彼の確信
ららりとです。
やっぱり読むのと書くのとでは大違いですね。
「ここは異世界だ……」
風化した歴史を感じさせる遺跡から出たユウジの最初の言葉がそれだった。
彼は今、確信したのだ。目の前のあり得ない光景を見て、異世界へ転移したということを。
緑は溢れ、川の水はせせらぎ、小鳥たちが囀っている。その光景は、かつての異世界とはまるで真逆だった。
「ここはもう……。俺の知る世界じゃないのか……」
「どういう意味?」
複雑そうな顔をして膝をつくユウジに、アスタルテは首を傾げた。彼は酷く動揺しているように見えるが、何を言っているのかまるで分からない。それは必然とアスタルテの興味心をくすぐった。
「どういったらいいのか……」
しかしユウジは、アスタルテの疑問を払拭するだけの言葉は思いつかなかった。
まさか自分は異世界人だといったところでそれが通じるかどうかは怪しい。まして布を巻き付けただけのような彼女の服装から察するに、文明はあまり発達してないように思える。それに転生や転移といった概念があるのかも不透明だ。
悩んだ挙句、彼はひとつの言葉を紡ぎだす。
「俺はこの世界の住人ではない」
「?」
アスタルテはますます分からないといった様子だ。
「転生や転移といった言葉はしっているか?」
「知らない」
「じゃあ、生まれ変わりは?」
「それも知らない」
「そうだな……完全に記憶を引き継いだ別人になったことがあるといえば、分かるか?」
最初の世界は、地球という星で。次の世界は、終末の時を迎えた名もなき星で。そして最後に、この場所で。
彼は転生と転移を繰り返している。
アスタルテは小さく唸りを上げたが、やがて小さく頷いた。
「なんとなく分かった」
本当に理解したのかは分からないが、彼女の中で何か落としどころがあったのだろうとユウジは憶測した。
「そうか。それじゃあ今度はこっちから聞きたいんだが…」
そう言ってユウジが切り出そうとしたその時、足元に矢が突き刺さった。がさりと音を立てて、矢を放った正体は木陰から現れる。
「離れろ!」