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九州大学文藝部 初冬号

論理的に破綻をきたした誰かによる妄想と空想のなれの果て

作者: 秋月渚

 あなたが見た景色の中の私は、きっと笑っているのでしょう


 


 ええ、今だからこそ言えるのです


 


 あの時の私は決して心から笑うことなど出来てはいなかったのです


 


 私が死んで何年たつのでしょう


 


 もうすでにその辺りの感覚は曖昧模糊となってしまいました


 


 ただあなたが何度も私を訪れていることだけはわかります


 


 あなたのことを見るたびに私の心は痛むのです


 


 悼むのです


 


 傷むのです


 


 背がとても伸びましたね


 


 目じりにしわが増えましたね


 


 いつだったかあなたがもう一人連れてきたときは驚きました


 


 今でもあの人とは仲良くしていますか


 


 ああ、なんて残酷な人生だったのでしょうか


 


 ああ、なんて素晴らしい人生だったのでしょうか


 


 私は今どこにいるのでしょう


 


 此処か、彼方か


 


 それすらも消えてしまいそうなほどに


 


 あなたは眩しかったのでしょうか


 


 目がくらんで


 


 前が見えなくなって


 


 もう前後不覚になってしまいそうな


 


 あの一瞬を


 


 私はきっと忘れることなどないのでしょう


 


 あなたが与えた痛みを


 


 あなたが残したやさしさを


 


 私は一人で享受し続けるのでしょう


 


 あなたの愛を、憎しみを、私に


 


 私の腕の中で泣くあなたのことを今でも覚えています


 


 私の胸の中で眠るあなたのことを今でも覚えています


 


 私の腹に再びの痛みを与えたあなたを、覚えています


 


 あなたの前で笑う私は、本物だったのでしょうか


 


(それとも、全くもっての偽物だったのでしょうか)


 


 それすらも覚束ないほどに、私の心は砕かれてしまったのでしょう


 


 ああ、今でもあなたがくるのが待ち遠しいのです


 


 丸く切り取られた天窓から


 


 私を覗くあなたの顔は


 


 遠くて


 


 逆光で


 


 小さいけれど


 


 はっきりと


 


 くっきりと


 


 しっかりと


 


 見えているのですよ


 


 私の心は今でもどこかの水面をゆらゆらと漂って


 


 いつかまた、あなたに出会えることを心待ちにしているのですよ


 


 だから


 


 今はあなたの頭だけで満足してあげるわ


 


 


 


 あら?


 


 体もくれるのね!


 


 嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい…………


 


 ウレシイワ!


 


 


 


 


「論理的に破綻をきたした誰かによる妄想と空想のなれの果て」転じまして「井戸の底から愛を込めて」


 


 終幕

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