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人嫌いの転生記  作者: ラスト
第一章
27/56

飢饉到来

 今年も収穫の時期がやって来た。ヨダ村では細々と作られる野菜以外は全て麦による収穫で生計を立てている。それは一年の平均気温が低く、乾燥しているこの土地には、下手に野菜を育てるよりも麦を育てた方が実り易いという事情があった。

 下手に実りの良く無い野菜を育てるくらいなら麦を少しでも多く取った方が良い。しかし麦だけでは行商人が滅多に来ないこの村では生きて行けないから、仕方なく少量の野菜を育てているような状態だ。

 勿論レイの家の畑も例外では無く。畑の九割を麦、そして残りの一割をキャベツのような葉物の野菜を育てている。家で出される朝食や夕食に出される麦粥や野菜スープの具材も全てこの畑から採れた物だ。麦は一度に収穫して保存しながら一年掛けて消費し、野菜はこまめに植えては収穫を繰り返している。


 しかし、どうやら今年はそうも行かないらしい。

 今年、レイの家が所有する畑に出来た麦は、その実りがすこぶる悪かった。実は細く、穂も元気が無い。野菜も収穫する前から萎びていて、それでも実がなっていれば良い方なくらいだ。この畑だけじゃ無い。村の全ての畑が同じような有様だった。


「ついに、この時が来てしまったか」


 レイの隣で、父親のランドがそう言った。ヨダ村に飢饉が到来したのだ。


 ーーー


 飢饉が起こる。そう村に情報が行き渡ってから、家での食事は今までに類を見た事の無いレベルで酷い物になっていた。麦粥の麦の量が半分近く減り、野菜スープは野菜が一欠片でも入っていれば御の字というレベルだ。これは本当に人間がする食事なのかと疑いたくなるような状態だった。飼料に穀類やトウモロコシ等が使われる事のある地球の家畜の方がまだマシな物を食べているかもしれない。

 それでもピグマが消えた影響が抜け切ってないお蔭で税収が以前よりもマシになったので、まだマシな方だろう。この状態で収穫の半分以上を持って行かれたら、レイの家は確実に餓死者が出ていた。

 無論この程度の量では腹が満たされる筈が無い。前の時点でそうだったのだから当たり前なのだが、そうも言ってられない。食料が無くなれば、後は飢えて死ぬだけなのだ。我慢するしか無い。

 それに、レイの家だけが酷いわけでは無い。飢饉が起こるとなってから、どこの家も食事量を抑えてギリギリ冬を越えられるようにしているのだ。故に食べたい盛りの子供達は欠食児童と化して毎日腹を空かせていた。


「あ〜、腹減った」

「言うなよ。意識すると余計辛くなる」


 フレッドのボヤきをレイが咎める。


「だってよ〜、本当に腹減ったんだからしょうがねえだろ」

「俺だってそうだよ。……それでも、お前ん家はまだマシな方だと思うけどな」


 フレッドの家はヨダ村の中でも特に裕福な家庭だ。フレッドの父親が死ぬ前には、飢饉に備えてある程度食料を備蓄していたそうだし、それ等はいざという時には出来る範囲で村の人達と分け合ったりする事もあるという。

 父親が死んだ所為でその備蓄にも余裕が無くなっているみたいだが、それでも冬を越すには問題無い筈だ。

 少なくともレイの家よりはマシである。昨日食べた野菜スープなんて、ほんの少しの塩と野菜で出汁を取っただけの唯のお湯である。人間の取る食事だとは思えない。


「それに、今回ので一番ヤバい状態になってるのはコニーの家だろ」


 コニーの家の畑はその殆どが実らずに枯れてしまっていた。備蓄が無ければ、先ずこの冬は越せないレベルだ。恐らく村の中で最も影響が出たのはコニーの家で間違い無いだろう。ネリーも空腹で元気が無いのか、先程からコニーの服を掴んで身を寄せている。


