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メアとギルの忘れられない記憶(前編)

先に屋敷へと戻っていたメアはハルの元へ向かっていた。


「ハルに調べて貰いたいことがあるの。ライムが…母国で何を調べていたのかを。」


「メアお嬢様、それは…」


「ライムに口止めされてるのは分かってる。でもライムはもう居ないの。お願いハル。」


「…畏まりました。暫くの間メアお嬢様の御側を離れますが、お許しください。」


「メアのお願いきいてくれてありがとう、ハル。」

メアは切ない顔で呟いた。


その頃ギルの部屋ではロアとティアがベッドの上でスヤスヤ眠っていた。


ーコンコンッ。


「ギル・ロアート様、モモで御座います。フレイア様から伝言をお預かりしましたのでお伝えにあがりました。」

ギルは扉を開け、モモを招き入れる。


「フレイアからの伝言?」

ギルが訊ねた。


「はい。オズ・ブライド様の元にはギル・ロアート様もお向かいになられるよう(おっしゃ)っておりました。そしてこの結晶をお渡しするようにも言われております。」

そう言うと手に持っていた結晶をギルに渡した。


「これは…。ありがとう。ちゃんと受け取った。」

ギルは結晶に少し驚きながらも受け取った。そしてモモは部屋から出ていった。

ギルが受け取った結晶には魔力が込められている。

その魔力はフレイアのものではなく、オズのものであった。

魔力に包まれた結晶がギルの前で形を変える。


"やぁ。久しぶりだね、ギル・ロアート。元気にしているかな?君にこのメッセージを送った理由には…賢い君ならもう気づいているだろう。

君がずっと探し続けていたあの人について新たに分かったことがある。1度、Acqua(アークア)に来てくれ。待っている。"


