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10/20

10.あ、あなた頭でも打ったんですか!?

忌色(いみいろ)・・|

ピンクが忌色・・

ミアから第二王子が如何に皆に避けられ、嫌われていると聞いたが、詳細はこわくて聞けなかった。

触れられるのは嫌だと思うと言った第二王子。

図書室や庭園での態度もそれを知れば納得がいく。


「お嬢様!」

ミアの声にハッとする。

「聞いてましたか?」

「な、なに?」

ミアがため息をつく。

「新しいローヒールの靴を用意しました。今日部屋の外に出る際は、既にシューズボックスから出してある靴を履いてくださいね」

「分かった。ありがとう」

「朝食を全く食べてないじゃないですか!食欲がありませんか?」

「うーん」

「医師を呼んできましょうか?」

「いや、そこまでじゃないから大丈夫」

「では症状を教えてください。薬草園に行って良い薬草があればもらってきます」

「ちょっと考え事してただけだから、本当に大丈夫」


朝食の途中だったことを思い出し、テーブルを見るとサラダにミニトマトが入っていた。

「え、これってトマト?」

「そうですよ」

「これってどこかから仕入れてるの?」

「いえ、城で食べられている野菜や果物はほとんど城内で作られます」


またミアに持っていくよう強要された日傘を持って、庭園に向かう。

昨日会ったマークの一家が野菜も薬草も育てているだなんて!

あの赤い実の事を知っているかもしれない。

ミアも付いてきたがったけれどメイド長から呼び出しがあったらしい。

表情だけで『クソ野郎』とでも思っているのが手に取るようにわかった。

だけど、ミアが一緒だと赤い実の事を聞きづらいから私的には好都合。


「あら。リリー様ごきげんよう」

日傘を持ったままマークを探して庭園をウロウロしているとゴテゴテに装飾をつけたドレスを纏ったいかにもな茶髪のご令嬢がメイドを2人連れて立っている。

ツリ目だが美人な所がいかにも感を増大させている。

「ご、ごきげんよう」

誰だっけー?名前、、

挨拶を返しただけで面食らった顔をしている。

部屋の庭園を1人で歩くならって昨日妃教育を受けている令嬢2人の肖像画と名前を教えてもらった。

2人とも茶髪で、、ツリ目の方はえーと。

「メイドも付けずにお散歩ですか」

「ええ、まあ」

「体調は良いようで、安心しましたわ」

「どうもありがとうございます」


「サンドラお嬢様」

そう!サンドラ・へンリー・ジェーンエイド!

サンドラさんのメイドがサンドラさんを呼んで何かを耳打ちした。

「まあほんと!私がプレゼントした靴を履いてくださったのね!」

え、あなたがプレゼントした靴?

まじ?

昨日から履いている編み上げのショートブーツを見て、ミアの顔が浮かぶ。

うっわ!やっちゃった!新しいブーツ買ってくれてるって言ってたよね。

ただでさえミュージカルごっこしてから親しげな態度がなくなっちゃったのに。


「とってもお似合いよ」

くすくすと笑う3人にハッとする。

ミアに怒られることばかり考えていた。

「とても履きやすいブーツありがとうございます!」

「はあ?」

「常々お礼を言いたいと思っていたのです。お会いできてうれしいわ」

「あなたが教育の場に出れば、いやでもお会いできますのに」

確かにそれはそう。

「そうですよね〜・・すみませぇん」

「服装も・・なんと簡素な」

服装?今日は装飾を取った赤いドレスだ。

赤いドレスがやたらと多いのよね、リリーちゃん。

リリーちゃんにパキッとした赤いドレスはあまり似合わない様に思う。

「装飾を取って、とっても軽くなったんですよ!サンドラさんはドレスが重たくて体に負担がかかっていませんか?」

「え・・」

3人が顔を見合わせる。

確かに、私は妃やお嬢様って感じじゃないし。

「私にもメイドが1人おりましてとっても仕事ができるんですよ!ドレスの装飾を取ってと言ったらものすごく綺麗にそれも短時間で取ってくれて、最初はすごく反対していて渋々って感じだったんですけど、渋々やった仕事なのにとっても綺麗な仕上がりですよね。やっぱり私のメイドは仕事は手を抜かないプロフェッショナルなんですよ!」

ミアの素晴らしさを熱弁していると、サンドラさんと1人のメイドの顔が引き攣っていく。

もう1人のメイドは嬉しそうな顔を浮かべ始めた。

「あ、あなた頭でも打ったんですか!?」

「え?」

「妃教育を受けないのなら早めに辞退してください!こちらはとても迷惑しています!それではごきげんよう!」

「え・・ごきげんよう・・」


サンドラさん御一行を見送りながら考える。

「辞退・・」

辞退ができるのか!いやしかし、リリーちゃんが戻ってきた時に勝手に辞退していたら怒るだろう。

サンドラさんの言う通りなら、リリーちゃんは第一王子の妃を目指していたってことよね。

これは妃教育をがんばった方がいいのか?

でもなー・・

「ていうか、サンドラさん勘がいいな」

頭は打ってないけど、これ以上喋っていたら記憶喪失のことバレてたかな。


「ぶ!!!」

吹き出す音が聞こえて、そちらを見ると垣根の影に誰かが隠れている。

「ごきげんよう?」

覗き込むと第一王子があぐらをかいて座っていた。

「あっはっはっはっは!」

大口を開けて笑っている。

この人笑い方が豪快だよな。

「第一王子にご挨拶申し上げます。」

「いい、いい、そんな堅苦しい挨拶はいらん」

「・・ごきげんよう殿下」

カーテシーをするのをやめ、軽くお辞儀した。

「はは!あ〜・・笑った」

「そんなに面白かったですか?」

「あぁ、嫌味が全然通じていなかったな」

「嫌味・・?」

サンドラさんとの会話に嫌味な部分なんてあったかな?


「見つかったら面倒だから隠れていた。悪く思うな」

立ち上がった第一王子に違和感を覚える。

「あ、今日は髪を結んでないのですね」

「え?あぁ、さっきまで東屋で横になって休んでいたんだ」

「側近もつけずに?」

「1人になりたい時だってあるだろ」

「そうですね」

第一王子は意外そうな顔をする。

「なんですか?」

「いや、賛同が得られるとは」

「私にもあります。1人になりたい時」

「そうか」

「あ!髪私が結んでもいいですか?」

「できるのか?」

「はい!手櫛になっちゃいますけど」

「じゃあ、東屋に戻るか」

「殿下がよろしければこちらでも。先ほどのように座ってください」


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