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人嫌いの転生記  作者: ラスト
第一章
22/56

反乱の後は熊肉で

 時は遡り、まだ屋敷の外で戦闘が繰り広げられていた頃。ピグマの子供達はそれぞれ使用人に起こされ、秘密の抜け道から街の外へ脱出しようとしていた。

 使用人達はそれぞれハウゼン家に勤める従者の家系で、兵士達が不利になったのを見て、万が一の為にと子供達を逃す事にしたのだ。大した忠義である。

 当然ピグマにも進言したのだが、扉越しに断固拒否され、せめて子供達だけでもという事になった。


「ハァ、ハァ。おい、まだなのか!?」


 領主の息子、ピースが息を切らしながら不平を述べる。無理も無い。この抜け道は街の外へと続いている。ハウバーグ程の都市になれば当然、街から出るまでの距離も長くなる。普段から碌に体を動かしていなかったピースで無くても疲れは出るが、体力の無いピースはそれが顕著だった。


「もう少しで御座います。それまで辛抱して下さいませ」


 先頭を行く従士長の男がピースを宥める。初老を超えた体にはこの距離の駆け足は中々に堪える物があるが、そんな事で泣き言は言えない。領主の息子ピースとその妹ステアリーナは子供で、もう一人はステアリーナの世話係の女中、つまり女だ。年老いたとは言え男である彼が真っ先に音を上げる訳には行かない。薄暗い洞窟を手にしたカンテラで道を照らしつつ、申し訳程度に舗装された道の安全を確保しながら進んで行く。


 暫くして、彼等は漸く外に出られた。出口はハウバーグから数百メートル離れた森の中だった。従士長が後ろから追っ手の気配が無いのを確認して、一先ず休憩を入れる。


「全く。どうしてこの俺様が逃げなければならないんだ」


 貴族こそが絶対だと信じているピースには、平民から逃げるという事が理解出来ないのだろう。勿論、その平民に殺されるかもしれない事も。

 その点においてはまだステアリーナの方が分かっている。流石に地べたに座るのは嫌らしく立ったまま休憩しているが、頻りに後ろを気にしている。追っ手が来ないか警戒しているようだ。どうやら以前のウルフに襲われた事件以来、大分臆病になっているようだ。


「もう少し進めば馬を繋ぎ止めている場所に到着します。それまでどうかご辛抱下さい」

「嫌だ!大体何で逃げる必要があるんだ!?平民なんて所詮父上の雇った兵士達が居れば、直ぐに全員殺せるような貧弱な奴等だろ!」

「勿論で御座います。ですが、奴等は人数の大半を足止めに使い、その隙に少数が屋敷に入り込んだようなのです。ハウゼン家の兵士が本気を出せば直ぐに鎮圧されるでしょうが、その間に坊っちゃま達にもしもの事があってはならないのです」


 敢えて相手の話に同意してから説得する。流石は従士長だけあって、ピースのような相手への対応も手馴れている。


「ですから反乱が鎮圧されるまでの間この先の馬の居る場所に隠れ、万が一敵がここまで追って来たら兵が追い付くまで馬に乗って逃げて頂きます。この防衛網を掻い潜って来るような輩に、私達では歯が立ちませんので」

「何を言っている。平民なんて俺様の魔法に掛かれば楽勝だ」


 ウルフに襲われた事件では恐怖の方が勝って使えなかったが、ピースもステアリーナも貴族の子である為魔法の教えを受けている。

 と言うか、魔法が貴族のステータスとなっているので、魔法が使えなければ周囲から舐められるので、貴族は基本的に顔や身分の他に魔法の素養がある者と結婚する事が多い。

 とは言えまだ覚えたての状態、実戦で使うには実力が足りないのだが、例の事件を生き残った事で自分は強くなったと錯覚しているようだ。妹とは真逆の反応である。


「だったらお兄様だけ戻れば良いじゃないですか」


 そしてその妹のステアリーナは一人だけ戦おうとする兄を冷めた目で見ながらそんな事を言った。ウルフの事件で見捨てられて以来、ステアリーナのピースへの態度は常に冷え切っていた。