メッセージが終わると結晶は消えてなくなった。


「どうするかな…。」ギルはスヤスヤ眠る2人を見ながら呟いた。


ーコンコンッ。


ノックをしてから入ってきたのはメアだ。


「どうした?」


「あのね、2人どうしてるかなーって思って。」


「あぁ、ぐっすり寝てるよ。結構動き回ってたからな、疲れたんだろ。今日はこっちでこのまま寝かせるから、自室でゆっくり休んだらどうだ?」


「…そうだね。そうする。あ、明日から少しの間ハルを実家に帰らせるから。」


「何かあったのか?」


「うーん、リフレッシュ的な?」


「あぁ、成る程。こき使ってるもんな。」


「ちょっと!!!」


「ハハッ、冗談冗談(笑)」


「じゃあ部屋に戻るね。2人の事よろしくね!」


「おう、任せろ。」


メアはギルの部屋を出て自室に戻り、100年前のことを調べ始めた。


今から100年前、2人の神が行方不明になった。

2人の名はレイシー・プラティーナとライム・ラビレッド。

高位の神であった。

ライムに関しては複数の能力を使いこなしていたため誰もが尊敬し、魔力は誰よりも強かった。

一方レイシーは癒しの力に特化しており、その力はライム以上であった。

そんな神2人が同時に行方不明になったのだ。

レイシーとライムはメアの両親であり、メアは2人の事が大好きだった。


100年前ライムに何があったのか、何を必死に調べていたのか…それが分かれば100年前の真実に近づけるはず。

メアは母親であるレイシーがつけていた日記を手にした。

行方不明になってから真実を知るのが怖くて開けずにいたノート。

そのノートには主にメアの日々の成長が書かれていた。

そしてライムとの事など日常生活の事が書かれていた。

この日記にはライムが何を調べていたのかは書かれていないようだ。


「ライム…何を調べていたの?」

メアの心の声が漏れる。


ライムは行方不明になる1カ月前から何かを調べていた。

何冊もの本を机に並べ広げていた。1度何冊もの本の1冊を触ろうとした時…

「メア、危ないよ?これはメアにはまだ難しいかな。大きくなったらまた読んでみるといい。」とライムは言っていた。

今の私なら理解できるのだろうか…。

あの時のライムの気持ちがわかるのだろうか…。


本の色や形は覚えている。

けれどタイトルが思い出せない。

屋敷内の書棚には記憶に残る本は見当たらなかった。

きっとライムが読んでいたのは他所(よそ)から持ち込んだ本だったのだ。

大きくて分厚く真っ赤に染まった本。

あの日にみた大量の本が100年前の真実に繋がる唯一の手掛かりなのに、全く思い出せない。

こんな時程、自分はなんて無力なのだろうとどうしようもなく思ってしまうのだった。


調べものをしているといつの間にか日は沈み、部屋の明かりも暗くなる。


ーコンコンッ。


「メア、ちょっといいか?」

ギルが訪ねてきた。


机に広げていた母の日記を引き出しに戻し、部屋の扉を開けギルを招き入れた。


「どうしたの?」


Acqua(アークア)に行こうと思う。ちび達も連れて。」


「え?」


「メア1人じゃ危ないだろ。それにオズには書類の事で俺も用があるんだ。」


「でも…。」


「安心しろ。メアの邪魔はしない。」


「…邪魔とかじゃない。ただ…」


「言いたくないことは言わなくていい。」


「…ギルには何でもお見通しなんだね。」


「んじゃ、決まりな。いつ出るかはメアに任せる。」

そう言うとギルはメアの部屋から出ていった。


自室に戻ったギルはぐっすり眠る2人の頭を撫でながら、ある人の事を思い出した。


130年前…ギルがまだ神の座に就いていない頃、1人の男神に命を救われた。

この頃のギルは魔力の制御が出来ず、屋敷の中で隔離(かくり)されていた。

魔力のコントロールが出来なかったギルは、魔力の少ない魔術でも膨大な魔力が放出されてしまう。

そんなギルの魔力は国中の誰よりも大きかった為、ギルを止められる者が誰一人としていなかった。

魔力は使い方を間違えれば命を落とす。

膨大な魔力を1度に放つギルの身体は当然、脆弱(せいじゃく)していくのだった。


隔離されてから数日経ったある日、扉が突然開きひとりの男が入ってきた。

ギルはその男を警戒する。


「やあ!君はここで何をしているんだい?こんな広い部屋に独りぼっちとはね…。」


「…誰だ?俺に近づくな。死ぬぞ。」


「ほぅ…成る程。だから隔離されているのか。」


男はギルを見ただけで魔力の大きさに気づいた。


「!!!」


ギルは驚く。

目の前の男が自分の魔力を見透したことに。


「僕も君と同じように生まれつき魔力が大きかったんだ。だから僕なら今の君を助けられる。…どうだろう、魔力制御の方法を教える代わりに僕の頼みを1つ聞いてはくれないか?君にとって悪い話ではないはずだ。」

男は優しい笑顔で話す。


「…お前に何が出来る。周りの皆は諦めたんだ。…俺の父さんだってな。」


「そのようだね。でもこのままでは君は死んでしまうよ?それでも君は良いのかい?」


「黙れ…。」

ギルは男を睨み付ける。


だが、男は動じず笑顔のままゆっくりギルに近づいて来る。


「もしかして君は死にたいと思っているのかい?」

笑顔を崩さず近寄る。


「!!!…(うるさ)い。黙れ!」

ギルは無意識に魔術を発動した。

ギルに近づく男は正面から膨大な魔力を受け、その場で立ち止まった。


「…想像以上の魔力だ。」

男の表情が変わり、冷静な顔をして更に近づいていく。


「来るな!近寄るなー!!!」


ギルは最大の魔力を放ってしまった。


男は瞬時に回復魔法をギルにかけ、放たれた魔力に自ら突っ込んで行った。


「…どうして。…どうして逃げないんだよ!何で俺を助けようとするんだよ!俺は!俺はお前を殺そうとしたんだぞ!!回復魔法だってお前が使えばいいだろ!何で俺になんか…」


ギルは目の前に倒れた男に語りかける。


「…ハハッ。僕の回復魔法が無かったら死んでいたかもしれないよ?」

男は笑顔で応えた。


「お前だって死ぬかも…」


「今は死なないよ。もちろん君も。…やっと捕まえた。君は僕と此処を出るんだ。ここから出たいだろ?」

男は体制を戻しギルを抱き締めながら問いかけ、その言葉にギルは少し迷って何も言わずに頷いた。


「よし、決まりだ。」

男は飛行魔法を使いギルと自分の身体を浮かせ暗号化された部屋の鍵を意図も簡単に解き2人で飛び出した。


「暗号化されてた鍵…何であんな簡単に解けたんだ?」


「あぁ、あれは…まぁ、知らない方がいい!」

ニッコリ笑顔で軽く流された。


ギルは不思議だった。

この男は何者なのか、何故自分を助けたのか、頼みとは何なのか、そして " 今は死なない " とはどういう意味なのか…。


分からないことだらけだ。

けれど、この男は俺を助けてくれるかもしれない、本当に魔力制御が出来るようになるかもしれない。


「あぁ、そういえば君に名を名乗っていなかったね。僕はラビだ。」


「ラビ…。俺は…」


「ギル・ロアートだろう?」

ラビはギルの名前を知っていた。


「俺の名前知ってたのか…。」


「んー。まぁそんな感じかな。」

ラビは笑顔で応えるとViola(ヴィオーラ)を出て森へと向かった。

森に入ると奥へと進み静かな物陰に2人は降りた。


「この辺でいいかな。…さてと、魔力制御を教えようか。」


こうしてラビによる魔力制御の指導が始まる…。

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