おねぇ聖女が凄すぎて、歴史書には残すことができません!13.獣王
私はエドガー・バルマー。再び災厄の神託があったので、迷宮にいる。魔王の件もあり、勇者のハインツ殿とアグネス、聖女のマリアとヴァルヴァラ全員で行動している。
「また、行き止まりですね」
この迷宮はとても厄介だ。行き止まりがあるために前衛と後衛を入れ替える必要もある。今来た道を塞がれたら転移魔法以外では戻れない。
「戻り道に気を付け……」
なっ! 折り返した瞬間に後衛の足元だけが崩れだした。聖女と勇者を分断するトラップか!
「ハインツ殿! ヴァルヴァラを頼みます!」
とっさにヴァルヴァラを抱き上げてハインツ殿に投げ渡す。マリアは自力で飛び移れるだろう。
「エドガー!」
聖女を守るのが私の仕事……これでいい……って、何故マリアも一緒に落ちてる?!
「仕方がないから付き合ってあげるわ……」
◇
随分下まで落ちてしまった。下に何もなかったから良かったが……
「マリア! お前は何を考えている!」
マリアを叱ろうとしたが、マリアの表情が険しい……誰かいるのか?
「おいおい、獣王様の前に獲物が来たかと思ったら、何だこのカマは?」
おお……やっとまともな感覚を持っている相手が現れた。鬣をもった恐ろしい形相の獣王だが私は嬉しい……
「てめぇ、何をニヤついてやがる!」
しまった! あまりの喜びに油断した。地面に這いつくばらされている……私は殴り飛ばされたのか? マ、マリアを援護しなければ……
「なんだ? 余の周りが騒がしいな……」
そ、その声はルシフェル?! 獰猛な鉤爪の足、肉食獣のようなふくらはぎ、鍛え抜かれた太モモ……
だから、パンツはけよ!!
「ん? あれは……」
マリアと獣王が対峙しているのをルシフェルが気付いてしまった。ま、不味い……獣王に加勢をするつもりか! このままではマリアが危ない……
「おい、余の嫁に何をする?」
なっ! 獣王が吹っ飛んだ? って、嫁? 理解が追いつかない。マリアは男だぞ?
「てめぇ何しやがる! こいつが嫁とか頭に蛆湧いてんのか!」
あっ、また吹っ飛ばされた……お尻を突き出してピクピクしてるぞ……
「どうやら、我が魔剣の餌食になりたいようだな」
おい、ルシフェル……お前素手だろ! 魔剣ってなんだ! 絶対に別の意味で言葉を使ってるだろ! なに尻に手をかけてるんだ!
「私も罪な女ね……」
だから、マリア……お前は男だ……
ルシフェルが獣王に気が取られている隙に、私はマリアを連れて駆け出した。後ろで変な叫び声が聞こえた気がするが、気にしてはいけない……
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