「何だよ。まさかお前まで怖気付いたのか?」

「お兄様こそお気は確かですか?何で私達が危険を冒して戦わなくちゃ行けないんですか?そんな事は兵士に任せて私達は安全な場所に居れば良いと仰ったのはお兄様の方ですよ」

「う…う、煩い!お前に言われなくても分かってる!もう行くぞ!」


 図星を突かれ、ピースは誤魔化すように休憩を止めてると一人ズカズカと先に行ってしまった。流石に貴族の長男を一人にしておく訳には行かない。そう従士長に頼まれて仕方なくステアリーナも休憩を切り上げて後を追う。

 しかし結局ピースに追い付けないまま、目的地が直ぐ側に来ていた。


「一体何処に行ってしまわれたのか」

「あのお兄様の事だから、今頃一人馬に乗って逃げたんじゃないのかしら?自分が危険になれば真っ先に逃げ出すような臆病者ですし」


 既に一度似たような目に遭っているステアリーナには、寧ろそうとしか思えなかった。


「私達も急ぎましょ。お兄様が誤って馬を全部逃がしていたら大変よ」


 そうは言うが、目的地は直ぐそこだ。少し先に見える茂みの向こうがその目的地だ。


「止まって下さい」


 茂みの手前で、従士長が止める。そして周囲を見渡して顔を顰める。


「おかしい。予定ならこの辺りで馬の番をしている者達が居る筈なのですが」


 しかし周囲には人影も無い。勿論ピースの居る気配も。


「本当に居るの?誰も見当たらないじゃない」

「ええ。先に来ている筈のピース様もいらっしゃらないようです」

「やっぱり先に逃げちゃったのよ。そんな事より私はどうすれば良いの?」


 兄の事なんてどうでも良い。先ずは自分が無事である事が重要だった。


「ああはい、お嬢様にはこの先の馬の側でいつでも移動出来るようにしていて下さい」

「その馬がまだ居れば良いのだけれど」


 そう言いつつ茂みの向こうを覗くと、確かにそこには馬が居た。

 しかしその馬は全員体のどこかしらを食い千切られて死んでしまっていた。


「…ぇ?」


 その光景に固まるステアリーナ。直ぐ近くからグチャグチャと不快な音が聞こえ、無意識にそこに視線が吸い寄せられる。

 そこには大きな熊の魔物が居た。以前襲われたウルフよりも遥かに大きいその熊は、深夜の森の中でも近くで見ればその大きさがよく分かる。

 だがそんな事を思っている場合じゃ無い。馬は全てこの熊の魔物に襲われて死んでしまっている。このままでは馬に乗って逃げる事は出来ないし、それ以前に熊の魔物に見付かったらそっちの方が危険だ。

 幸い熊の魔物は先程から何かを食べていてそちらに夢中だ。殺した馬でも食べているのだろう。

 今の内に逃げなければ。そう思って下がろうとしたその時だった。視界に映ったそれは、熊の魔物が食べてる物の正体。


 苦悶の表情で死んだ兄だった。


「ッ!?」


 思わず叫びそうになったのを咄嗟に手で口を覆い防いだが、その時急激に後ろに下がった所為で周囲の草がガサガサと音を立ててしまった。

 音に反応した熊の魔物が頭を上げ、瞬間、魔物と目が合った。


「ガァァァァァォォォーーーーー!!!」


 方向と共に立ち上がる。三メートルを軽く越すであろう熊の魔物が、ステアリーナ一同の目の前に立ちはだかる。


「ジャイアントグリズリー!?何故こんな街の近くに!?」


 驚愕する従士長だが、今はそれどころでは無い。ジャイアントグリズリーの近くには、尻餅を着いたステアリーナが居るのだ。女中の方はステアリーナと同じく怖気付いて助けに行ける状態では無い。


