信用の為の契約
長々と議論した結果、結局土塊のようなステレオタイプなゴーレムにする事が決まった。あまり人を威圧せず、かつ強そうな見た目となると、バランス的にそれが一番という結論に至ったのだ。
議論が終わった事でやる事が全て終わったので、そろそろ寝ようと地下室からリビングへと出たレイ。
直後、目の前にミクォラが立っているのに気が付いて足を止めた。
「何だ?こんな時間に何か用か?」
「……………」
レイの問いにミクォラは答えない。その代わりに後ろに隠していた物をレイに差し出した。
部屋自体が暗くて若干見辛かったが、それは壊れている上に錆び付いた枷のようなものだった。
レイはどこかで見た事があるような気がしていたが、それも直ぐに解決した。それはミクォラが奴隷だった時にしていた手錠だったのだ。
「何のつもりだ?」
いきなりこんな物を見せられても何がしたいのか分からない。薄暗い部屋の中では表情も良く見えない。
流石にそれをレイに付けるなんてことは言い出さないだろうが、一応万が一に備えて警戒と備えをしておく。触れると電撃が走る結界魔法だ。幾ら速く動こうとも、近付いた時点で即迎撃である。
そしてレイの準備が整った段階で、ミクォラから漸く目的が告げられた。
「私を、レイの奴隷にして欲しい」
「………は?」
直後、レイが思ったことは『コイツ何言ってるんだ?』であった。
そもそもミクォラは奴隷でいるのが嫌で、レイに枷を外して貰って森で生活するようになった。そんなミクォラが突然『奴隷にして下さい』と言い出したら、そう思っても仕方ないだろう。実際レイからすれば意味不明である。
「レイの奴隷にして欲しい」
「いや、聞こえなかった訳じゃ無いから。と言うか、何で奴隷?お前奴隷がどれだけ悲惨なものなのか、身を以て知ってるだろ」
ミクォラは黙って頷く。忘れる筈が無い。碌に食事も与えられず、その日を生きるのがやっとだった。自然界も似たようなものだったが、選べる選択肢が無いという意味では、寧ろ奴隷の方が悲惨だったと言えるだろう。
「なら何で自ら奴隷になろうとした?」
「レイに信用して貰う為…」
「…それが何で奴隷に繋がるんだよ」
この世界では奴隷とは一般的に労働力や贖罪、性欲の処理等に使われる存在だ。一体何をどう考えれば奴隷=信用するという事になるというのか。
「さっき聞こえた。レイ、人を信じられないって」
「聞こえてたのかよ…」
まさか地下の音が反響して地上まで届いているとは思わなかったレイ。尤もそれはミクォラのような獣人の優れた聴覚でもって漸く聞こえるレベルのものなので仕方ない事なのだが、そんな事はレイには知る由も無い。
「だから、レイの奴隷に…レイの物にして欲しい」
「……俺の物ねぇ」
何となく、ミクォラの言いたい事が分かった。同時に快く無い時事も。そしてその快く無い時事こそが、この会話において重要な部分である。
それは、この世界では奴隷とは人では無く物であるという点である。財産、と言えば多少聞こえは良いかもしれないが、要は人権の適応対象外という事である。
そしてミクォラは、そんな物になることで、レイから信用を得ようとしているのだ。
「くだらねえ」
「ッ!?」
ミクォラの肩が小さく跳ねる。しかしレイは追撃を加えるかの如く言葉を続ける。
「人で無ければ信用されると思ったのか?だとしたら思い違いも甚だしいな。俺は人のみならず、意思疎通の可能な存在全てを信用していない」
転生してからずっと一緒に居る精霊達も、主従契約で配下にしたルーフィエとメリーも、裏切る可能性は低いだろう。レイもその事は理解している。
しかしレイは知っているのだ。そんな親しい者達の表情が変わる瞬間を。裏切られた時に生じる、心が砕け散ってしまいそうになる程の痛みを。苦しみ、悲しみ、怒り、恨み、妬み。それ等が混ざり合った末に自身の価値観が崩壊する感覚を。