「そのコニーとネリーが我慢してるんだから、お前も少しは我慢しろ」

「お兄ちゃん。お腹空いた」

「お前もかよ…」


 言ったそばからこれである。もう少し人の話に耳を傾けて欲しい物だ。


「き、気にしないで。大変なのはどの家も一緒だから」

「そーだそーだ。一々気にするなよレイ」

「お前は気にしなさ過ぎなんだよ。少しは周りに気を使え」


 何時ものレイとフレッドのやり取りを、他の皆は楽し気に眺める。空腹になっても、彼等のやる事に変わりは無かった。


 そう、無かった筈だった。


 事は夕方、真っ赤な空に照らされてそろそろ解散となる頃合いだった。


「あのさ。僕、皆に言わなくちゃならない事が有るんだ」


 突然、コニーがそう切り出した。先程までの話題を無理矢理変える言い方に、その場にいる全員が何事かとコニーを見る。


「ん?何だよ急に」


 代表するような形でフレッドが問い掛ける。コニーはまだ若干迷っていたようだが、意を決して口を開いた。


「……実は僕達。もう直ぐこの村を出る事になったんだ」

「………え?」


 その言葉が誰の口から出たのかは定かでは無いが、少なくともコニーとネリー以外の全員がそう思ったのは間違い無い。


「……それはつまり、数日中にも他の場所に移り住むって事で間違い無いのか?」

「うん、そうだよ」


 特に何か感情が篭っている訳でも無い、当たり前のようにコニーはそう答えた。

 いや、そうしようとしているのだろう。幾ら誤魔化そうとも、色んな人の表情を見て来たレイにはコニーの表情にほんの少し陰りがあるのが直ぐに分かった。


「……何でだよ。何で出て行くんだよ」


 フレッドの口から出た言葉は、まるで心から絞り出す様な声だった。コニーは軽く俯くと事の経緯を説明した。


「僕の家の畑が酷い状態なのは知ってるよね」

「殆ど収穫出来る物が無いくらいだって事くらいはな」

「私も知ってる。お父さん達がコニーのお父さんとそんな話をしてるのを聞いたよ」


 この様子だと、恐らく村中に知れ渡っているだろう。コニーは一つ頷いて話を続ける。


「それでこのままじゃ冬を越せないからって、村の皆に食べ物を分けて貰おうとしたんだけど。それでも冬を越せそうには無いんだって」


 この飢饉の状態で他人に食べ物を配る程の余裕のある家は殆ど無い。フレッドの家のように毎年備蓄していたとしても、何が起こるか分からない状況下でそれ程多く分けたりは出来ないだろうから、恐らく節約しても数日中には無くなる程度の量しか手に入っていないのだろう。


「だったらまだ食べ物の残っている今の内に、どこか大きな街に移り住むんだって。街だと麦を育てる以外にも仕事があるらしいから」

「必ずしも職にあり付けるとは限らないけどな」


 そうなれば何方にしろ餓死してしまう。


「それでもだよ。ここに居たって何もお腹が空いて死ぬのを待つだけなんだし」

「どうせ死ぬならって事か」


 コニーは何も言わなかった。ただ優しく笑うだけ。肯定と取って良いだろう。


「おい!何でそんなに落ち着いてんだよ!?コニーとネリーが居なくなっちまうんだろ!?」


 唾が飛ぶ勢いで怒鳴るフレッド。去年のジムと父親の死があってからというもの、フレッドはその手の話に過敏に反応するようになった。あの時のトラウマは未だ治っていない。今回もコニー達が居なくなるという事に反応してしまったようだ。


「落ち着けよフレッド。お前だっていつか村を出て冒険者になるって言ってただろ。自分は良くて他人は駄目だなんて理屈は通らないぞ」

「そ、それは……!」


 反論が出て来なくて尻すぼみになるフレッド。特に深く考えずに言っていたのだろう。今更ながらにそれを再確認して、レイから溜め息が漏れる。


「別に俺だって何も思って無い訳じゃ無い。コニー達が死んでも行きたく無いって言うなら少しは考えたかもしれないけど、コニーの様子を見る限りそうじゃ無いんだろ?」


 コニーを見てそう言うと、コニーは小さく頷いた。


「うん。最初はね、僕もネリーも嫌だって思ってたんだ。でもお父さんとお母さんがいつも村中に頭下げて居るのは知ってたから。そんな二人に謝られちゃったら、どうしても言えなくって」