「お嬢様!お逃げ下さい!」


 そう言ってステアリーナを助けようと駆け寄る従士長。しかしジャイアントグリズリーが目を付けたのは、ステアリーナでは無く、大声を出して近寄って来る従士長の方だった。

 ジャイアントグリズリーの丸太のような太い腕が横薙ぎに振られ、従士長に直撃。従士長は木に叩き付けられて意識を失った。

 それを見ていたステアリーナはいよいよ恐怖で動けなくなった。ウルフの時にも感じた、いやそれ以上の恐怖に足が竦み腰を抜かしてしまっていた。

 従士長はやられ、女中も恐怖のあまり失神してしまっている。そしてステアリーナは恐怖で動けず、また錯乱していて魔法を使う事も出来ない。

 ジャイアントグリズリーが腕を振り上げる。状況は完全に詰んでいた。


 ーーー


 一歩その頃、宝物庫を出たレイは早速ポーションを飲もうと手に持った瓶に目を向ける。

 青汁よりも濁った緑色をした液体は揺らすとドロッとした揺れ方をする。


「なあ、これ本当に飲める物なのか?」

「まあ、味は酷いみたいだけど、ちゃんと効くから大丈夫だよ。見た所結構良いポーションみたいだし、問題無いと思うよ」


 今度は蓋を開けてみる。開けた途端、蓋の中から雑草の汁の様な青臭い臭いが鼻を突いた。その他にも土や泥みたいな臭いが混じって、子供が悪戯で作ったと言われても納得してしまいそうな程酷い物だった。


「なあ、これ本当に飲んで大丈夫なんだよな?」

「往生際が悪いぞ。大丈夫と言ったら大丈夫なんじゃ。さっさと飲まんか」

「そういうならお前も少し飲めよ」


 そう言うと明らさまに嫌そうな顔をして顔を逸らした。大丈夫だとしても飲みたい物では無いらしい。

 しかしそんな事が分かったからと言ってどうこう出来る訳でも無い。飲まないと明日の生活に支障を来たす。途轍もなく不味そうなポーションを飲むか、明日の畑仕事を精神的に疲弊した状態でやるのか。実に嫌な二択が天秤に掛けられる。


「はあ、仕方ないか」


 暫く考えて、レイはポーションを飲む事を選択した。鼻を摘んで目を瞑り、深く深呼吸。そして一気に飲み干した。


「うえっ、不味い…!」


 思っていた以上に酷い味だった。臭いそのまま、草の汁を擦り潰した物に色々と体に悪そうな物を加えたような味だ。直ぐさま【アイテムボックス】から水の入った小さい壺を取り出して飲む。

 ある程度水で押し流せたが、それでも若干青臭い感じが残った。


「これは寝る前に何かしら軽く摘んでからじゃ無いと駄目だな」


 テンションだだ下がりの上にこんな青臭い感じが残っては、到底一日を終えられる気にはなれなかった。


「さて、帰るか」


 取り敢えず街の外に出る為に、予め決めておいた転移地点の周囲に誰もいないか確認してから飛ぶ。

 既に外壁の炎は鎮火し、街の騒動の声もこれだけ離れていれば聞こえて来ない。

 しかしそんな森の中に飛んで来た瞬間、遠くから獣の唸り声が聞こえて来た。


「何だ、近くに魔物が居たのか?」

「あの鳴き声、恐らくジャイアントグリズリーの物じゃろう。こんな街の近くにジャイアントグリズリーが生息しているとは珍しいな」

「まあ、そんな事は俺達には関係無いけどな」

「眠い〜」


 今はポーションの所為でテンションが最低値に振り切っているのだ。フラムもお眠のようだし、幾ら珍しいとは言え、たかが魔物に構う気は無かった。


「そうか?ジャイアントグリズリーの肉はかなり美味いと言われておったのじゃが、それでは仕方ないの」

「お前等、今日は熊肉パーティだ!」

「クマにく〜!」


 ティエラが何気無く言った美味い肉につられて、レイの殺る気が一気に上昇。序でにフラムも乗り気になった。


「お主等、さっきまで帰る気満々では無かったか?」

「最近似たような食感ばかりで飽きて来てたんだ」


 今まで見付けた帰らずの森の魔物の肉は大概食した事のある物ばかりだ。別に美味い肉もあるから問題無いのだが、やはり人間慣れて来ると更に欲が出る物で新しい美味さと聞いて無性に食べたくなったのだ。


