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『スズメの文房具店』

作者: 成城速記部

 どこからお話しすればいいでしょう。

 おじいさんとおばあさんと、スズメがいました。

 おばあさんは、しっかりと戸締まりをしているのですが、いつの間にかスズメが入り込んでいるのです。スズメの…戸締まりを、ねぇ。

 まあ、多分、内部の者が手引きしているのでしょう。誰のことかはわかりませんけど。

 おばあさんも、決して心が狭いわけではないのです。まあ、本気じゃなければ、かわいらしい遊びの範疇ならば、目をつぶろうと思っていたのです。事実、何年も、目をつぶってきました。

 でも、きょうは、堪忍袋の緒が切れました。お袋じゃないですよ。給料袋でもないです。いわんや沼袋でも。

 だって、スズメったら、洗濯のりをなめたんですよ。

 ん?ぴんとこない?

 比喩がわからなきゃ、だめですよ。

 すずめが、あろうことか、洗濯のりをなめたんです。

 ああ、こりゃ、おばあさん、怒り心頭です。

 おばあさんは、スズメの舌を切って、追い出しました。

 これもわからないんですか?舌を切ったんですよ?

 そういうようなわけで、スズメは二度と来なくなり、おじいさんは、スズメを探しに行きました。

 …もう、ヒントも出しません。

 おじいさんは、あちこち探した末、竹林の中で、スズメのお宿に行き着きました。

 同じような立場のスズメが、お宿にたくさん…。あ、ヒントは出さないんでした。

 しかも、お宿といっても、宿泊する人はほとんどおらず、ほぼ、文房具店でした。

 スズメは、おじいさんの来訪を、心から喜びました。おじいさんにしても、同じです。いや、それ以上かもしれません。

 一瞬のような、長い時間のような、夢のようなひとときをともに過ごし、おじいさんは、おばあさんの待つ家に戻ります。それが安定というものです。

 スズメは、おじいさんに、お土産を持たせます。

 大きなつづらと小さなつづら、どちらか一つお持ちください。おっと、中を見てはいけません…、教えてくれればいいのに。

 おじいさんは、小さなつづらを選びました。大きいほうは重そうでしたし。

 おばあさんの待つ家に戻り、つづらを開けてみて、おじいさんは驚きました。

 もう、絶版になった赤や青や黄や緑のプレスマンが、ぎゅうぎゅうに詰まっていました。最高です。

 おじいさんは、おばあさんに事情を話しました。

 おばあさんは、うらやしがりました。おじいさんに軽く乱暴を振るい、スズメのお宿の場所を聞き出しました。

 おばあさんは、スズメのお宿に赴き、スズメの表面的な歓待を受け、大きなつづらを気合いで持ち上げ、持って帰りました。

 するとどうでしょう。大きなつづらの中からは、大量の原文帳が飛び出してきて、おばあさんを、速記しなければならばい恐怖感に陥れるのでした。



教訓:プレスマンだけでも、原文帳だけでも、速記はできないので、おばあさんの選択は正しい。

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