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ロアとティア、フレイアに会う!

ロアとティアが泣き出してから1時間近く経とうとしていた。

甲高い声はあげなくなったものの、未だに涙は(こぼ)している。

側に近づいてくるフレイアがよっぽど怖かったのか…。


ギルとメアはとても不思議でならなかった。

フレイアの見た目は我々と同じで幼子であり、いくら面識がないといっても足音だけで嫌がる理由が全く分からないのだ。


"何に怖れているのか…"


ギルもメアも自然と同じ疑問にぶち当たる。

けれど言葉をうまく話せない2人には聞けないため、断念せざる終えないのであった。

泣き止むまでに約1時間ちょっと…。

長い時間泣けるだけの体力にギルが驚く。


「普通、こんなに泣けるか?」

メアに向かい問いかける。

確かにここまで泣くのは予想以上だった。

そして何よりもギルにしがみつくという行動が、周りの者からすると驚きなのだった。


「ギルの方が怖いと思うんだけどなー」

メアは何も考えず、思ったことをそのまま口にする。


「何か言ったか?」

いつになく怖いくらいの笑顔でギルは言う。


「…。ほら、ギルの方がフレイアより何倍も怖くない?」

メアがティアをギルの方に向けて話す。


「「ギーリュ!」」

2人が笑ってギルに向かい発する。


ギルは2人からとても好かれているようだ。

ますますメアは頭を傾げていた。


ともかく、泣き止んだ2人だったがすぐに問題が発生した。

ギルとメアから断固して離れようとしなくなってしまったのだ。まだ歩けない2人が出来る事といえば、ただただひたすらにしがみつく事である。

メアとギルが2人の目を盗み動こうとしても、袖だけはがっしりと掴まれている。


「大丈夫だよ?いなくならないから。」と何度伝えようとも聞く耳を持たない。


「まさかとは思うけど、俺此処から出れないとか無いよな?」

ギルはメアに訊ねる。


「メアに聞かないでよ!(汗)」


「じゃあ誰に聞くんだよ!俺は絶対にここで寝ないならな!」


「大丈夫だよ!まだお昼だもん!」


「何が大丈夫なんだよ…。」

ギルは呆れて窓の外に目を向けた。


「外…。外行ってみるか?」

ギルからの突然の提案にメアは驚く。


「フレイアも連れてこい。あ、でもちび達の機嫌が良かったらな?」

そう言うとギルはロアとティアを浮かせた。


メアは廊下にいたモモに状況を伝え、ギルと共に部屋を出る。

ギルの言葉によって廊下に出されていたフレイアはというと、廊下に出て少しするとモモに連れられ応接室へと向かった。


応接室にはハルが出迎え紅茶(ティー)が用意されていた。

「暫くの間、此方でごゆっくりお寛ぎくださいませ。」

モモがフレイアにお辞儀をするとフレイアをハルに任せ、廊下へと戻ったのだった。


「ギルの提案でちょっと外に出ようと思うの!それでね、ティアとロアが楽しんでくれたらフレイアを連れてきてくれないかな?」


「畏まりました。お力になれず申し訳ございません。」


「大丈夫だよ?フレイアのことよろしくね!」

メアは笑顔で外へ出ていった。


外に出ると色鮮やかなチューリップが庭一面に咲いていて、その真ん中には噴水があり陽の光に反射し輝いていた。

この景色を見た幼い2人は、目を光らせ飛び出して行く。

すっかり上機嫌になり飛び回っている。

その様子をみてギルとメアはフレイアを呼ぶことにした。メアは玄関に立つモモにこの事を伝え、フレイアが外に出てくる。


「フレイア!こっちこっち!」

メアが手を振りフレイアを庭へ招く。

その間にギルは飛び回る2人を瞬時に捕まえる。


「ロア!ティア!いいか?よく聞け。今からここにフレイアが来る。フレイアは俺達の仲間だ。2人を傷つけることはしないし俺がさせない。…だから怖がることはないんだ。」

そう2人の頭を撫でながら、滅多(めった)に見せない優しい笑顔でギルは話した。