『ごめんなさい』

 そう母親が涙ながらに言ったそうだ。両親の苦労を知っていた事と、その両親が自分達に辛い思いをさせる事を承知でいる事も相俟って、元から気の弱いコニーはそれ以降我儘を言う事が出来なくなってしまっていた。


「何だよそれ!そんなのお前の気持ちじゃ無いじゃんか!父ちゃんと母ちゃんに言われて、仕方なく従ってるだけじゃんかよ!」

「ううん。これは僕が決めた事なんだよ」


 そう言って、コニーはその考えに至った理由を述べる。


「僕達が貴族に連れられて森に入った後。お父さんもお母さんも、凄く心配してたんだ」


 その時の顔は、怒りとか安堵とか、兎に角色んな感情が綯い交ぜににった顔だったと言う。


「本当はすっごく怒られると思ってたから。逆に悪い事しちゃったなって気分になっちゃって。その時思ったんだ。僕はもうこれ以上、お父さんとお母さんに心配掛けないようにしようって。逆に、次は僕がお父さんとお母さんを助けられるようになろうって」


 その顔は普段の自身無さ気な物とは違って、確固たる思いを胸にした物だった。


「じ、じゃあネリーはどうなんだよ!?」

「ちょっと、フレッド!」


 ネリーの気持ちを既に理解しているのか、イルマがフレッドを諌めようとするが、フレッドは止まらずに捲し立てる。


「ネリーは俺達と離れ離れになっても良いのかよ!?」


 ネリーはコニーの話が始まってからというもの、ずっとコニーの服を掴んで俯いていた。その顔は明らかに、この話をしたく無いと言っていた。

 それが何となく分かったからなのだろう。フレッドがネリーに狙いを変えたのは。


「……嫌だよ。皆と離れ離れになっちゃうなんて」


 案の定、ネリーは嫌だと答えた。光明が差したと言わんばかりにフレッドの表情が一瞬明るくなる。


「だったら「でもーーー」」


 しかしフレッドの言葉を遮って、ネリーは顔を涙でくしゃくしゃにしながら言った。


「お兄しゃんと、お父しゃんと、お母しゃんと離れ離れになるのは、もっと嫌だから……」

「ッ!!」


 家族というのは人生で最も長く時間を共にする共同体だ。余程酷い家庭環境で無い限り、優先順位は他のそれよりも高くなるのは当然の事。

 ネリーだって友達と離れ離れになるのは嫌な筈だ。しかしそれ以上に家族の方が大事なのだ。

 嗚咽を上げながら言われたその言葉の意味を知ったフレッドは、何も言う事が出来なかった。


「ネリーちゃん!行っちゃヤダよーーーーー!!」

「ユニスしゃん………う、うぅ……!ううぅぅぅ〜〜〜〜〜!!」


 共に抱き合って泣き出すユニスとネリー。それにつられるような形で、エリックがひっそりと涙を零す。

 重苦しい無言の時間が流れる。誰もがコニーとネリーに行って欲しくは無いが、それを止める言葉が無いのだ。ネリーは兎も角、コニーはもう自分の中で確かな答えが出ている顔だ。引き留めるのは容易では無いだろう。だからユニスも嫌だとしか言えないし、ネリーもそれに対して謝る事しか出来ない。