だからレイは信用しない。仮に相手の好意が憎悪に変わったとしても、直ぐに対処が出来るように。
「だからお前が俺の奴隷になった所で結果は何も変わらない。俺がお前を信じる事は無い」
「…………」
レイとミクォラの間に重い沈黙が流れる。重い重い沈黙。あまりに重過ぎて口を開くのも憚られるくらいに、その場の空気は重かった。
しかしそれでも、ミクォラは諦めずに口を開く。
「大っきい狼から聞いた。レイ、契約魔法っていうので命令出来るって」
「アイツか…」
大っきい狼という単語で思い付く存在は一つしかない。変な入れ知恵しやがってと、レイは小さく眉を顰める。
「私を信じれないなら、命令すれば良い。されて嫌な事全部『するな』って命令すれば良い。そうすればレイは私を信じれる」
「…さっきから信用だの信じるだの言ってるけど、何故そこまでして俺から信用されようとするんだ?」
ミクォラのレイに信用されたいという思いに偽りは無い。レイもそこまでは理解している。
だが正直なところ、信用を得ようとする事の裏には何か薄汚れた目的があるのではと思う所が多い。それはレイが地球で散々幼馴染目的で利用されていた過去があるからだ。
だから信じて欲しいと言われたところで、素直にそれを信用する事は出来ない。なにせレイには、そこまでミクォラに慕われる理由に心当たりが無いのだから。
今のミクォラからはレイに信用されたいという思いばかりが先行して、そこに隠された真意が覆い隠されてしまっている。
そんな状態で不用意に奴隷にして、寝首を掻かれでもしたらと考えるだけで嫌になる。それではいつまで経ってもレイの答えはノーのままだ。
だからこそ、その言葉に隠された真意を見つけ出す必要がある。何よりもレイ自身の為に。
ミクォラは何かを考えるように俯くと、暫く間を置いてから話し始めた。
「…昔、レイに助けられた時、凄く嬉しかった。助けてくれた事も、レイの事教えてくれた事も、生きるのに必要な物を与えてくれた事も、全部合わせて嬉しかった」
まるで思い出話に興じるかのように、昔の心境を語る。あの時に思った事を、レイに伝えるように。
「だから今度は、私がレイの力になりたかった。…だから、レイが私を信用してないって言ってたの聞いた時、凄く悲しくなった。心がチクチクと痛くなって、なんだか寒くなった気がして、尻尾がキュウッてなった」
そう語るミクォラの耳がペタンと垂れて、体が縮こまり小さく震え、レイには見えない後ろの尻尾は丸まり、声よりも饒舌にミクォラの心情を表す。
「このままじゃレイの力になれない。それが凄く嫌だった。もっとレイの力になりたい。もっとレイの役に立ちたい。もっと、レイと一緒に居たい」
だからーー
「私は、レイに信用されたい」
その時、空を覆う雲の合間から徐々に顔を覗かせた月の光がリビングに流れ込んで来た。
月明かりに照らされて徐々に部屋が明るくなり、先程まで見えなかったミクォラの顔を映し出す。そうして見えたミクォラの瞳は、寸分の狂いも無くレイを見つめていた。
無言のまま見つめ合う両者。そして先に動いたのは、やれやれと言わんばかりに溜め息を吐いたレイだった。
「…何でそうなるのか」
「ミィ?」
たった一度、危ないところを助けただけ。しかも特に優しくした訳でも無いのにここまで好意を持つなんて、純粋なのか馬鹿なのか。あるいは勘違いか策略か。
尤も当のミクォラが首を傾げているのを見ると、単純に馬鹿なだけな気がしてならないが。
とはいえ、ミクォラの顔からは疚しい感情は一切感じられない。それは疑り深いレイの観察眼を通して出た答えだ。
地球でも多くの人間を見分けて来たレイはそれを信じているし、だとするのならミクォラがレイと一緒に居たくて信用を得ようとしているという話も信じる他無い。例えレイが心のどこかでそれを信じられなくとも。
