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いきつく所へ~学校編~  作者: 内田葵
1/8

日常の変化

 今この作品をご覧のすべての方に感謝します。


 生きていくうえで非日常生活が突如としてやってくることはそうそうないと思います。


 そんな方に、少しでも物語の登場人物の体験する事を直に感じていただき、皆様の日常生活に刺激を与えられればと考えております。


 物語の構成上、長編となります。途中で飽きさせない作品に仕上げるのはまだ内田の力では到底及ばないと思います。


 もしこの作品を読んでいただき、気づいた点などあればご指摘いただけると幸いです。


 この作品を最後までお付き合いいただけるのであれば、それは内田にとって最大の非日常生活となるでしょう。


 それでは物語をお楽しみください!

 騒々しく響き渡るタイマーで目が覚めた。

 通常の平日であれば、慌ただしくタイマーを止めて朝食を食べるか抜くかと考えてる間に家を出なければ学校には間に合わない。

 しかしちょうど半袖のTシャツ1枚でなければ外を出歩くのもままならないぐらい暑い日から長期休暇が始まり、ゆっくり家を出ても部活に間に合うな、と悠長に考えながらうるさく響き渡るタイマーを止めた。


 準備を整えて家を後にした俺は、朝日を浴びながら自転車に乗り、今日の練習メニューは何だろう、とか、帰ったらお昼ご飯は何が用意してあるんだろう、とか、妄想にふけっていると、次第に視界には校門が見えてきた。

 坂を上ったり下ったりが続く山の中にある学校で、入学当初は体力を削って校門を目指したものだが、入学して初めての長期休暇を迎える今となっては慣れたものである。


 駐輪場にはまばらに自転車が置いてあり、校内からは管楽器の音が聞こえ、グラウンドからは威勢のいい掛け声が聞こえてくる。見慣れた石畳を通って自転車を置き、テニスコートに移動することにした。


「相変わらず今日もお早いご到着だな。」


 洋輔にいつも通り適当な挨拶をすると、彼は得意げな顔をして


「やっぱり練習を重ねて人はうまくなるものだからな。」


 まだ練習着に着替えていない洋輔は、また俺と同様で適当な挨拶を返してきた。


 まだ知り合って間もない洋輔だが、その明るい性格から仲良くなるのに時間はかからなかった。

 部活動が同じというだけの関係だったが、出会ってすぐ声をかけてくれたことは今でも鮮明に覚えている。


「もっと、こう、華やかな日々を送れると思ってたんだけど、なんかこう、なぁ?」


 問いかけられているのか、自問自答をしているのかはわからないが、俺に聞こえる程度の声でそう呟いた。


「そんな無駄なことを考えてる暇があるなら、上達するためにまずは着替えてみてはどうかな?」

「それもそうだな。」


 そんな心地よいくだらないやり取りをしていると、続々と部活生達が集合し始め、大体のメンバーが揃った頃には俺たちの一つ上の学年で数学を担当してる顧問が斜面に設置された少し高い位置にあるベンチの前に立っていた。


「よーし全員揃ったかな?いつも通り各自のメニューをこなすように!」


 その一言を言い伝え終わると、木陰のベンチに腰掛けあくびをしていた。


「いっつも思うんだけどさ、俺らの学校って各部で温度感違いすぎやしないか?でもその割にメニューはハードだよなぁ。」


 洋輔の言う通りである。

 顧問の指示は各自のメニューとのことだが、実際はメニューはあらかじめ決められている。上級生の指示に逆らえない俺達は、コートを占有したい先輩方の思惑の為に、外周と呼ばれる校外のランニングをさせられる。


 「仕方ないから今日も張り切って行きますか!」


 そう洋輔が俺に声を掛け、それぞれのメニューに入っていった。



 外周は、山々に囲まれた学校の近くの舗装された細道を走るわけだが、ジョギングペースではしばらく校内に戻れない程の距離が、俺はジョギングよりも遅いペースでメニューをこなすことにした。

