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人嫌いの転生記  作者: ラスト
第二章
39/56

レイ、配下を作る

 トイレで起こった珍事件から暫く経った。あれ以降ミクォラはトイレに行く事に恐怖を抱いてしまったらしい。まさかのトイレ恐怖症である。

 一時期はあまりの怖さから別の場所でさせて欲しいと懇願されたりもしたが、其処は外で用を足されるのは嫌なレイが少々無理矢理捩じ伏せた。

 尤も改良を加えて以降あんな事にはなっていないので、今は多少なり受け入れてくれている様だ。トイレから戻って来る度に若干頬が赤くなっている時点で手遅れ感は否めないが。

 そんな事はさて置き、ある朝レイが麦を収穫すべく外に出ると、珍しく子ウルフが拠点で遊んでいた。普段は朝早くから日が暮れる頃まで森に出て母親から色々と教育を受けているらしいので、今の時間に此処にいるのは珍しい。まあ時々朝はのんびりしている日も有るので、今日はそういう日なのだろう。

 子ウルフは何やら毛玉の様な物で遊んでいる様だ。真っ白の毛玉を咥えては振り回したりカミカミして遊んでいる。何だかボール遊びする犬の様だ。尤も今の子ウルフは大型犬並の大きさが有るので、その姿はかなり派手な物になっているが。

 それにしても、子ウルフは一体何処でそれを拾って来たのだろうか。見た感じモコモコで触り心地の良さそうなので、場所が分かれば其処に出向いて手に入れておきたい。上手く使えば衣服や家具などをグレードアップ出来るかもしれないのだ。

 今だに掛け布団は中身スカスカの煎餅布団なので、詰め物に使うのも良いかもしれない。ベッドだってスプリングの一切無い木の上に布を敷いた様な物なので、起きると背中が痛くて敵わない。あの毛玉が大量に手に入るなら、あれらを敷き詰めてベッドを柔らかくしても良いだろう。

 そんな事を考えつつ、子ウルフに何処で拾ったのか聞こうとしたその時だった。


「メェェェ〜〜〜〜〜!!」

「………ん?」


 何やら羊の様な鳴き声が聞こえた気がして周囲を見渡す。しかしレイの拠点は精霊結界によって守られている為、外から魔物が入って来る事は無い。それにレイは羊なんて一匹も飼っていないので、突然拠点を見渡しても羊なんている筈が無い。


「メェェェ〜〜〜〜〜!!」


 しかし現に今、羊らしき鳴き声が聞こえているのだ。そうなると流石に無視する訳には行かない。鳴き声が聞こえて来ているのは子ウルフの方からだが…まさか子ウルフの鳴き声とでも言うつもりだろうか。

 嫌、そんな筈は無い。以前からウルフの遠吠えは聞いた事が有るが、ちゃんとした狼の物だった。この子ウルフだけが羊の様に鳴くのはおかしいだろう。個体差にしては異様過ぎる。


「起きたのかレイ。私の子を見てどうかしたのか?」


 レイの視線が子ウルフに向いていると、エンシェントウルフがノッシノッシとやって来た。


「なぁ、お前の子供ってメェーって鳴いたりしないよな?」

「朝から何を言っている。未だ眠気が取れていないのか?」

「いや、今お前の子供の所からそんな鳴き声が聞こえて来たんだよ」

「そんな馬鹿な事がーーー」

「メェェェ〜〜〜〜〜!!」


 エンシェントウルフの台詞に被せる形で、羊の鳴き声が自己主張する。まるで無視しないでと言ってるかの様に。


「……どうやら本当の様だな」

「だろ?」


 流石に目の前で聞かされては信じる他無い。エンシェントウルフも素直に認めた。


「しかしこれは一体どういう……ム?」

「どうした?」


 何か不審な点に気付いたのか、エンシェントウルフが子ウルフを凝視している。


「どうやらこの子が遊んでいる物が原因の様だな」

「それって、あの毛玉の事か?」


 見た所ただの毛玉にしか見えないが、確かに声はその辺りからしている。刺激を加えると羊の鳴き声を上げる玩具か何かだろうか。


「あれはそんな見た目だが、フラッフシープと呼ばれる正真正銘の魔物だ」

「ああ、成る程な」


 魔物ならば生きているのだから鳴いてもおかしく無いだろう。子ウルフが拾って来た事で拠点に入って来てしまった様だ。本格的に結界の見直しか、ウルフ達に変な者を持ち込まない様に言い聞かせる必要が有りそうだ。