だからレイがしたのは追及では無く、確認だった。
「お前、それが何を意味しているのか分かってるのか?」
「うん」
ミクォラは何の迷いも無く首肯した。
「今後お前が俺の命令に逆らう事は出来なくなる。その結果少しでも叛意や敵意を抱けば、その時点で俺はお前に死ぬように命令するだろう。それでも良いって言うのか?」
「レイが信じてくれるなら」
「………そうか」
そこまで言うのであればレイはもう何も言わない。元よりミクォラが何かしら企んでいる訳で無いのであれば、別にミクォラが自身の奴隷に成ろうとも構わないのだ。
「良いだろう」
その言葉にミクォラの目がキラキラと輝く。
「ーー但し」
そう言ってレイはミクォラの手にあった壊れた手錠を手に取った。
「こんなボロいのをそのまま使うつもりは無い」
レイが手錠を手に取ると、瞬く間に手錠は突然宙に浮いて赤熱し、まるで意志を持ってるかのようにグニャグニャと形を変え始めた。
それは宛ら粘土細工のようで、分離し、形成し、結合し、そしてそれ等が収まって再びレイの手元に戻った時には、手錠は影も形も無くなって、一つのチョーカーに変化していた。
錆だらけの鉛色は鮮やかな金属の光沢を放つ銀色になり、ワンポイントで鈴を象った装飾を施されたシンプルなデザインのチョーカーが、月明かりに照らされて柔らかな輝きを放っていた。
レイは一度チョーカーに不備が無いか確認すると、それをミクォラに放り投げた。錆びて壊れた手錠として渡した物が、綺麗なチョーカーになってミクォラの手に戻る。
「それには主従契約の魔法を付与してある。後はお前がそれを着けようとすれば、自動的に首に装着されて俺の奴隷になる。そうなればもう俺には逆らえないし、俺への攻撃も当然禁止ーーおい、聞いてるのか?」
「………綺麗」
「は?」
ミクォラはレイから渡されたチョーカーに見惚れていた。
本来金属製の装飾品など庶民の手の届く品では無い。銀は言わずもがな、鉄も武具が主流だ。自然と手にするのは裕福な家の者に限られる。当然奴隷が手にする物では無い。あっても手にするのは己の自由を奪う無骨な枷くらいだろう。
これも機能自体はそれと同じだが、レイの用意したそれは貴族が身に付ける装飾品と大差無い。銀色の美しい見た目、施されたシンプル且つ可愛らしい装飾。それ等を併せ持ったチョーカーは綺麗と評するに相応しい素晴らしい物だった。
ミクォラは自分の首に近付ける。するとチョーカーは光を纏ってミクォラの首へと飛んで行き、一瞬にしてその首に装着された。
「躊躇無しかよ…」
一切の躊躇も無く首輪を装着したミクォラを呆れ気味に見る中で、ミクォラは自分の首にそれがあるのを指でなぞって確認する。そして指に金属の感触を確認すると、口数少なくレイに尋ねた。
「これで、レイの奴隷?」
「そうだ」
チョーカーに付与された契約魔法は使用者が自ら装着する事で発動する。よって自分の手でそれを装着した時点で契約魔法は発動し、ミクォラはレイの奴隷となっている。
そういった過程や理由を一切無視して結論だけの質疑応答が終わると、ミクォラは再びレイを見た。その目は喜びに満ちていて、それとは別の感情で潤んでいた。
気付けばミクォラは駆け出していた。特に何か考えていた訳では無い。自然と、衝動的に体が動いていたのだ。
そして両手を広げ、今直ぐにでも抱き締めんばかりに接近しーー
「フミミミミミミミミミ!?」
直後、ビクビクと痙攣したかと思ったら、盛大に倒れて気絶してしまった。
一連の行動と現象に置いて行かれ、付いて行かずにその場で立ち尽くすレイ。ただ、数秒して理解が追い付けば、答えは直ぐに分かった。
というか、思い出した。
「あ、迎撃用の魔法、展開したままだった」
「あらぁ」
「なんという結末じゃ…」
「そこはハグするところじゃ…」