 普段であれば洋輔同様、さっさと外周をこなしてコートで練習をしたいと思っているのだが、走り始めてから足取りが重いことに気づき、いつもより進んでいる感覚がなかったためである。


「こんな日もあるか。」


 そんなため息交じりにつぶやいた俺は、山道に広がる田んぼやあまり幅のない川の美しい景色を横目に進んでいく。

 コースの中間付近には心臓破りの坂と呼ばれる勾配の強い坂道があり、手前まで差し掛かるといよいよ走っているのが辛くなり、とぼとぼと坂の頂上を目指すことにした。


 こんなことは入部したての頃はよくあり、ジョギングで完走できるようになったのはつい最近の話だから、特段気にも留めずに進んでいた。

 しかし坂道の中腹付近でついに歩くのもままならなくあり、頂上手前にある木陰で少し休むことに決めた。


 休むことにした木陰は木々に覆われた周りと違い、座って足を延ばせるほどのスペースがあり、舗装はされていないが落ち葉や枯れ木が少なく、周りの目を気にすることもないほど静かな場所だ。


「こんなスペースがあったんだ。」


 普段から走っているコースではあるが、あまり周りを気にしたことがなかったから、この場所に気づくことは今までなかったので少し驚いた。

 走ってきた場所よりも高い位置にある為、木々から垣間見える色鮮やかな景色は疲れた身体を癒してくれる。


 ここから校内へはまだ時間はかかるが、時間が経っても俺がいないと気付いてくれるのは洋輔ぐらいだろうし、いくら洋輔でも今頃、牛小屋の側道付近を走っているに違いないから、暫く景色を楽しむことにした。



 コース終盤から歩くペースに変えた連中もそろそろ校内に戻ったであろう頃、身体の疲れも程々に取れていることに気づき、洋輔も帰ってこないことを心配させるのも忍びないので山道へ戻ることにした。

 身体の片側に体重をかけて立ち上がろうとしたとき、ぽつんと寂し気に置いてある地蔵が視界に入った。景色を見るのにふけっていた為気づかず、突然現れた地蔵に驚き、立ち上がることが出来なかった。


 地蔵は蜘蛛の巣が張り、赤い涎掛けは砂埃でくすんでいる。暫く休んでいたにもかかわらず気づかなかったわけだから、この場所を気にも留めない道行く人はきっと存在すら知らないのであろう。

 何故こんな所に地蔵はあるのかと考えてみたが、ここはきっと、この山のように静かな場所から人々を見守る為に置かれたのだろう。。


「お邪魔しました。」


 小声で地蔵に話しかけ、休ませてもらった少しばかりのお礼として蜘蛛の巣と薄汚れた涎掛けを手で払い、その場を後にした。



「晋平にしては珍しく遅かったじゃねぇか!」


 良く響き渡る声で洋輔はそう言うと、練習の手を止めてこちらに寄ってきた。


「今日はちょっと走れなくてね。」

「体調悪いのか?無理せず帰った方がいいぜ!」

「ありがとう。もう平気だ。」


 小話をした後、普段通りのメニューをこなした。


 全体的に覇気のないこの部活は昼食時間の手前で終了し、各々帰宅する時間になる。


「今日はどこかに寄っていくか?」


 そんな洋輔からの問いかけに、街へ行くのもいいなと思ったが、あいにく持ち合わせがない。


「金欠だしまたにするよ。」

「そうか~。仕方ないな!俺は夕方からバイトもあるし、途中まで一緒に帰ろうぜ!」


 洋輔と俺はさっさと帰り支度を済ませ、自転車に乗った。


「バイト楽しいか?」

「おうよ!やっぱり汗水流して手に入れたお金って、なんかいいよな~!」

「そうか。学校にバレないように気を付けろよ。」

「分かってるって!見つかったら大変だからなぁ~。まぁ、だからこそ家の近くじゃなくてわざわざ街のほうを選んでるんだし平気さ!」


 平気かどうかは分からないが、学校の近くは働くようなところもあまりないし、学校から程近い場所に住む洋輔としては、街側で働いた方が身を隠しながら働けて安全だと踏んだのだろう。