 レイが何方にするか考えてる内に、エンシェントウルフが子ウルフからフラッフシープなる毛玉を解放する。毛玉はコロコロと独りでに動き出し、左右に蛇行しながら子ウルフから離れる様に移動して行く。そしてその先には思考中のレイが。

 子ウルフから逃げるのに夢中になってきて気付かなかったのか、毛玉は迷わずレイに向かって突き進み、そしてレイの足にぶつかって止まった。


「ん?」


 足に来た軽い衝撃に考えるのを止め、ボロボロになった毛玉を拾い上げる。ボロボロになっても尚フワフワの触り心地だ。手触り抜群である。

 これは良い品が作れそうだ等と考えながらニギニギと毛玉の質感を堪能していると、毛玉がプルプルと動き出した。本当に生きているらしい。

 掌に乗せたまま観察して見ると、コロコロ掌中を転がるフラッフシープ。しかしさっきと違って逃げている訳では無い。まるで足場を確認してる様な感じだ。

 そして安心したのかピタリと動きを止めると、コロンと反転して頭を見せた。


「メェ〜」


 毛玉から覗かせた顔は、正しくデフォルメされた羊のそれであり、小さいがクルクル巻きになった角が生えているのが分かる。

 しかしやはり魔物だけ有ってか、この羊、ただの羊では無かった。

 何を隠そう、この羊には手足が無かったのだ。

 別に子ウルフによって事前に食い千切られていたとかそういうグロ展開では無く、純粋に手足が存在しないのだ。言うなればこのフラッフシープは、顔と体のみで構成された、某有名なRPGに出て来るスライムの様な姿をしていたのだ。更に言うなら、スマホアプリの某パズルゲームにでも出て来そうである。

 しかし、森を探索し始めてから数年経つが、こんな魔物は初めて見る。見た所温厚そうで特に害になりそうな感じはしない。子ウルフにも一方的にやられていた所を見るに、特殊な攻撃手段も無いのだろう。


「フラッフシープですか。珍しいですね」


 一体どんな魔物なのだろうかとマジマジと見ていると、レイに合わせて付いて来たエストレアがそう言った。


『そうなのか?』

「はい。本来はもっと穏やかな草原等で見られる魔物らしいです。元々攻撃能力の無い魔物なので、こんな場所に居たらあっという間に他の魔物の餌食になってしまいます」

『実際子ウルフに食われかけてたしな』


 尤も当の子ウルフはフラッフシープで遊んでいた様だったが。


「しかし、こんな所に居るのもそうだが、単体でいるのも珍しいな」


 エンシェントウルフがしみじみと言う。


「そうなのか?」

「レイは知らん様だから言っておくがな。その魔物は広い草原に多くの群れで生息している。その数は膨大で、放っておくと草原の草を全て食べ尽くしてしまう程だ」

「そんな大きな群れを作る魔物が一体だけでか……コイツ以外全部お前の子供に食われちまったのか?」

「それは無いな。そもそもこの魔物に食える部分など存在せん」


 曰く、フラッフシープは体積の殆どが体毛で構成されており、肉となる部分はほぼ存在しないという謎生物らしい。ならば一体どうやって生きているのか不思議になるが、それについては知られていないらしい。