感動も何も無い、何とも締りの悪い終わり方に、精霊達も何とも言えない微妙な顔になる。
なんだかんだ良い感じの話になっていたというのに、最後の最後であんまりな終わり方になってしまった。
画竜点睛を欠くというか、龍の目では無く腕や尻尾を書き足して変な生き物になってしまったような感じだった。
「…まあ良いか」
そんな終わり方に対するレイの結論は、実に無味乾燥なものだった。
「いや、良いのか?結局の所、ミクォラが不憫だとしか思えんのじゃが」
「なってしまったものはしょうがないだろ。というか、これに関しては急に突っ込んで来たコイツが悪い」
「確かにそう言えなくも無いけどさ…」
理解するのと納得するのは別物である。しょうがないとは思えても、コレジャナイ感は拭えないのだ。
「そんな事より、もう用事は済んだんだ。もっととねるぞ」
「これはどうするの?」
気絶したミクォラをつつきながらフラムが尋ねる。つつく度にピクピクと反応するのが面白いようだ。
「…正直放置したい所なんだけど。そうも行かないか」
一応こんな事になったのにはレイも関係している。それに関してはレイは後悔していないが、だからと言って完全に放置するのもそれはそれで、という感じだった。
仕方なくレイはミクォラを魔法で浮かせると、そのまま彼女の部屋に運んで行き、ベッドに寝かせてから自分の部屋で就寝した。
因みに道中『そこはお姫様抱っこでしょ!』とフラムが謎の主張をしていたが、レイは問答無用でガン無視した。
ーーー
次の日。普段よりも温かさを感じつつ、レイは目を覚ました。
何故か横向きに丸くなるような体制で眠っていた事や体の感覚がいつもと違う事等にほんの少し違和感を感じつつ、取り敢えず背筋を伸ばそうとして…直後、ムニョンと柔らかい感触がレイの後頭部を押さえ、背筋は中途半端な状態で止まってしまった。
(何だ…?)
まだ起きたばかりで寝惚けているレイだったが、これ以上無い明からさまな違和感を感じて意識が覚醒して行く。
そして違和感の正体を確かめようと後ろを見ると、そこにはスヤスヤと眠るミクォラの寝顔と、視界の半分近くを埋める肌色があった。
ここで漸くレイは現状を理解した。自分は今、ミクォラに後ろから抱きつかれているのだと。それも感触からしてミクォラもレイも裸であると。
(いや、何でだよ)
何でミクォラが部屋に入っているんだとか、何で裸で布団の中に入っているんだとか、何で自分まで裸になってるんだとか、そもそもどうやってこの部屋に入ったんだとか、疑問を挙げればキリが無い。
だが先ずやるべきは、この事態の収拾である。取り敢えず【転移】で己の体を抱き締めるミクォラの拘束から抜け出し、部屋に散らばっていた自分の服を着る。
部屋の惨状からしてまるで事後のようだが、当然ながらそんな事をした覚えは無い。ミクォラに襲われた訳でなければ大丈夫な筈だ。
「…んぅ?」
丁度レイが服を着終わったタイミングで容疑者が目を覚ました。レイの感触が無くなった事に気付いたのか辺りを見渡して、そしてベッドから離れた位置にレイが居るのを見つけて体を起こした。
布団がズレ落ちてミクォラの裸体が露わになるが、今のレイにとっては尋問の方が優先である。
「…もう朝?」
「いや、人のベッドに潜り込んだ挙句服を脱がしておいて何平然としてんだよ」
レイが問い質すと、ミクォラは不思議そうに首を傾げて答える。
「……奉仕」
「人の服をひん剥いて抱き枕にする事を奉仕とは呼ばないだろ」
「枕じゃ無い。温めてただけ」
「は?」
全く話が見えて来ない為、真実を知る為に一つずつ質問して得た情報を要約した結果、ミクォラは普段から寝る時は裸で寝るらしい。
その理由は寝る時に服を着ているのは窮屈だから嫌だという事で、同じ理由でレイが寝苦しそうだったから服を脱がせ、体が冷えないように体を寄せて寝たとの事らしい。それ以上の事はしていないそうで、それを聞いてほんの少し安堵した。
