ロアとティアが急成長!?
朝になりメアが目を覚ますと隣で寝ていたはずのティアがいなくなっていた。
慌てて飛び起き部屋中を探す。
だが、ティアの姿はどこにもない。
メアはすぐにギルの部屋へと向かう。ノックもせず扉を開ける。
「ギル!大変!ティアが部屋にいない…」
「…?此処にいるけど…。」
ギルがティアを抱き上げる。
「…っ!!何でギルの部屋にいるの?」
メアは訳が分からなかった。
「…?メアが連れてきたんだろ?」
「連れてきてないよ?今起きたんだもん。」
「…ん?じゃあひとりで来たのか?」
「それは無理だよ!まだ立てないし!」
「だよな。でも起きたら部屋にいたんだよ。」
「うーん。」
2人が頭を悩ませていたらティアが2人の前で自ら浮いて見せたのだった。
「「!!!」」
ティアがあっさり浮いた事に2人は顔を合わせて驚く。
「ティア…今、魔法…使ったのか?」
ギルがティアに訊ねるとティアは首を傾げて笑う。
「…無意識にやったのか。恐ろしいな。…ん?ティアが出来るって事はロアも出来るのか?」
ギルがロアの方に向くと既にロアは浮いていた。
ギルはその姿を見て(…あり得ねぇ。)と心の中で呟いたのだった。
無意識とは言え、自ら浮上魔法をかけることは容易く出来るものではない。
本来、魔法とは魔術に関する知識を得てから発動させるものだ。一理例外はあるが…。ギルとメアのように能力が高い者は呪文を唱えなくとも発動させる事が可能であり、魔術の知識が無くとも発動させる事が出来てしまうことがある。
今回のロアとティアも同じなのだろう。生まれ持つ能力が高いために、無意識に発動させる事が出来たのかもしれない。
恐ろしい才能なのである。ギルとメアは2人の高い能力に驚きながらも、今から魔法について教えることもひょっとしたら悪くないのかもしれないと思うのであった。
「ギルー!」ティアがギルの名前を呼びながら近づいていく。
「ん?なんだ?」
近づいてきたティアは突然ギルの指を食べ始めた。
「…っ!!!」
ティアはギルの指を食べながらお腹を思いっきり鳴らしていた。
「…おいティア、俺の手はお前のご飯か?」
ギルはにっこりしながらも目が笑っていない。
その様子を見ていたメアは必死に笑いを堪える。
「メアも笑ってんじゃねーよ!」
見た目では分からないけれど、どうやらご立腹のようだ。
「ティア!それはギルの指だよー。ごはんじゃないの。早く起きてたからお腹すいちゃったね。朝食食べに行こっか!」
メアは声をかけながらギルの指をティアの口から解放する。
一方ロアは自分の指をしゃぶりお腹を鳴らしていた。
4人は部屋を出てリビングへ向かうとそこにはソファーで寛ぐレグナルドがいた。
「おはよう!皆起きるの遅いな!」
「お前は早いな。何時から起きてんだよ。」
「俺は4時だ!」
「早すぎるだろ…」
「早すぎるね…」
ギルとメアが同時に突っ込む。
「お話のところ失礼致します。ギル・ロアート様、メア・プラティーナ様、朝食のご用意が出来ておりますので此方へどうぞ」
執事が4人をテーブルの方へと案内する。
「うわぁ!美味しそう!」
テーブルに並んだら朝食にメアが興奮し出した。
「ごゆっくりお召し上がりください。何かありましたら何なりとお申し出下さいませ。」
執事が一礼するとレグナルドの方へと向かっていった。
4人は席につき、朝食を食べ始める。
ロアとティアはお腹を空かしていたからか口をパクパクさせてねだっていた。
「わかった。わかった。リゾット食べようね。」
まだ幼い2人は柔らかいものを食する。
「ロア、まだ口に入ってるのにねだるな。ロアの分は無くならないから。」
ロアの食欲も相当なもののようである。
「アッハハッ!お前達も大変だな!」
いつの間にか側に来ていたレグナルドがティアとロアの食欲を見て笑っている。
ギルとメアは幼い2人にご飯を食べさせるとレグナルドの執事に2人を任せて、ギルとメアが食べ始めた。
レグナルドの屋敷で食べる朝食はRosaとはまた違う美味しさであり、メアもギルも美味しく食べていた。
「なぁ、何で執事にちび達預けたんだ?俺がいるじゃないか!」
レグナルドが横で膨れている。
「いや、お前に預けるのは危険きわまりないからな。」
ギルの言葉にメアも " うんうん " と頷いている。
「俺を何だと思って…」
「だって預けたらお前絶対2人で遊ぶだろ。」
ギルは手を止めずにレグナルドと会話をする。
「…なんだ、ばれてたか。」
「お前だからな。」
「だから俺を何だと…」
レグナルドのその言葉にギルとメアは笑っていた。
2人が朝食を食べている間、ロアとティアはレグナルドの執事と屋敷内でボール遊びをしていた。
最初は2人ともボールの投げ方すら知らなかったが、執事の分かりやすい説明で投げ方、受け取り方を理解した。
そしてその2人の姿をみて、賢い子達であると執事は確信したのであった。
暫くボール投げで遊んでいるとギルとメアが朝食を食べ終え近寄ってきた。
「わぁ!楽しそうだね~。面倒みてくれてありがとうございました。」
メアはティアを抱き上げて頭を下げた。
「いえ、私もとても充実した時間を過ごせましたので。」
そう執事は微笑んだ。