「どうせその辺の風に流されて飛ばされて来たのだろう。これはそういう魔物だ」

「メェ〜…」


 エンシェントウルフに見られて怯えるフラッフシープ。その姿は正しく肉食動物を恐れる草食動物のそれだった。

 その様子につまらはそうに鼻を鳴らして、今度はレイの方を見る。


「それで、どうするのだ?」

「どうって?」

「決まっているだろう。それをどうするのかという事だ」


 フラッフシープを見て言う。当の羊は狼さんの餌食にだけはなりたく無いらしい。頻りにウルフを気にしながら少しでも距離を置こうとしている。


「そうだな。一応羊毛は欲しいんだけど、その為にコイツを枷も無しに飼うのもな…」


 こんな見た目でも一応魔物なのだ。何を仕出かすか分かったもんじゃ無い。下手に拠点を荒らされたりしたら堪った物では無い。

 しかしこの手触りの良い羊毛は手放すには惜しい素材だ。貴重な資源、資材として、この羊毛は使える気がする。

 だから出来れば手中に収めて置きたいのだが、その為には要らない事をしない様にしておく必要が有る。


「………」

「どうした?」

「いや、ちょっとな……なあ、魔物って人間の言ってる事が分かったりするのか?」

「なんだ突然。…余程知能の低い魔物だったら無理だろうが、其処の魔物位なら問題無いと思うぞ」

「そうか」


 自分で問い掛けておいて素っ気無く言葉を返すと、フラッフシープをジッと見つめるレイ。


「どうされるのですか?」

『まあ見ていろ』


 暫く見つめていると、フラッフシープもそれに気付いてレイと目を合わせた。クリクリとした黒目しか見えない目は、見れば見る程ぬいぐるみにしか見えない。


「お前、俺の言ってる事が分かるか?」

「メェ〜!」


 まるで頷くかの様にポヨンと跳ねる。この大きさの魔物の脳で理解出来るか半信半疑だったが、流石ファンタジー。何の問題も無かった。


「そうか…なら聞け。今、お前には三つの選択肢が有る。一つは、俺の配下となって家畜として一生を送る事だ。そうすれば俺の言う事を聞き続ける限り、他の魔物に襲われない様にしてやる。自由は無いが、殺される事も無い」


 もう片方の手で人差し指を立てて告げる。何でそんな選択肢が有るのかが分からないのか、フラッフシープは小さく鳴いて首(?)を傾げた。


「次に二つ目。これは、また其処のウルフの下に戻って遊ばれる事だ」

「メェ!?」


 中指を立てながら齎されたとんでもない選択肢に、フラッフシープは驚愕した。途端、先程子ウルフに弄ばれていた時の記憶がフラッシュバックする。

 狼さんの強靭な牙でガブガブされて、何時死ぬのかもわからない恐怖。死にたく無いと何十何百と願ったあの永遠にも感じられる程長く感じたあの頃の記憶が、フラッフシープの脳裏に一瞬で過る。


「まあこれを選んだ場合、ウルフに散々遊ばれた挙句飽きたら殺されるかもしれないけどな」


 ふと、嫌な気配を感じて後ろを振り返った。其処には先程自分を弄んでいた狼さんが、何やら不機嫌そうにフラッフシープを見ていたのだ。御丁寧に小さく唸り声まで上げている。

 無理だ。即座にそう思った。あんな狼さんの下に舞い戻ったりしたら、今度は即座に殺される。絶対にガブガブなんかでは済まされない。

 第二の選択肢は、フラッフシープの中で一瞬にして否決された。満場一致である。


「最後は、その辺に放り出される事だ」


 最後に薬指を立てながら出された選択肢に、フラッフシープは安堵する。取り敢えず、何もされずに自由になれる選択肢は残されていた様だ。


「尤もお前がこんな森の中で放置されたりしたら、数分後には魔物の餌食だろうけどな」

「メェェ〜〜〜〜〜!!」


 幻想はあっという間に破壊された。最初の選択肢以外、最終的には死ぬ運命しか無い。選択肢と言っておきながら、最初から選択肢など無かったのだ。


「さあ、どれにする?」


 どれにするかなんて考えるまでも無い。自分が生き残るにはこれしか無いのだ。


「メェ〜」


 次の瞬間スリスリと体を擦り付け始めるフラッフシープ。目をウルウルさせながらレイの掌にへばり付く様に体を寄せ、フワフワの体毛を押し付ける。その姿はどう見ても、レイに媚を売って生き残ろうとしている様にしか見えなかった。

