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いきつく所へ~学校編~  作者: 内田葵
6/8

記憶

 恒例の学園祭は大盛況だ。

 校内放送ですべての生徒と先生方が参加しているという旨の内容が流れた通り、いつもは静かな学校が騒がしいほど賑やかで、みんな浮かれているようにも見える。


 バンド演奏はこの学園祭を盛り上げるにはもってこいだった。

 すべてのプログラムが終了したころには、あの先輩かっこよかったとか、俺もバンドやってみようかな、などとあちこちから聞こえる。


「ねぇ晋平、次はどこ回る?」


 牧田さんはこちらの様子を窺っている。特別回りたいところはないが、雰囲気をもう少し味わいたい気分だ。

 キョロキョロっと見渡して何かを見つけた牧田さんは、あっちに行こう!と颯爽と駆けていくので俺もついていくことにした。



 もう薄暗くなってきた頃、賑やかだった校内はだんだんと静まり返り、今度は校庭のほうから声が聞こえるようになった。


「そういえばさ、学園祭の最後にキャンプファイヤーがあるんだよ!」


 なるほどそれで外が賑やかになってきているわけか。

 授業は割とまじめに聞いているほうではあるが、イベントごとはさほど興味もないのでキャンプファイヤーがあるなど初耳だ。


「晋平どうせ初耳だーとか思ってるんでしょ?」


 そう言ってクスッと笑う牧田さん。

 まぁ一字一句間違ってなどいないが。


「せっかくだから一緒に踊ろうよ!どうせ誰とも約束してないんでしょ?」


 牧田さんの言う通りで初耳なわけだから、当然誰とも約束などしていない。

 女子達との交流など皆無と言っていいほどないし、男とダンスを踊るのもどうかと思う。

 それであれば牧田さんと一緒に踊ったほうがましだ。


 二つ返事で了承すると、やったー!と元気よく飛び跳ねて喜んでいる。

 牧田さんはよく話しているからかあまり意識をしたことがないが、見た目で言えばかわいい部類だと思う。

 そんな彼女とダンスを踊れるとなると、クラスの男子諸君からは目の敵にされるかもしれないな。



 よく燃え滾ったやぐらを中心として音楽に合わせてダンスをしている。

 踊りながら気づいたのだが、てっきりすべての生徒が順番に踊るものだと思っていた。

 だが踊っている生徒の方が少なく周りから見ている数のほうが圧倒的に多い。

 前情報として知らなかった俺は間違った選択をしたような気もした。


 だが楽しそうに目の前で舞う牧田さんを見ていると、こんな時間もいいかもななんて思えた。



「あー楽しかった!そろそろ帰ろっか!」


 踊り終えて満足した様子の牧田さんは俺にそう告げるとさっさと帰りの準備をしていた。

 クラスの出し物の片づけは次に学校へ来るタイミングでいいそうで、もう外は真っ暗ということもあり先生方が生徒を帰宅させるのに躍起している。

 先生方に迷惑をかけるつもりもないので早々に学校を後にした。



 いつもと違う景色の帰り道はとても新鮮だ。あまり街灯がないことと日中はよく晴れた空だったからか、夜空がとても美しい。

 広大な夜空に無数の星、ひんやりとした澄んだ空気。

 普段はもっと早くに帰宅するから意識したことなかったが、この時期はいい季節なんだなと感じる。


 牧田さんと帰るのもいつぶりだろうか。

 もしかしたらここに進学してから初めて帰るかもしれない。



 ん?なんだろう、この違和感は。



「どうしたの晋平?考え事?」


 いや何でもないと答えてみたものの、何かとてつもない違和感を感じる。

 昔はよく一緒に帰っていたが、進学してから一緒に帰った記憶はなくとても懐かしいから違和感を感じるのだろうか。


 そんなことを考えていると、いつもの分かれ道にたどり着き牧田さんと別れた。



 結局もやもやしたまま数日が経ち学園祭のムードから一変して学期末のテスト週間となり、クラスメイトは皆勉強一色といったところだ。


 部活動もないのでさっさと帰ろうかとも思ったが、勉強する気にもなれないので少し散歩をして帰ることにした。


 ここ数日間の違和感は何だろうか。

 何に違和感があるのか考えてはみるものの、特に何も思い浮かばない。

 牧田さんと一緒にダンスを踊って非日常的な満足感からくることではないのははっきりとわかる。


