いい、マーク。自分でやるからシャイリマール嬢を案内して差し上げろ」

「殿下にやっていただく訳にはいきません」

「普段から自分でやっているのだから大丈夫だ」

「あまりこちらの薬草をいじられると困るのです」

第二王子殿下はマークを睨みつけるが、マークはニコニコとしている。


「あのぉ〜勝手に見て回りますから私のことはお気遣いなく」

「お嬢様、勝手に見て回ってはいけないのですよ」

落ち着きを取り戻したミアが私の隣にくる。

「え?なんで?」

「毒のある植物もあります。ここから出たあと誰かのお食事に毒でも入っていたら真っ先に疑われるのはお嬢様です」

「えぇ・・そんな」

「あと、入園を許可したマークさんが打首となります」

それと、第二王子殿下にご挨拶をと私の耳元で小声で言ってくる。

「それは困るわね」


第二王子殿下がため息をつく。

出たよ、この人のため息聞き飽きたわ。君の幸せは逃げまくりだぞ。

「わかりました!じゃあ私は第二王子殿下に案内してもらいますから、ミアはマークのお仕事を見せてもらいなさい」

「「え?」」

今度は第二王子殿下とミアの言葉が重なる。

「遅ればせながら、第二王子殿下にご挨拶申し上げます」

螺旋階段の下まで行って、軽く頭を下げると手を第二王子の方に伸ばす。

赤い実の情報を得られないなら、ミアの恋路を後押しするわ!


第二王子は渋々階段を降りてきて、私をエスコートする。

「きちんとお勉強するのよ。ミア」

「はい、お嬢様・・」

「では私たちも行きましょうか」

マークはずっとニコニコとしていて、もしかして満更でもない感じ?


第二王子は黙ったまま2階まで行くと、エスコートを解いた。

何か文句の一つでも言われるかと思ったが、何もない。

「君のメイドは優秀だな」

「はい!そうなんです!」

「しかし、この後誰かの食事に毒が盛られることがあれば疑われるのは君じゃない。私だ」

薬草園に差し込んだ光りが第二王子の顔に当たって黄緑色の瞳が光る。

「だから君は心配せず自由に見回ってもらって構わない」

なんと声をかけるべきか。いつもは無駄に屁理屈をこねるのにこういう時に私は咄嗟に言葉が出ない。

「触るだけで毒が回る植物もあるから無闇に触るのだけは避けてくれ」

「・・じゃあやっぱり一緒に回ってください」

「触らなければいいだけだぞ」

「私は好奇心が旺盛なんです・・触っちゃったらどうするんです・・」

なんだか泣きそうになる。

彼は今までどれだけの悪意に晒されたのだろうか。

きっと私の想像ができないほど膨大で悪質なものなのだろう。



「ど、どうした!?」

抑えきれず涙がこぼれてしまった。

「殿下が・・殿下がぁ〜」

「はあ!?」

「紳士の風上にもおけません〜〜!」

「えぇ!あ、僕が!?」

第二王子が焦っているが一度流れてしまった涙は止まらない。


どうして目の前にいる人は全てを諦めているような顔をしているの。

どうして薬草園に来ただけで毒殺を疑われなきゃいけないの。

どうしてドレスは重たいの。

どうしてヒールのバカ高い靴を履かなくちゃいけないの。

どうして貴族社会のマナーはこんなに厳しいの。

どうして私は異世界なんかにいるの。

どうして私がこんなめに合わなきゃいけないの。

お母さんとお父さんに会いたい。

どうして2人は私を置いていってしまったの。


とめどなく溢れてくる涙に第二王子はおどおどしつつも、近くのベンチに誘導し私を座らせ

ハンカチを渡すと、遠慮がちに背中をさすってくれる。

「すまない。落ち着いたら一緒に回ろう。向こうにお茶を飲める場所もある」

第二王子は自分のせいだと思っている。

落ち着いて見ればこんなに泣いてしまって恥ずかしい・・

でも、なんだかスッキリした。

両親を事故で亡くしてから、こんなに思いっきり泣いたのは初めてかもしれない。


でもやっぱり恥ずかしくて、穴があったら入りたい。

沈黙のまま時間が過ぎてなんとなく気まずい・・

できるだけ、楽しい話題を・・

「先ほど、第一王子殿下と会いました」

「・・そうか」

「私は幼少のころ、第一王子殿下とよく遊んでいただいたらしいです」

「そうか」

「私にはお兄さんがいるらしいのですが、殿下はご存じですか?」

驚いた顔で私を見る。

「・・なんですか」

「すまない。そうだよな、君は自分の名前すら覚えていなかったからな」

「第一王子殿下にも言われましたよ。本当に記憶がないんだなって。ひどく悲しそうな寂しそうな感じでした」

「本当に私から聞くか?記憶が戻るのを待ってもいいんじゃないか」

記憶が戻ったら私はリリーちゃんじゃなくなるってことでしょ?

一生わからないまま過ごすことになっちゃうのも何だかモヤモヤする。

「今の私には誰から聞いても同じです。教えてください」

第二王子はふうっと息を吐いた。

「君にいたのは兄ではない」

「え?」

「姉だ」

「え!」

確かに第一王子は兄とは一言も言ってなかったな。

「君の姉は兄の婚約者だった」

「うえ!?」

「若くして未来の国母に相応しいとの噂が流れていて、男女問わず帝国中の人々を虜にしていた」

「・・でも婚約者だったってことは」

「1年半前に亡くなった」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