 このまま暗い感じで解散となると思われたその時、イルマが一歩前に出た。


「だったら、街に行っちゃう前に。うんっと遊んで置かないとね」


 突然何を言ってるんだと言わんばかりに、全員がイルマを見る。ユニスとネリーも嗚咽を上げながらもイルマを見ていた。


「遊ぶって、それどころじゃ無いだろ。コニーもネリーも、もう直ぐ居なくなっちまうんだし…」

「だからよフレッド。こういう時だからこそ、今のう内に目一杯遊んで、沢山思い出を作って置くのよ」

「意味わかんねーよ。離れ離れになるのに思い出なんて作ったって辛くなるだけだろ。今だってそうなのに」

「うん。私もね、この前まではそう思ってたの」


 イルマは全員に言い聞かせる様に語り出す。


「私もこの前までは、いつまで皆と一緒に居られるのかなって思ってたの。フレッドは昔から冒険者になるって言ってるし、レイもいつか出て行くって言ってたし」


 今までこの場の誰も知らなかったレイが出て行く事に、話題の中心だった筈のコニーも含めて全員がレイを見る。ユニスなどまた泣きそうになっているくらいだ。


「でもね、レイが教えてくれたんだ。いつか別れちゃうなら、それまでに沢山思い出を作って置けば、別れる時に寂しくなっても悲しくは無いって」

「……やっぱり意味分かんねー。寂しくなったら悲しくもなるだろ、普通」

「悲しいって感じるのは、思い出が少ない証拠だ」


 イルマの代わりにレイが補完する。


「やり切って無いから、一緒にやって来た事に満足出来ないから、それを満たしたくても出来ないから悲しくなるんだ。やり切らずに後悔するくらいなら、燃え尽きるくらい全力で遊び尽くせば、それ程悲しくもならないだろう。例え離れ離れになったとしても、その時作った思い出が、ずっと記憶に残り続ける」


 最後に言ったその言葉は、この場にいる全員に響き渡る様に浸透して行く。


「それじゃあまた明日、皆んなで一緒に遊ぼ。ね?」


 イルマの提案に、横槍を入れる者は居なかった。フレッドを除く全員が、コニーをここに留まらせる事は出来ないなら、せめて少しでも思い出を作りたいと思ったからだ。

 それから数日の間、レイ達は今まで以上に遊び、盛大にはしゃぎ回った。空腹で辛い状態でも構わずに少しでも多くの思い出を作れるように。

 最初はあまり納得して無かったフレッドも途中からは誰よりも大騒ぎしていたし、嫌だ嫌だと駄々を捏ねていたユニスなんかは最初から大はしゃぎだった。


 そして数日後、コニー達が村を出る日がやって来た。その日は前日に行商人が来ており、コニーの家族はこれに便乗して行くつもりのようだ。

 見送りにはコニー繋がりで仲の良かったレイ達とその親が来ていた。飢饉で生活が苦しい故に餞別は渡せないと申し訳無さそうにコニーの両親に頭を下げているが、生活が苦しいのはお互いようなのだからしかたない。コニーの父親もそう言っていた。