「それにポーションで落ちたテンションを新しい美味さで回復させたいんだよ。全部ポーションが全部悪い」


 何という責任転嫁。ティエラも呆れて物も言えない。


「それじゃ、さっさと仕留めて熊肉パーティだ。行くぞ」


 レイは身体強化をして鳴き声のした方へと走った。乱立する木々を避け、その間を縫うようにして駆け抜ける。途中でフードが取れるがそんな事は気にしない。どうせこんな真夜中の、しかもジャイアントグリズリーという如何にも凶暴そうな魔物の近くに人なんていないだろうし。


「熊肉見っけ!」


 暗闇の先、薄っすらを見えた大きな影に突進、ジャイアントグリズリーの頭に跳び蹴りを叩き込んだ。

 三メートルを超える巨体が宙に浮き、木々を薙ぎ倒しながら吹っ飛んで行く。

 レイはジャイアントグリズリーを蹴ったその場で宙返りし、フワリと着地する。地球にいた頃なら絶対出来なかった事だが、身体強化した今なら余裕である。


「あ、貴方は!」


 ふと、後ろから声が聞こえた。振り返ると、いつぞやの貴族の娘ステアリーナが尻餅を着いてレイの事を見上げていた。


(ああ、そう言えばコイツ街から逃げてたっけ)


 こんな所で出会すとは、先程の慢心は見事フラグとして回収されたらしい。それはもう見事なまでの高速フラグ回収である。


「グルアァァァ!!」


 ジャイアントグリズリーが飛ばされた場所から戻って来た。その様子は明らかに激昂していて、攻撃して来たレイしか見えていない。そしてレイも後ろのステアリーナ達の事など眼中に無く、目の前の魔物クマにくしか見ていない。


「レイ、ジャイアントグリズリーの筋力は人間よりも遥かに上じゃ。接近される前に仕留めるのじゃ」

『言われなくても分かってる』


 レイは無詠唱で【重力操作グラビティコントロール】を発動する。しかし今回の対象は自分にでは無く、レイに向けて突進して来るジャイアントグリズリーの方にだ。

 重力の影響を受けなくなったジャイアントグリズリーの足は地面を離れ、急に体が宙に浮いたジャイアントグリズリーは体を制御出来ずにもがく事しか出来ない。


「無詠唱ですって……!?」


 ステアリーナが唖然としているが、そんな事は無視して【不可視の刃(エアーカッター)】でジャイアントグリズリーの首を刎ねて終了。見た目の割にあっさりとした最期であった。

 血抜きは後でするとして、取り敢えず【アイテムボックス】にしまう。これにて熊肉の確保は完了である。後はこれをどう料理するかだ。


「待ちなさい!」


 やはり最初はステーキか、それとも日本でも知られている熊鍋が良いかなどと考えながら帰ろうとすると、後ろからステアリーナの声がした。折角今良い気分なのにと思いつつ渋々、本当に渋々振り返る。

