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いきつく所へ~学校編~  作者: 内田葵
2/8

きっかけ

 またお会いできたことにお礼申し上げます。


 学校編1がプロローグだとすれば、学校編2からが本編となります。


 ゆっくりしたスピードで進んでいく物語ではありますが、お楽しみいただければと思います。

 「はじめまして、南春香と申します。よろしくお願いします。」



 まず目についたのは、黒色の腰付近まで垂れたロングヘア-。

 きっとよく手入れをしているのであろうその髪は、品性を感じさせる。

 目元は綺麗な二重で、落ち着いた雰囲気は、大和撫子という言葉が良く似あう。

 声質は性格を象徴するであろう耳障りが無いアルト調で、どこかのお嬢様なのかなといった印象だ。整った容姿に凛とした面持ちは、すぐに男子諸君を虜にできるだろう。もしくは高嶺の花で誰も近づかないかもしれない。


 自己紹介で、都会からご両親の都合で転校してきた、趣味は運動と読書、席は廊下に近い後ろ側などの説明があり、集会の為全員で教室を後にした。

 女子からが取り囲んでいるせいで男子の入る隙がなく、唇をかみしめている様子が見て取れて面白い。


 程なくして普段よりも早く学校が終了し、クラスメイトの女子一同で質問攻めにしていた。


「美少女だよ美少女!晋平やったじゃん!」


 聞き慣れたソプラノトーンですぐに声の持ち主が誰だか分かった。

 ただ教室が賑やかなせいか、今日はあまり声の大きさは気にならない。


「雰囲気の良さそうな転校生だね。」

「そんな抽象的な感想はいらないんだよ晋平君よ!まさかあんな美少女がこんな田舎学校にやってくるなんて、人生捨てたもんじゃないですなぁ。」

「牧田さんおっさんみたいなこと言ってるよ。」

「いやいやさすがの女子でも、ありゃあ惚れるレベルですぜ。」


 彼女も容姿で言えば整っている方だと思う。肩につくかつかないかのショートカットヘアに少し釣り目ではあるが柔らかい印象の顔立ち、人懐っこい性格からか、この学年だけではなく先輩方にも人気と聞く。


「男子共はみーんな話したそうにしてるけど、きっと女子護衛軍でも出来そうな気配ですな。」

「南さんにとってもそれが幸せかもしれないね。」

「私も晋平も南さんと席が遠いから、あんまりお近づきにはなれないね。」

「牧田さんならすぐに仲良くなれるでしょ。」

「まーねー!よし!早速攻め込んでまいる!」


 そう言い残して群がる女子の中に牧田さんは消えていった。


 美少女転校生の噂は瞬く間に学校中に広がり、転校してまだ間もないというのに、部活動の勧誘だの、あまり近づきたくないタイプの先輩だの、果てには先生方までもがクラスへ押しかけては南さんを捕まえるべく躍起になっている。


 そんな状況の中、気にせずテニスコートへ移動してきたものの、洋輔以外は全員、南さんの視察と争奪戦へ出かけていると静かなコートの中で話を聞いた。


「洋輔は行かなくていいのか?お前そういうの好きだろ?」

「確かに俺は謎の美少女転校生も争奪戦も大好きだ。でもよく考えてみろ、今このタイミングで人ごみに押し掛けたところで彼女に俺の存在を示すことは不可能に近い。日を改めて攻め込む作戦だ。」

「そ、そうか。」

「晋平は牧田さんと仲良しだろ?そこを利用しよう!」


 俺も巻き沿いを食らうのかと思うとあまり気は進まないが、南さんと話をして仲良くなりたいという気持ちもある。

 牧田さんには申し訳ないが、時間を作ってもらうのも良いかもしれないな。


「さてと、少し練習して適当に帰るか!」


 きっと部員は争奪戦終了後、各々帰路につくだろうし、洋輔の言う通り程いいところで撤退するとしよう。


 照りつける暑さはないものの、やはり日に照らされれば体力は削られる。水分補給をしていると、聞き慣れた甲高い声が聞こえた。

 ただ聞こえるか聞こえないかの声量なのは珍しい。


「晋平一緒に帰ろうよ。さっさと準備してよー。」


 声のする方を見てみるが、見当たらない。どこにいるのだろうか。


「ん?今のって牧田さんだよな?帰る約束してたのか?」

「いや、してないね。」

「どうせ誰も来ないだろうし、ちょうどいいタイミングだから帰るか!」


 俺と洋輔は素早く着替えを済ませ、自転車を取りに行った。


「牧田さんどこにいるの?」


 問いかけにすぐ反応はなかったが、少しして反応があった。


「校門を出て裏にある商店付近で落ち合いましょう。」


 そうどこからか回答がきた。


「商店ってあの廃墟みたいな小屋のことか?とりあえず行ってみようぜ!」


 俺と洋輔は指定の場所を目指すことにした。



 商店といっても今は営業をしておらず、洋輔の言う通り見た目は廃墟だ。ただ人の気配はするので、まだ誰か住んでいるのだろう。

 学校からはそう遠くはないが、いつも外周コースの途中にあり、帰宅する方向からは逸れている。


 牧田さんって意外と可愛いよな、一緒に帰れるなんてラッキーだぜ、家の方向とは真逆だけど、とか言っている洋輔に相槌していると、通って来た道とは逆方面から女子生徒が向かってくるのが見えた。