「いや待て。そもそもどうやって部屋に入ったんだよ」
この部屋には万が一に備えて精霊達による結界を張って貰っている。
それによってレイ以外の者が侵入すれば、その場で気絶させるように出来ている。だというのにどうやってミクォラは部屋に侵入したというのか。
そう思っての質問に、ミクォラは首を傾げた。
「普通に扉から」
「…何だと?」
反射的にレイは扉…では無くその付近に浮かぶ精霊達を見る。どういう事だと問い詰めるような目で。
それを受けて、フラムが開口一番に答えた。
「それならもう解除したよ?」
『いや、何でだよ』
「え?だってミクォラはもうレイの奴隷なんだよ?」
『…だから?』
話が見えなくて、レイは短く続きを促す。
「えっと〜、ミクォラちゃんがレイさんの奴隷になって、レイさんへの攻撃は出来なくなったから」
「それならもう結界を張っておく必要も無いかなーって思って。昨日の内に解除しておいたんだよね」
「部屋に入って来た時も敵意は感じなかったから、問題無いと思ってそのまま入れたのじゃ」
見事な連携で告げられた内容に、レイの眉がヒクつく。フラム達の横でエストレアがペコペコ謝っているが、別に結界を解いた事についてはそれ程怒ってはいない。単純に、自分に何の断りもなく勝手に結界を解かれていた事に思う所があった。
別に行動自体に問題は無い。まさか奴隷となったその日にこんな事をするとは思わなかったが、ミクォラはレイの奴隷だから攻撃される心配は無い。それなら精霊結界で外敵を排除したこの家に敵になる存在が来る可能性は極めて低いし、万が一進入されたら精霊達が気付いてレイを起こすだろうから、部屋の結界くらいなら解除しても問題は無い。
ただ、何も聞かされていないとこのような事態になった時に吃驚というか混乱するから、無断で行うのはやめて欲しいのだ。
『次からはちゃんと俺に一報入れろ。良いな?』
そう言った後に精霊達の了承の返事を聞き終わると、今度はミクォラに向き直った。
「今度からは服を脱がす必要も抱き着く必要も無い。寝るのも自分の部屋で寝ろ。何の為にお前の部屋があると思ってるんだよ」
「…押入れ代わり?」
「そんな回りくどいやり方するくらいなら普通に押入れとして使うわ。今日からはちゃんと自分の部屋を使えよ」
レイの命令に、ミクォラの顔が顔を俯かせる。
「…レイと一緒に寝たかったのに」
その言葉に一瞬『子供かよ』と言い掛けて、しかしミクォラの年齢が十一、二歳である事を思い出して思い留まる。
その年齢なら地球でもまだ小学生だ。例え見た目がそう見えなくとも、見た目だけで判断するのは止めた方が良いだろう。
「同じベッドに二人も入ったら狭くて寝辛いだろ」
「さっきみたいにして寝れば良い。それなら大丈夫」
「お前がそうでも俺が駄目なんだよ。分かったか?」
「ミィ…」
渋々、本当に渋々と頷く。
その様子にレイは微妙な顔をするが、一応命令はしたのだから大丈夫だだろうと思考を切り替える。
「分かったんならそれで良い。俺は飯を作るから、お前もさっさと服を着て降りて来い」
そう言い残して部屋を出て行こうとするレイだったが、ふとある事を思い出して足を止める。
「あぁそうそう。飯が終わったら森に行かずに待っていろ。今日からお前にも街で働いて貰う」
「…え?」
「ん?俺の役に立ちたいとか言ってたから、望み通り使ってやるって言ってるんだよ。何か文句でもあるのか?」
「…ううん、無い…!」
フルフルと首を振るミクォラ。その瞳はレイの力になれる喜びと、それに対する強い意志でキラキラと輝いていた。
ピロリン♪
〝レイとミクォラの距離が縮まった!〝
…………遅いわ。
ともあれ、これで少しはレイとミクォラの関係も温かい物に出来る…筈……。うん、そう出来るように頑張ります。(^_^;)