「ロア、ティア、支度するぞ。」
ギルはロアを抱き上げ執事に頭を下げてから自室に戻る。
ギルに続きメア達も自室に戻ると、執事は使っていたボールを片し、キッチンへと向かって行った。
「なぁ黒崎、やっぱりあいつら今日出て行くのかな。」
「先程のご様子ですとそうなのでしょう…。少し寂しいですね。」
「黒崎、ギル達にアレを持たしてやってくれないか?」
「畏まりました。ご用意致します。」
キッチンで作業をしてから執事は少しの間席を外した。
ギルの部屋には身支度を済ませたメアとティアが入って来ていた。
「ねぇ、Acquaに着いたらオズと会う前にちょっと調べたい事があるんだけど…。」
メアがギルに訊ねる。
「いいよ。資料所でいいのかな?」
「うん。資料所なら本もたくさんあるから。」
「じゃあAcquaに着いたらまずは資料所に行こっか。俺もちょっと寄りたい。」
「ギルも何か調べたいことがあるの?」
「まぁね…。」
「ふーん。」
こうして予定を立てた2人はロアとティアを連れて部屋を出た。
「お待ちしておりました、メア・プラティーナ様、ギル・ロアート様。レグナルド様がお待ちです。」
執事が頭を下げてニッコリ笑うと4人を玄関先まで送った。
「おお?もう来たのか。支度が早いな。」
4人の姿を確認したレグナルドが声をかける。
「まぁ、元々荷物が少ないからな。」
ギルが応える。
「ほらっ!」
レグナルドの手から飛ばされた光を咄嗟にメアがキャッチする。
「それ持っていけ。お前達の役には立たないかもしれないが、チビの役には立つはずだ。」
そう言ってレグナルドは4人の後ろに立つ執事の元へ歩む。
「これって…」
すれ違い様にギルが問うとレグナルドは笑って応えた。
「俺の魔力だ。まぁ、欠片だから少ないけどな。それをちび達の首から掛けておけ。虫くらいは簡単にはね除ける。」
「いいのか?」
去っていくレグナルドにギルは問いかける。
するとレグナルドは笑顔で頷いていた。
ギルとメアは幼い2人にレグナルドから貰ったペンダントを首に掛けさせると2人を抱き上げレグナルドと執事に手を振った。
「「ありがとう。また来る(ね)。行ってきまーす!」」
「気をつけて行ってこい!オズにもよろしくなー!」
「行ってらっしゃいませ。またお会いできる日を楽しみにしております。」
レグナルドも執事も笑って送り出してくれたのだった。
屋敷の正門を出るとロアとティアが自らの魔力で浮き上がる。
やはり簡単にやってのけている。
信じがたい光景であるのた。
暫く歩くとギルとメアも浮き、飛行を始めた。
「言葉もしたったらずなのに不思議だよな…。」
「…虹の奇跡で生まれたからかな?」
「多分な。でも、2匹生まれること事態初めてなんだよな。」
「そこから既に異例だったんだね。」
「あと、俺達に懐いたのもな。メアは分かるけど俺は…。まぁ、魔力の素が反応して懐いたんだろうけど。」
「ロアは多分魔力関係なくギルの事大好きだと思うよ?ね、ロア!」
「「ギルーしゅきぃー!」」
「ほらね?ティアも好きだって。愛されてる!」
ギルは幼い2人から真っ直ぐに言われると流石に照れたのかそっぽを向いた。
その姿を見てメアはクスクス笑っていた。
4人は空高く飛び上がるとGialloを出てAcquaへ向かう。
ギルが今まで通り幼い2人に防御魔法をかける。
GialloからAcquaまでは距離が近く危険も少ない。
周りに龍や飛獣など飛び交っているが、ギルの防御魔法やレグナルドから貰ったペンダントが幼い2人を護ってくれている為、万が一襲われたとしても相手が返り討ちに会うだけなのである。
それほどまでにギルとレグナルドの力は強いのだ。
飛行中、幼い2人はギルとメアから言葉を学んでいた。
「これから行くところはどこ?」
ギルの問いに2人は「「あくあー!」」と答える。
「正解。ちゃんと覚えてるな。偉い。」
ギルは2人の頭を撫でて褒めた。
「じゃあ、これから7人の神の名前を覚えよう!」
メアはそう言うと魔法を発動させた。
ー [ Guёrison ] ー
7人の神を映し出す。
「久々聞いたな、その呪文。」
ギルが懐かしそうに言う。
「この呪文聞いたことあるの?」
メアはギルに問いかけると「神になったばかりの頃に、1度だけな。」
メアは不思議そうな顔をしていた。
呪文を唱え映し出した7人の名前を順に教えていく。
「運命の神『レイティナ・ローズ』、癒しの神『メア・プラティーナ』、生命の神『アリス・ネヴィア』、自然の神『フレイア・ハル』影の神『ギル・ロアート』泉の神『オズ・ブライド』光の神『レグナルド・ホルスティー』…覚えられるかな?」
メアに続いてティアとロアが叫ぶ。
「レイティナ・ローズ」「「レティナ・ロズー!」」
「メア・プラティーナ」「「メアー!」」
「アリス・ネヴィア」「「アリス・ネーアー!」」
「フレイア・ハル」「「フリェイアー!」」
「ギル・ロアート」「「ギルー!」」
「オズ・ブライド」「「オズ・ブリャイドー!」」
「レグナルド・ホルスティー」「「レグー!」」
「難しそうだな。」
ギルはクスクス笑っている。
こうして4人はAcquaまでの道を楽しみながら進んでいた。