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第1話 冒険の始まりLevel1(というよりゼロだよな)

僕が目を覚ますと、辺りには緑豊かな草原が広がっていた。


「ここは……街のはずれの森かな。できれば元の所に戻して欲しかったんだけど、贅沢は無理かな」


僕は服に着いた泥を手で払うと、目に見える街に向かって歩き始めた。

最初はなだらかな道だったけど、途中から急に大きな岩道がでてきた。

もともとスポーツウェアを着ていたからなんとかなったけど。


「街のはずれってこんな風になっていたっけ? 最近見て無かったからわかんないな」


少し不安になって来たけど、その不安は一瞬にして消しとんだ。

なぜなら、


「あれって、もしかして……」


視界に見えたさきにモンスターっぽいのが発見したから。


「どうしよう……。あんなの見たことないぞ? ここって本当に日本なのかな……」


とりあえず気付かれないように、声を抑えながらその場をそっと離れようとした時、


『……パキッ』

「しまっ……!」


その場に落ちていた枝を踏んでしまった。

その瞬間、抑えていた不安と恐怖心が一気にあふれ出る。


「今更だけど、なんで日本にモンスターがでるんだよ! あの天使(ひと)、本当にちゃんと送り届けたのか よ!?」


急いで逃げ出す僕に対して、モンスターは無情にも襲い掛かって来た。

獣のような形をしたモンスターは凄い速さで駆け抜けると、あっという間に僕に肉迫していた。


「やられるっ!?」


そう思って目を閉じた時だった。


氷華魔法(アイシアル)!!」


僕の後ろの方で聞こえた声。

その声の正体を知ろうと目を開けた時、モンスターは体に刺さっていた氷によって倒されていた。


「えっ? ……えっ?」

「あなた、大丈夫? いくら弱いモンスターしかでない地域だからって丸腰じゃ死んじゃうよ?」


状況が理解できていない僕に突然現れた女の子は優しい笑顔で手を差し伸べて来た。

とりあえず女の子の手を借りて僕は立ち上がると、気になったことを聞いてみることにした。


「なぁ、突然の事だと思うけどいろいろ聞いていいかな」

「うん、それはいいけど」


女の子はなぜかもじもじしていた。


「あの、どうかしたのかな」

「その、なんというか……ズボンが」

「ズボンが、どうかしたのかなぁああああああ!?」


女の子に言われて初めて気が付いた、ズボンが破けている事に。

これじゃあ、話しどころではない。

もし何も知らない通行人がこの状況をみたらと思うと、背中に寒気が襲ってきた。


「とりあえず、私が泊っている宿の部屋に来ますか? ……あと、服屋にも」

「……はい、そうしてもらえると助かります」



女の子に連れられて僕は街の中にはいった。

破けたズボンは女の子が持っていた布で隠していたので助かってけど。


「ここが、私が泊っている宿です」

「ありがとう。……そういえば、名前をまだ聞いていなかったね」

「そうでした。……私はラミル、ラミル・アースバルトっていいます」

「ラミルさんか、よろしくね」

「ラミルでいいですよ、貴方は」

「僕は三木島妖魔っていうんだ」

「ヨウマ……いい名前ですね、こちらこそよろしくです」


人生で初めて名前をほめられた。


「とりあえず、服ですね。ヨウマはお金はもっていますか?」

「それが、持っていないんだ。目が覚めたらあの森にいて……」

「……どういうことでしょうか」


僕はこれまでの経緯を正確に、覚えている限りラミルに話した。


「……なるほど、大体の事はわかりました」


僕の話を黙って聞いていたラミルは僕の目を見つめてきた。


「ヨウマはもともと《二ホン》というところにいて、ある日天使に超能力を与えられて、元の世界に戻った

 つもりが」

「この、よくわからない世界に飛ばされていたんだ」


ラミルは何故かため息をつくと、僕の手をとった。


「いろいろ大変だったのですね。……服に関しては、出会いの運命と思って私が負担します。そのかわり」

「そのかわり?」

「天使から貰った、超能力というものを見せてはくれませんか?」


ラミルにそう言われて、初めて思い出した。

そういえば、僕には超能力があったじゃないか。


「でも、僕も天使になんの超能力をもらったのか聞いてないような……」

「そうなのですか? でも、外に出るにしろ、まずは服ですね」


僕とラミルは互いに笑いあうと服屋へと赴いた。


「いらっしゃいませ……あれ、ラミルさんいつ彼氏ができたんですか」

「か、彼氏じゃないです! ……確かに見た目はいいけども」

「……えっ?」

「な、なんでもありません! この人に合いそうな冒険服はないですか」


来店した途端遠慮もない冗談を飛ばす店員とラミルのやりとりを僕はただ黙ってみていた。

奥の方にいった店員を待つこと数分。


「こちらなんていかがでしょうか」

「これは……」


店員が持ってきたのはコートとズボンだった。

コートは腰辺りまでなびいていて、首周りには金属でできた襟があった。

ズボンの方は特に日本のものとかわりないものとなっていた。


「ヨウマ、この服は全属性に耐久があるがけじゃなく、物理攻撃にも強いそうですよ」

「なんだそのチートアイテムは! 絶対なんか条件があるだろ」

「はい、なんでも『勇者』の素質がないといけないそうです」


どこの某有名ゲームの設定だ、それは。

と心の中で思ったけど、誰も知らないこの異世界でそのツッコミはしたとた負けなような気がしたので、喉の奥に飲み込んだ。


「そういえば、ヨウマさんはまだ登録してないんですよね。冒険者の」

「冒険者の? ……そういえばまだですね」

「すっかり忘れていました。ヨウマ、服はとりあえず買って、もし必要なかったら返品しましょう」


ラミルはそういうと店員の返事も聞かずに僕の手を引いてこの街で一番でかい建物へと歩き出した。


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