風が吹く
突然強い風が吹き始めた。
風上は瘋がいる方だ。
誰かの足音が風の音に混じって聴こえる。その誰かがこちらへ一歩一歩近づくと共に風の強さも増す。
その誰かは瘋だった。しかし、先ほどまでの雰囲気とは間反対で、怒りで我を忘れているという感じだ。
『能力を使った』
【解答者】の能力だ。
瘋が【破界者】の能力を使ったということか。
「覚悟を、、、決めたのか」
「薬利、、、」
別の誰かが瘋の昔の名前を呼んだ。それは肩を押さえ壁に寄りかかっている洋服屋だった。
「洋服、、、屋」
「はは、お互い傷だらけだね。直保」
そう。洋服屋も傷だらけだ。しかもかなり深い。
「立ってるのがやっと、さ」
そう言うと洋服屋は先程仕上がったという上着を直保に渡した。
「これは、、、?」
「こうなることを予想して作ったものさ。【破界】を止めてくれないかな。洋服屋としてでなく、利の、、、瘋の友人としての頼みだ」
洋服屋の目は真っ直ぐ直保を見ていた。
「分かった」
分かった。と言ったもののどうすればいいか分からないな。、、、まるで鬼だな。
瘋の髪は逆立ち、もがくことを諦めていた目はこの世を恨んでいるかのように睨み付けている。眼帯をしていた目は金色に光り、ライトのような役割を果たしていた。
「碧眼なのか、、、」
金と灰色の目。
「瘋の両目は灰色だったと記憶してるんだけどな、、、まるで瘋の兄がいるようだ」
「瘋の兄?」
「そう。瘋の兄の目の色は金なんだよ」
「そいつの名前は?」
「薬利」
「そいつも薬利なのか!?」
「そう。だけど、それが本名なのか分からない。あいつの家が代々受け継ぐのが『薬利』だから」
ややこしい。、、、仕立屋が恨んでいる『薬利』は瘋のことじゃない可能性が出てきた。