ギルの優しい笑顔に自然と幼い2人も笑う。

そしてフレイアの名前を覚えたのだった。


メアがフレイアをギルの元へ連れて行くとフレイアはメアに渡されていた(あわ)いピンク色のチューリップを幼い2人に1本ずつ渡した。


「さっきは驚かせちゃってごめんね。このお花はお近づきの印に受け取ってくれるかな?」

フレイアは可愛らしい笑顔で話しかけた。

するとロアとティアはお花を受け取り笑顔で彼女の名前を呼んだ。


「「フリェイア!」」


どうやら受け入れてくれたようだフレイアはとても嬉しそうに微笑む。


「打ち解けたみたいだね!」

メアは笑顔でギルに話しかけた。


「みたいだな。」

ギルはホッとしたのか噴水に腰を掛けた。


「「皆様、お食事をお持ち致しました。」」


モモとハルがサンドイッチと紅茶(ティー)を持って来た。


床には淡いパステルカラーの敷物を敷き、そこに様々な種類のサンドイッチと紅茶(ティー)を並べる。


「わぁ!たくさん種類があるー!」

メアは興奮していた。

目の前の種類豊富なサンドイッチにギルとフレイアも目を光らせた。

「ロア様とティア様には消化に良いものをと思い、フルーツゼリーなどをご用意致しました。皆様、お召し上がりくださいませ。」

ハルはそう言うと其々(それぞれ)のお皿にサンドイッチを盛り始めた。


タマゴサンド、サーモントマトサンド、サラダサンド、チキンレタスサンド、カツサンド、ベーコンエッグサンド、生ハムレタストマトサンド…

イチゴホイップサンド、ピーチホイップサンド、フルーツミックスサンド、キウイホイップサンド、バナナホイップサンド、プリンサンド…


種類豊富で、好きなものを好きなだけ食べていく。


幼い2人はフルーツゼリーやプリンなどの消化に良いものを食べていた。


「外で食べたりするのも良いね。」

メアは幼い2人の笑顔を見ながらギルに話しかけた。


「そうだな。めちゃくちゃ楽しそうだし。もう少し成長したら、ここから出て冒険するのも良いんじゃないか?」

そんなギルの言葉にメアの顔が一瞬曇る。


「…そうだね。ずっとここにいる訳じゃないもんね。」


「?俺達も行くんだからな?」


「え?私達も行くの?」


「流石に2人だけで行かせる訳ないだろ。」

サンドイッチを食べながら話す。

お腹がいっぱいになるほど食べたら3人は少し横になり、浮いたまま動き回るロアとティアを見守っていた。


「あ、そうだ!忘れない内に伝えておくわ!オズ・ブライドがメアに見てもらいたい物があるから来てほしいと言ってたいわ。」


「え?オズが私に?なんだろう…。」


「時間ができたら行けばいいよ!」

そう言うとフレイアは立ち上がり飛び回るちび達の方へと歩いて行った。


「1人は不安か?」

ギルが訊ねる。


「全然!ただ…何でもない。ティア達がもう少し大きくなったら行ってくるよ!」


メアが言葉を(にご)した事に、ギルは少し違和感を抱いた。


この時、その違和感の原因を探るべきだった。


探っていたなら、これから起こる悲劇を未然に防げていたかもしれない…。


陽が傾きはじめ、フレイアは自国へと帰る。

フレイアは「また遊びに来る!」と幼い2人と約束を交わして。


正門までモモがフレイアを見送る。


「ここまでで大丈夫です。ありがとう。ひとつ伝言を頼めるかしら?」

フレイアはモモに問いかけた。


「はい。お伺いいたします。」


「ギルに伝言なんだけど、オズの元へはギルも行くように伝えてほしいの。でもこの事はメアに教えないで。あと、これをギルに。」

そう言うとミントグリーンに光る結晶をモモに差し出す。


「畏まりました。必ずお渡し致します。Verdura(ヴェルドゥーラ)までお気をつけくださいませ。」

モモは一礼し、フレイアを見送ったのだった。

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