 我輩にはプライドなどござらん!と言わんばかりの、いっそ清々しいまでの恭順姿勢。フラッフシープが何を言っているのか分からないレイでも、これを見れば一発で分かった。


「宜しい。なら契約だ」


 レイの掌から光が溢れ、フラッフシープを照らす。小心者のフラッフシープが何事かと慌てているが、レイの掌から降りる様子は無い。降りたら危険地帯に放逐されるかもしれないという一種の被害妄想に近い感情が、フラッフシープをその場に留まらせていた。


「お前はこれから俺の配下だ。俺の不都合になる事は俺が許さないし、俺の命令には絶対服従だ。良いな?」


 それは主従契約と言うよりも一方的な隷属を強いる様な内容だった。相手は行動を制限されるというのに、レイにはそれが一切無い。

 完全にレイが優位で、レイだけが得する条件。


「メェ〜」


 しかしプライドを捨て去ったフラッフシープにそんな事は問題では無い。重要なのはこの状況で生き残る事なのだ。それで隷属しようが、行動を制限されようが、生き残るという最大の目的の前では大した問題では無い。本当に清々しいまでの恭順姿勢である。

 フラッフシープが一鳴きすると、光がフラッフシープを包み込み、溶け込む様にして消えて行った。


「これでお前は俺の所有物だ。わかったな、メリー」

「メェ〜」


 安直にもメリーと名付けられたフラッフシープ。喜びを全身で表現するかの様に飛び跳ねたり、レイに体を擦り付けたりしている。


「クゥ〜ン」


 しかしそれとは対照的に、今度は子ウルフの方がショボーンとしてしまった。耳も尻尾も垂れてしまっている。


「悪いな、お前の玩具取っちまって。後で代わりになりそうな物を用意しておくから、勘弁してくれ」

「いや、そういう訳では無いと思うがな…」


 自分の玩具をレイに取られて落ち込んでいると思っていたレイの考えを、エンシェントウルフが呆れ混じりに否定する。


「違うのか?」

「恐らくな。フム…」


 突然何やら考え出したエンシェントウルフ。今の話に思案する要素が有ったのか分からないレイは、取り敢えずメリーを眺めつつ、羊毛の使い道を探る。綿代わりにクッションに入れるも良し、紡績して糸にしてから織物に使うも良しだ。

 化学繊維の無いこの世界では、麻や綿が一般的で、ウールや絹はかなり上質な繊維に分類される筈。少なくともヨダ村においてはウール製品なんて一度も目にしていない。

 あんな辺境の貧乏村が基準になるかは分からないが、少なくとも大きな町で無い限りは基本そうだろう。

 ハウゼン領の首都ハウバーグでも反乱軍は基本ボロい麻の服だったから、相当裕福で無いと着れない程高い可能性すら有る。

 尤もそんな事を抜きにしても、レイの服は村で着ていた麻の服以外は全て革製か毛皮製だ。温暖な拠点の中では暑苦しくて敵わないし、麻の服はもうそろそろ限界が近い。ウールは夏は涼しく冬は温かいとされる素敵素材だ。此処らで衣服をグレードアップして、衣食住全てを安定させるのも良いだろう。


 そんな風に考えていると、考えが纏まったエンシェントウルフがこんな事を言って来た。


「レイ、この子とも契約をしてはくれないか?」

「は?」


 先程との話の繋がりが見えずに思わず聞き返す。確か何故子ウルフが気落ちしているのかという話だった筈だ。


「どうだ?」

「どうだって言われてもな…」


 子ウルフを見る。先程落ち込んでいたのは何処へやら。今は何かを期待しているらしく、尻尾をブンブン振って待っている。


「…別に契約してまで欲しい訳じゃ無いし」


 パキリと子ウルフの動きが止まり、一転して悲しそうに耳と尻尾を垂れた。

 冷たい様では有るが、これがレイの本心なのだ。フラッフシープは上質な羊毛という目的から欲しかったが、子ウルフで特徴的なのは移動の速さと戦闘力位だ。それ位ならレイ一人でも大体事足りるから、態々子ウルフを従える必要は無いのだ。