「も、もしかしてあれって、噂の転校生か!すげー美人だな。なんていうか、お嬢様って雰囲気だ。」


 洋輔は目を丸くして驚いた様子だが、俺も驚いた。

 てっきり牧田さんだけかと思っていたのだが、隣には転校してきたばかりの南さんも一緒にいるのだ。


「ごめんごめん遅くなっちゃった!いやぁ人ごみを抜けて人気のない裏校門から出てきたらさ、思いのほか時間がかかっちゃってね。」

「あっちの校門を使うことはないもんな。」

「そうなのよ!私も初めて使ったよ。あら相沢君じゃない。一緒だったのね。」

「俺と晋平はいつも一緒なんだよ牧田さん。そちらは・・・。」

「はじめまして、南春香と申します。ご一緒しても大丈夫ですか?」

「もっちろんですとも!ぜひ一緒に帰りましょう!」


 威勢よく返答をする洋輔。心躍っているように見受けられる。


「南春香です。高杉君ですよね?」

「あ、はい、高杉晋平です。よろしくね。」


 南さんは目を細めてこちらに会釈をしてくれたので俺も会釈したのだが、緊張からか上手く笑顔作ることが出来なかったなかった。


「あれぇ、しんぺぇ、もしかして緊張してるのぉ?まぁ仕方ないよねぇ、南さん美人さんだもんねぇ。」


 そう悪戯をする少年の様にニヤニヤと笑う小悪魔もまた、洋輔同様でいつもより楽しそうだ。


「そういえば相沢君の家ってこっちの方だっけ?」

「いや違うけど、美人どころが揃ってるし、せっかくだから街の方にでも行こうかなと!牧田さんこそ家は街の方だっけ?」

「そうだよ!ご近所さんとまでではいかないけど、晋平の家の近くなんだよ!」

「歩ける距離だよね。」

「そうそう!まだ一度も晋平の家に遊びに行ったことないけどね。」

「年頃の女の子が、そう簡単に男の家に遊びには行かないでしょ。」

「晋平ならなんか平気そうじゃん?」


 どういう意味だか問いただしてやりたいが、今はやめておこう。


「牧田さんと高杉君は仲良しさんなんですね。」

朱音あかねって呼んでね南さん!晋平とはぼちぼち長い付き合いだからね。」

「わかりました。朱音ちゃんと呼ばせてもらいます。私も春香と呼んでください。」

「ちゃん付けってキャラじゃないけど、まぁいっか!あと敬語もダメだよ!」

「ならさ、俺も朱音ちゃんに春香ちゃんでいいかな?」


 機会を逃すまいと洋輔も話に割り込んできた。嫌味のない明るい性格は天性のものなんだろうと思うと少し羨ましい。


「もちろんいいけど、相沢君から朱音ちゃんは気持ち悪いから朱音でいいよ!」

「どういうことだよ気持ち悪いって!こんなにも俺は紳士で素敵じゃないか!あ、俺も呼び捨てでいいから。」

「なら相沢だね!」

「そこは洋輔にしてくださいませんか朱音さん。」

「分かってるって!よろしくね洋輔!」

「私のことは好きに呼んでもらって構いませんので。」

「なら春香ちゃんで決定だな!」

「はい!よろしくお願いします。」


 陽気な会話を聞いてか、南さんの表情が教室にいた時より和らいでいる。

 きっと知らない土地で生活していくのは不安だっただろうし、緊張がほぐれてきたのだろう。


「さあみんなで仲良く帰りましょ!」


 甲高いハイテンションな合図とともに、俺達は家に帰ることにした。


 後日、牧田さんは生徒達から南さんを抜け駆けして連れ去って何をしていたのか根掘り葉掘り聞かれたそうだが、その明るい性格から誰も彼女を責めることなく、むしろ交友の輪を広げたと聞いている。



 相変わらず人気者の南さんではあるが、転校当初と比べれば落ち着いた日常を取り戻してきた。

 結局熱心な勧誘むなしく、どの部活にも所属していないと聞いている。牧田さんは南さんとすっかり仲良くなり、度々会話しているのを目にするが、俺と来たら席が離れているのと、帰る方向は一緒でも部活をしているので時間が合わず、あまり会話が出来ていなかった。


 日が落ちるのが早まり、落ち葉が目立ち始めてきたなと感じたある日、部活を終え校門で洋輔と別れて少しした所に、歩いている南さんを見つけた。


「今から帰りなの?」

「あ、晋平さん。そうなんです、補習を受けていまして。」


 聞くところによると、南さんは勉強はとても優秀!というほどではないらしく、恐らく前の学校と受けていた授業範囲が違って補習をしていたとのこと。


 そんなことよりも、俺のことを晋平さんと呼んでくれたことが嬉しくて、頬が緩んでしまったのはきっと見られていないだろう。


「せっかくだし一緒に帰らない?」

「はい!」



 屈託ない笑顔でそう答えてくれた南さんと、薄明るい山道を一緒に帰ることにした。

 学校編2の執筆を終え、ようやく物語が進み始めていきます。


 私自身、学校編1を執筆しているときは、プロットがあるとはいえ詳細までは全く考えておらず、今後の物語を書いていけるのだろうかと心配をしていました(笑)


 しかし書いていくにつれ、次第に書きたいことが増えてきたことに驚きを隠せません。


 今回の作品では心がけているとこがあり、書き終えてから読み返してみるとミスが多いことに気づき、修正をする作業が中々に面倒ではあります。ただ修正して読み返してみると、想像していたことに近づくことが出来た実感も味わえ、非常に充実しております。


 皆様にもこの感情を共有できることを祈りつつ、また次回お会いできることを楽しみにしております。ありがとうございました。

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