蒼の少女
ららりとです。
文章力が著しく低いかもしれませんが、淡々と書き進めていくことで徐々に慣れていきたいと思っています。
よろしくお願いいたします。
(不定期更新です)
その異変は老朽化した時の中に生きるかつての聖地で起きた。
空中に浮かぶ歪曲した空間から吐き出されたのは、嘘のように傷だらけの少年だった。体は焦げ、片目は潰れて意識を失っている。どこからどう見ても満身創痍の状態だ。
それに近づいたのはひとりの少女だった。どこからともなく現れた少年に恐れもなく近づき、顔を覗き込む。
呼吸も、心臓の音も聞こえない。死んでいるのだろうか?
少女がふと疑問に思った、その時だった。
「……はぁっ、かはっ」
ごほごと咳を漏らして、彼は息を吹き返した。しかし少女が驚いたのはそこではなかった。光る心臓。彼の心臓と自分の心臓がまるで共鳴するかのように光りだしたのだ。金色の輝きが辺りを照らすように暗闇を払っていく。そしてそれは彼が目覚めると同時に、一瞬のうちに収束した。
少女は思わず距離を取っていた。彼女の中には、僅かばかりの警戒心と好奇心が沸き上がった。
彼は何者か。
それだけが今の彼女の心中だった。
すぅすぅと眠っていた少年はやがて目覚め、痛みに耐えるように立ち上がった。朦朧とする意識の中、彼の瞳に映ったのはきめ細かな白い砂と形崩れた石造りの建築物。それから、ひとりの少女だった。
碧の瞳に、落ち着いた藍色の長髪。儚く可憐なその少女。
彼女は何者か。
それだけが今の彼の心中だった。
「誰だ?」
「誰?」
ふたりの声が被る。僅かな沈黙の後、先に答えたのは少女の方だった。
「アスタルテ。あなたは誰?」
「ニシモリ、ユウジ」
アスタルテの問いに答えながらユウジはもしやという気持ちに包まれていた。あまりにも滑稽な話ではあるが、確かめられずにはいられない、『その事実』。
もしそうであれば彼は――。
「ひとつ……聞いてもいいだろうか?」
「何を?」
「ここから外に出られないか……?」
アスタルテは冷たい瞳でユウジを見る。何かを推し量っているかのような視線だ。
「……付いてきて」
そういって歩き出した彼女の後ろを、彼は追った。