 親達が会話をしている横では、子供達がコニーとネリーに見送りの言葉を送っている。


「コニー、ネリー。街に行っても、私達の事忘れないでね」

「ネリーちゃん、元気でね」

「二人共、向こうでも頑張ってね」


 出て来る言葉は在り来たりな物だが、子供なのだからそれへ当たり前だ。コニー達もありがとうとかしか言っていない。


「コニー………やっぱり行っちまうのか?」

「うん。僕が自分で決めた事だからね」


 フレッドは未だコニー達の事を諦め切れていないようだ。無理も無いだろう。七歳程度の子供には、別れの経験は重過ぎる。

 それでも、フレッドは涙で潤む目で確りとコニーを見据えていた。


「じゃあ、いつか絶対に帰って来いよ!約束だからな!」

「フレッド……うん、約束するよ。いつかきっと帰って来る。だからそれまで、フレッドも元気でね」


 コニーにそう言われて涙腺が崩壊したフレッド。泣き顔を見られないように顔を伏せて腕で覆う。本人はこっそり拭っているつもりなのだろうが、全然隠せていない。

 そんなフレッドの代わりに、レイが前に出る。


「まあ別に一生会えないと決まった訳でも無いんだ。生きてさえいれば、いつか会えるだろ」

「うん、それもそうだね。それににしても、やっぱりレイはいつもそんな感じだね」

「……それは褒めてるのか?」

「勿論褒めてるんだよ。だって僕はそんなレイみたいになりたくて外に出る事を決めたんだから」


 これにはレイも軽く驚いた。自分の行為は少なからず誰かに影響を与えているだろうとは認識していたが、憧れる者が出て来るとは思わなかったのだ。


「そんなに格好良い事をした覚えは無いんだけどな」

「そんな事無いよ。レイは僕達が迷っていたら、いつも道を示してくれたよ。皆んなで集まって遊ぶ時も、どうしたら良いか分からない時も。帰らずの森でウルフに襲われた時だって、僕達を逃がす為に、最後には両腕に大怪我をしてまで助けてくれて。そんなレイの事、僕はすっごく格好良く見えたんだ」


 コニーも英雄に憧れるお年頃なのだろう。ウルフから自分達の命を救ったレイの行動は、コニーからすれば勇者や英雄のように思えたのかもしれない。


「そうか。なら悪い事は言わないから、俺のようになるのは止めておけ」

「え?ど、どうして?」


 突然の拒絶とも取れる発言に、コニーが軽く狼狽える。


「俺のようになったら、仲間の死を悲しめない薄情者になってしまうだろ」

「あっ…!」


 ジムが死んだその日、レイは悲しむ素振りすら見せず、それが原因でフレッドと言い争ってしまった。泣かない強さも時には必要だが、それだけでは冷たい奴だと思われてしまう事もある。

 途端にその事を思い出したのだろう、思わずと言った感じでコニーから声が漏れた。次いで苦い表情になってしまったので、適当に『気にするな』とだけ言っておく。


「前にも言ったけど、泣く事は必ずしも弱さになる訳じゃ無い。もしお前が俺に憧れているのなら、俺の良い部分だけを真似るだけにしておけ。態々悪い所まで真似する必要なんてどこにも無いだろ」

「……うん、分かったよ。でも覚えておいてね。レイが頑張ってくれたから、僕達は今も生きているって事」

「あぁ。出来る限り覚えておこう。…向こうでは上手くやれよ」

「うん。レイも頑張ってね」


 二人は固い握手をする。コニーの細腕からは農作業で鍛えられたのか、見た目よりかは力が感じられた。


 そして別れの時、コニーとネリーを荷台に、母親を御者台に乗せて、行商人の馬車が出発した。スペースの都合上父親の方は歩きのようだが、それでも最低限の荷物を乗せられるだけマシだろう。食料を消費すれば、その内乗れるようになる。

 遠ざかって行く馬車に向けて、見送り組が手を振る。向こうからも手を振り返してくれているようだが、もう大分遠くまで行ってしまって良く見えない。

 そして馬車が見えなくなり、チラリとレイが横を見ると、フレッドが振っていた手を下ろして自分の顔を拭っていた。


「レイの嘘吐き。メチャメチャ寂しいし悲しいじゃんかよ」

「……そうかよ」


 フレッドの愚痴に、ただそれだけ答える。友だちとの別れなのだから、少なからずそう思ってしまうのは仕方ない事なのだ。レイがやったのは、飽くまで辛さを和らげる程度の物でしかない。


「その割には、言う程辛そうには見えないけどな」


 フレッドは涙を流しはしても、号泣する程泣いてはいなかった。イルマもエリックもそうだし、唯一号泣しているユニスが母親の服にしがみ付いて泣いている程度だ。コニーが村を出る事を明かした日に、重苦しい空気のまま解散していたら、今頃皆んなして泣いていそうな空気だったのに比べれば、それだけでも十分効果はあっただろう。

 レイの言葉に、フレッドは『煩え』とそっぽを向いた。

これにてコニーとネリーが脱落。

レイが村を出る迄に何人残ってるやら……

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