 どこを歩いて帰ろうかと迷ったが、すでに薄暗くなった空を見上げた時に、ふとあの場所を思い出した。


 いつもの田んぼ道を見ながらとぼとぼと歩いていると、坂の手前まで来た。

 例のポイントまであと少しだ。


 坂の中腹あたりにあるくぼみに入り、腰を下ろすと夕焼けに包まれた空はとても綺麗だった。

 横を向くと1体の地蔵がたたずんでいる。

 少し蜘蛛の巣がかかっており、薄汚れていた。


 せかっくだし綺麗にしてやろうと手で蜘蛛の巣を払い、曲がった赤い巾着を直す。

 手が汚れたなとカバンからハンカチを取り出したとき、カバンに付けているキーホルダーがじゃらっと音を立てて外に出た。



 こんなもの付けていたか?身に覚えが・・・。



 次の瞬間、全身に稲妻が走るかの如く頭からつま先まで痺れるような感覚がした。



 南春香だ!



 春香ちゃんのことを忘れていた。キーホルダーと一緒についていたお守りを見て思い出した。


 いや、お守り自体は無意識に目にしていたのかもしれない。

 この景色を春香ちゃんと一緒に見て、このお守りをくれたここでくれたからこそ思い出せたんだろう。


 なぜ忘れてしまっていたんだ。

 いつから忘れていたんだ。


 そんなことを考えていると居てもたってもいられず学校へ走っていた。



「どーしたのさそんな血相変えて。」


 まだクラスに残っていた牧田さんだけではなく、クラスメイトがこちらを見ている。

 あまり注目の的にされるのも嫌なので、牧田さんの腕をつかんで校舎裏まで走った。


「痛いよ。」


 校舎裏に着くなり牧田さんにそう言われるとハッと我に返り、牧田さんに謝罪をした。

 いいよと言ってくれたが、心配そうにこちらを見ている。


「南春香だよ!覚えてないか?」

「南春香?んーどっかで聞いたことあるような。」


 なぜだ。牧田さんは春香ちゃんが転校してきてからずっと一緒にいたにも関わらず、んーとうなったきりで特に思い出せないようだ。


「転校生なんてそもそもこんな田舎には来ないでしょ?でも何か聞き覚えがあるような気もするのよね。」


 当てにしていた牧田さんが覚えていないとなると、あとは洋輔ぐらいか。


 もう一度謝罪とお礼を告げて洋輔を探すことにした。



 結局誰も覚えていなかった。


 洋輔はバイトとのことで今しがた連絡をくれたのだが、誰だそいつと言って牧田さんよりも記憶がないようだった。

 いや、牧田さん以外の人間は皆一様に洋輔と一緒で全く見当もつかない様子だった。

 先生にまで確認をしたがお前大丈夫か?少し休んだほうがいいぞと言われる始末だ。


 なぜ誰も覚えていないのだろうか。

 そもそも俺が幸せな夢でも見ていたのか?


 そんなはずはない、だってここにお守りがあるんだから。

 間違いなく春香ちゃんからもらい、あの景色を一緒に見た。

 そして転校してきてから学園祭のあの日まで一緒に過ごしてきたはずだ。


 ただ誰も覚えていないとなるとどうにもできない。

 誰か覚えている人はいないだろうか。


 まずどこのタイミングで記憶がなくなったかだが、恐らく春香ちゃんとお昼ご飯を食べ終わったあの後のどこかだろう。



 もしかしてあのスピーカーから出た大音量の雑音か?



 ほかに思い当たる節もないのできっと間違いないだろう。


 ただそうなると学校中の生徒と先生が参加していたと聞いているし、もう思い出せる人もいないのかもしれない。


 なぜ俺だけが思い出せたんだ。

 春香ちゃんと一緒にいた時間が長かったわけではないが、もしかしたら好意を寄せていたことに関係があるのだろうか。


 いや、それであれば他にも好意を寄せていた生徒はもっといるはずだ。


 そんなことを考えていると、ふと思い浮かんだ。



 そうか、あの人に聞いてみよう。

 しばらく更新が止まっていました。申し訳ございません。

 けっしてゲームしてたとかゲームしてたとかではありません。忙しかったからです。ゲームではありません。

 物語は佳境を迎えます。

 もうすぐ学校編は終了となりますが、ここからこのシリーズの大事な部分を描けたかなと思っております。

また次回お会いできることを楽しみにしております。

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