 学校側も同じことを考えていそうな気もするが。程なくして人や車通りが増えてきた交差点で洋輔と別れ、音楽を聴きながら帰路に就いた。



 普段の生活で大きな変化は特になく、部活をそつなくこなしていく日々が過ぎて行った。暑い日照りも次第に和らぎ、長期休暇もあと数えるほどとなった頃、補習を受けているクラスメイト達はそわそわとしており、落ち着きのない様子だった。


 急なテストが実施されるとかそんな話ではないようだ。


「ねぇ高杉君聞いた?うちのクラスに転校生がやってくるらしいよ!」

「それでみんなそわそわしてるんだね。」

「そうみたい!どんな子が来るんだろうな~。こんな田舎に素敵男子が来るとは思えないし・・・。」

「牧田さん、願望出てるよ。」

「あーらごめんなさいね。でもさ、日常生活では中々味わえない緊張できる待ち時間じゃない?」


 確かにそうかもしれない。超極地密集地域と呼ばれるほど日本の都心部に人が密集しており、こんな田舎に引っ越してくるなんてかなり珍しい。


「高杉君はどんな子が来てほしい?」

「んー。そうだなぁ、わる」

「女の子とか?巨乳女子とか?ボンキュッボンってやつ?わかるわ~私が男子ならそんな女の子が来てほしい!あとは肌が白くてぇ~気さくに話しかけてくれてぇ~」


 牧田さんが妄想の世界に入り始めたので適当に聞き流しながら、この休憩時間が終わって残りの授業を受けたら部活か、と少し気が重くなった。


「高杉君聞いてんの!」


 周りのクラスメイト達がこっちを見てくすくす笑っているのを感じた。


「牧田さん声大きいよ。」

「あ、ごめんね。でも人の話聞いてなさそうな高杉君が悪いんじゃん。」

「そうだね。ごめん。で、何の話だっけ?」

「だから転校生の話だって!」


 牧田さんの声に反応して、また周りからの視線を感じた。なぜ俺の友達はみんな声が大きいのだろうか。


「わかったわかった。静かにしておくれよ牧田殿」

「んでどんな子が来てほしい?」


 コミカルな返答を無視されたのは心外だが、これ以上周りからの視線を集めたくはないので真剣に考えることにした。


「そうだなぁ。仲良くできそうな奴なら誰でもいいかな。出来れば一緒に部活できるといいけど。」

「えぇ~つまんないなぁ~!それでも男子かね君は!」


 もちろん欲を言えば巨乳女子とかボンキュッボンとか肌が白いとか、そんな素敵女子が来てくれた方が良いに決まっている。年頃の健全男子だからね、俺も。


「さてはむっつりですな、高杉殿」


 顔に出ていたのか、女の感というやつなのか、どちらにせよ女の子の前で願望丸出しにした日には、周りから迫害を受けかねないので黙っておくことにした。

 特に牧田さんに情報を渡した日には、瞬く間に同じ学年の奴らからこんな話聞いたんだけど、と声を掛けられてしまう。


「ほら授業始まるよ。」


 無難な返答をして席に戻る牧田さんを眺め、いつも通りな日常を過ごしていった。



 そして急に今までの暑さが嘘かのように気温が下がった日、転校生はやってきた。

 学生編1を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


 まだ物語は今から始まるところではありますが、少しでも心に残る作品になりますよう、これからも精進してまいります。


 以下は今後想定している構想となります。もし知らずに今後の作品を楽しみたいという方は、次回作をお待ちください。



 現在は学生編という命題で作品を書き上げていますが、~編の名の通りでまた違う話を2本用意していくつもりです。また、~編3作品に関してはあくまで序章扱いと考えており、本編へ続く物語として構成しています。


 既に序章3作品と本編に関してはプロットが終了しており、作品に肉付けをしていく段階ですが、まずはこの学生編を納得できる作品に仕上げられるよう時間を費やす予定です。


 また学生編2でお会いできることを楽しみにしております。


ありがとうございました。

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