11.・・本当に記憶がないんだな
殿下の髪は柔らかく、少しだけうねりのある髪だった。
「どんな髪型がいいですかー?」
「んー・・邪魔にならなければなんでも良い」
「はぁい」
妹が欲しくて妹ができた時にってお人形でよくヘアアレンジを練習していたし、中学高校と友達の髪をアレンジしてあげていたのを懐かしく思い返す。
高校の時にいつも彼氏に会う前にヘアアレンジをお願いしてきた子は高校卒業してすぐに妊娠して私の通ってた大学まで子供を見せに来てくれたっけ・・
両親のお葬式に来てくれたらしいけど、お葬式自体あまり覚えてないしお礼も言いそびれちゃったな。
「どうだ、その後は」
手持ち無沙汰なのか、芝を手のひらで撫でている第一王子。
「おかげさまで快適には過ごしています」
「そうか」
「そうだ、殿下から見て、記憶を無くす前の私ってどんな感じでした?」
「ん?記憶をなくす前か。そうだなぁかわいい妹のようなものだったし、今もそう思う」
「妹」
「あぁ、君は私の友人の妹で小さい頃は良く城に遊びに来てくれてな。よく遊んだ」
「まあ!」
「髪もこんな風に結えてくれたりしてな」
「そうだったんですね!」
「あぁそれはそれは楽しかった。友人と場内を駆け回っては使用人たちに怒られたな」
本当に楽しそうに話す第一王子にこちらも笑顔になる。
髪を結び終えて、第一王子の正面に回る。
サイドは短い髪があったので編み込みでまとめて、後ろで束ねた簡単ヘアアレンジ。
「できましたよ!」
「あぁ、ありがとう。」
「私にはお兄様がいらっしゃるのですね。もう少し記憶が戻ったらお会いしてみたいです。」
「・・本当に記憶がないんだな」
立ち上がりながら酷く寂しそうな顔をする第一王子。
「リリーお嬢様!なんで日傘を差していないんですか!」
第一王子になんて声をかけようかと思っていた時にミアの声が後ろから聞こえてくる。
「ミア!」
「お嬢様!メイド長も第一王子殿下がお嬢様のお部屋に来ることは知らなかったそうです」
「へ?」
「今日も呼び出された理由も体調は大丈夫かっていう面談でした」
「え、あの、ミア」
「側近の方が連絡を忘れていたとか?」
「ミア、ミア!」
考え込むミアに第一王子が近くにいることを教えようとしているが何も聞いてくれない。
「え、わざと?だとしたらクソは」
「ミアってば!!」
「ははは!すまんなぁ、俺が言わなくていいって言ったんだ」
「え?」
ミアは第一王子の存在に気づいてフリーズしていた。
「す、すみません殿下」
「申し訳ございません!第一王子殿下にご挨拶申し上げます!」
第一王子は構わないとミアのお辞儀を手のひらで止める。
「シャイリマール嬢、ジェーンエイド嬢の言ったことは気にするな。君のペースでゆっくり進めればよい」
「はい、ありがとうございます」
第一王子を見送ると、ミアが私に日傘を差す。
「サンドラ様に何を言われたのです」
ミアの目が怖い・・
サンドラさんとのやりとりを話すとミアがため息をつく。
「今朝の私の話も聞いていませんでしたね!?靴は新しく用意をしたと言ったのに!」
「人の話聞いてないことについてがミアも人のこと言えないでしょ」
「う・・ただでさえ目立つんですから、要らぬ問題が起きないように外に出る時は日傘をさしてください!」
「日傘のデザインでバレるでしょ」
ミアが私を睨みつける。
「私が一緒にいない時はお部屋から出られないようにしましょうか!?」
「いいえ!申し訳ございません!」
「またお嬢様は!先ほどは私にも落ち度はありましたけどね!?」
お小言メイド劇場が始まりそうなところでミアの奥にマークの姿が見えた。
「マーク!」
「え!?」
ミアが予想外の反応を見せて、素早く私の後ろに身をひそめる。
日傘も自分に差しちゃってるし。
「ミア?」
「あぁ!こんにちは、シャイリマールお嬢様」
「こんにちはマーク」
「ミアさんもこんにちは」
「えぇ、はい」
顔を真っ赤にしてモゴモゴしている。
はは〜ん!私にだってあるわ!女の勘ってやつは。
「マークはミアと知り合いだったのね」
「ええ、お嬢様のために薬草やハーブのことを熱心に勉強していると母から伺っています」
「あら!じゃあこの間いただいたミントティーもお勉強の賜物かしら」
ミアを見ると、なんですか!とでも言いたげなミアに睨みつけられる。
「ハーブ系は今私の管轄なのでお気に召されたらまた使ってください」
「そうね!とても気に入ったからまたミアに作ってもらうわ!ところで薬草園を見学することって出来るかしら?色々聞きたいこともあるの」
「はい!ちょうど今から行くところだったので、お時間あるなら一緒に行きますか?」
「えぇ、お願いしたいわ。ミアもきちんとご挨拶して」
「よ、よろしくお願いいたします」
「はい、では行きましょう!」
ミアの弱点を見つけた!
マークの広い背中を見ながらニヤニヤしていると、日傘が差される。
「お嬢様、余計なことしないでくださいよ」
「え?なんのこと?」
ミアは顔を真っ赤にしたままため息をついた。