 それにレイは、基本的にこの方法を好んではいないのだ。其処に明確な理由が有る訳では無い。強いて言えば何と無くというくらいだ。

 だが傍に居る者を無条件で信用する事は出来ない。だからこそ、どうしても傍に置いておきたい場合にのみ使う事にしている。故に、従える必要の無い子ウルフとはあまり契約したくは無いのだ。


「お前こそ良いのかよ。自分の子供を人間と契約させても」


 しかもレイのそれは契約という名を借りているだけのただの隷属である。自分の子供が人間に扱き使われるのを、この母親が許容出来るとは思えない。


「確かに。レイがその辺の人間と変わらぬ愚か人間であったならば、こんな提案をする前に私の爪と牙で引き裂いてやっただろう」

「何気に恐ろしい事をサラッと言うよな」

「事実だからな。しかし此処一年程レイを見ていて分かったが、お前ならば此方から手を出さない限り、お前の方から不当な扱いをする事は無いだろう」

「随分と自信満々だな。違ってたら大惨事だろうに」


 確かにレイは基本的に、何も無ければ何もしない。だから相手が反抗的で無い限りは、力尽くで従える様な真似はしない。

 だが、それを他人が理解するにはそれなりに時間が掛かる筈だ。大まかには把握していても、自信を持って断言するにはそれなりの根拠が必要になる。


「私を誰だと思っている。人間とは生きた時間が違うのだ。その者がどの様な人間がなど一目で分かる」


 何百という時を生きて来た長年の勘。それがレイを認めた最大の理由だった。


「お前になら任せられる。決してお前の方から不当な扱いはしない。私はそう判断した。そしてこの子が望んでいる以上、私に引き止めるつもりは無い」


 迷いの無い真っ直ぐな目でレイを見る。レイもエンシェントウルフと目を合わせるが、嘘を吐いてい無いのは直ぐに分かった。


「…別にお前等が良いんなら良いんだけどな」


 別に配下が増える事は悪い事では無い。レイに攻撃出来なくしておけば襲われる心配は無いし、契約内容がフラッフシープのと同じならレイ自身にデメリットは無い。

 子ウルフの前に立って向かい合う。先程までの話の流れを聞いていたのか、今はまた尻尾を振って待ての姿勢だ。


「俺の配下になれば、もう自由は無いぞ。それでも良いのか?」


 子ウルフは何も言わず、そして目を逸らさずにひたすらにレイを見つめ続けた。

 困惑も躊躇も葛藤も無い。其処に有るのは決意ただ一つ。レイの配下になる決意だけが見て取れた。

 其処まで思っているのであればもう何も言う事は無い。レイは契約魔法を発動させ、子ウルフと契約を結んだ。


「オオオオオオオオオォォォォォン!!!」


 契約が完了すると同時に木霊する、子ウルフの大きな遠吠え。それはまるで主人に捧げる忠誠を表す様だった。


「…煩い」


 尤もレイには伝わっていなかったみたいだが。近くで遠吠えを聞いてしまった所為で耳をやられてしまっていた。どうやら意図しないダメージは攻撃にはカウントされないらしい。


「レイ、朝御飯…」


 後ろから扉がスライドして開けられ、中からミクォラが出て来るなり食事の催促をして来た。耳をペタンと畳んでいる所を見ると、先程の子ウルフの遠吠えはミクォラにもダメージを与えたらしい。


「おう、直ぐに用意する。…っと、何か有ったら呼ぶから、それまでは何時も通りにしていろ」


 食事の用意に入る前に、一応子ウルフにそう命じておく。子ウルフはクキュ〜ンと鼻を鳴らして了承の意を示す。

 それを見たミクォラの耳がピンと立ち上がり、そして探る様にレイと子ウルフを交互に見る。


「ムム…!」


 子ウルフと視線が合うと、其処から何やら感じ取ったらしいミクォラは、直後子ウルフと睨み合った。二人の間でバチバチと火花が散る様子が幻視出来る。


「何やってんだ…」


 その様子を呆れ混じりに見ていたレイは、掌にフラッフシープのメリーを引っ付けたまま食事の支度をする為に家へと戻って行った。

@・(ェ)・@ メェ〜

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