 ステアリーナは何かを決意したような顔でレイを見据え、そしてレイを指差してこう言った。


「貴方、私の側近にしてあげても良くってよ!」

「………」


 コイツは何を言ってるんだ?そう思った。


「レイ、何か凄い白けた顔してるけど大丈夫?」


 顔にも出ていたらしい。シエルに心配までされてしまった。


『気にするな。目の前の馬鹿がふざけた事を言ってるから呆れてただけだ』


 レイが精霊と会話している間にも、ステアリーナはセールストークと言わんばかりにツラツラと言葉を並べていた。


「私はステアリーナ=ハウゼン。誇り高き伯爵家の娘よ。私に従えばあんな辺境の村で飢えて暮らす必要も無いし、将来は私のお付きとして栄誉ある人生を送れるわ」


 その伯爵家の当主が既に首だけになってしまっているのだが、最悪没落の可能性すらあるのにそんな夢見心地な事を言ってて大丈夫なのだろうか。


「貴方はその年でそれなりに魔法が使えるようだし、どうしてもって言うのなら私が雇って上げても良くってよ!」

「いや、結構だ」


 勿論そんな上から目線な言い方されても受ける訳が無く、即行で話を切り捨てて空を飛ぶ為の準備に入る。


「ちょ、ちょっと待ちなさい!貴族の私がチャンスを与えてあげてるのに、何でそれを断るのよ!」


 権力を笠に着てキーキーと喚き立てるステアリーナ。あの親にしてこの子ありである。


「貴族?じゃあその誇り高き伯爵家の娘は、こんな時間にこんな所で何をやっているんだ?反乱の起こった屋敷から逃げて来たんじゃないのか?」

「それは…もう時期私の家の兵が逆賊を全員討ち取るわ。私達はそれまで屋敷から安全な場所に離れているだけよ!」

「どうだかな。仮にそれが出来たとして、領民から金や食物を搾り取った挙句反乱を起こされるような貴族が繁栄するとは思えないけどな」


 既に領主は討たれ、帰ったとしても今までの暮らしには戻れないだろう。ステアリーナの年では領地運営なんて出来ないだろうし。良くて別の家の養子、悪ければ今直ぐ領民達に捕らえられて殺される。


「そもそもお前は、今回の反乱が何で起こったのか理解してるのか?」

「そんなの、平民が私達貴族に楯突いたからに決まってるじゃない」

「俺が言いたいのはその原因の方なんだけどな。平民だって貴族と同じ人間だ。自分に利があれば従うし、不利益になるなら従わないし、無理矢理言う事を聞かせようとして来たら歯向かう奴も出て来る。言ってしまえば今回の反乱は、お前の家が平民を人間として扱わなかったから起こった。たったそれだけの簡単な事だ」

「それじゃあ貴族は平民に尽くせと言いたいの?そんなの奴隷と変わらないじゃない!」

「実際そんなものだろ。極論としては、貴族なんて所詮平民の代表でしかない。代表が務まらなければ、辞めさせられるのは当たり前の事だ。それともお前は平民の為に何かしてやったのか?」

「それは…」


 ステアリーナは答ない。答えられない。もし彼女にそんな事が出来ているだけの人徳があるのなら、ピグマの横暴を放っておける筈が無い。


「もしお前が本当に誇りある貴族だと言うなら、せめて周りからそう言われるようになってからにしろ」


 そう言ってレイは魔法を発動。体に風の膜を纏うと共に、後ろで騒ぐステアリーナを無視して両足からジェット噴射の如く突風を発生、大空へと飛び立った。


「全く、あの女の所為で無駄に時間を浪費した」

「その割には随分細かく指摘しておったではないか。女子相手に甘くなったか?」

「馬鹿言え。アイツがくだらない事で喚き立てるから言い返してやっただけだ。何でも自分の思い通りになると思い込んでるあの態度は腹が立って来るからな」


 もしあれ以上実力行使や権力で脅して言う事を聞かせようとして来るなら、恐らくレイは躊躇い無く首を刎ねていただろう。それをしなかったのは言い返しただけで言い負かされるステアリーナの姿を見て幾分かスッキリしたからだ。


「兎に角、これで暫くは村も安全になるだろ。後はお待ちかねの熊肉を食って寝よう」


 そう言って速度を上げるレイ。月明かりが照らす静寂の中、レイはこの後食べる熊肉料理に想いを馳せるのだった。

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