新那加行きのバスの中
奈保に引っ張られて着いたのはここら辺で一番大きな駅だった。学園から駅までバスで40分程かかるはずなのだが10分程で着いた気がする。
「なんでそんなに疲れてるんだ?」
俺らは体力面も精神面も両親に鍛えられたおかけで20キロ近く走っても疲れない。
「教え、、、ないっ」
息を切らせながら答える奈保を見るのは久しぶりだ。いや、珍しいのか?
「、、、それよりっ!早くお祖父さんの所行こっ」
息を整えた奈保は新那加行きのバス停を捜すため俺の袖を引っ張った。
「、、、ところでバスで行くのか?」
祖父の家に行くには電車で尤宅町まで行きローカル電車で行くか、バスで新那加まで行きそこからローカル電車に乗るかのどちらかだ。尤宅町を通っていく方が20分程早く着く。それでも1時間はかかる。
「うんっ!たまにはゆっくり行きたいの。それに、、、」
「、、、?何か言ったか?」
「なんでもないよ」と笑顔を作って笑った。
何か隠していることがあるみたいだが触れたくなさそうなので触れない。例え家族でも女性の嫌がることはしたくない。
「おい、小柴奈保がいるぞ」
ニヤニヤとバスに乗ってきた男女6人が奈保を見て言った。
「ホント!男と一緒よ!」
「晴ちゃん、女言葉出てるよ」
「わっ、ごめん由紀。でもカッコいいんだもん!」
俺らは出口付近の二人席に座っている。多分、この6人は一番後ろに座ろうと進んでいたのだろう。
「おめえらうるせえぞ」そう言った体格のいい青年は彼らの中心人物なのだろう。
「晴ちゃん、カッコいいってホント、、、?ハウッ!」
「でしょ!」
「空子、、、」
「ごめん。駿くんの方がカッコいいよ」
空子と呼ばれた子は駿くんという犬みたいな子と恋人なのだな。
「とりあえず座れよ」
「そうだね。空子、行こう」
「うんっ!」
空子と駿くんは俺らの斜め後ろに座った。
「オレここでいいか?」
「ダメよ!奈保ちゃんが恐がってるじゃない!ワタシがここに座るのよ!」
「、、、」体格のいい青年はなにも言わずに2人の頭を殴った。
「晴紀は由紀と座れ。俺は陵と座る」
「良介は由紀と一緒じゃなくていいのかよ!」
「仕方ねえだろ。お前ら仲悪いんだから」
「仲良かったら良いんだな」
陵という子と晴ちゃんというお姉系は仲が悪いらしい。そして体格のいい良介と由紀は恋人らしい。
6人がバスに乗ってきた辺りから感じた嫌な予感は的中していた。
それからずっと、奈保は俺の手を握っていた。
バスの乗客は始発駅で乗った俺と奈保、3つ目のバス停、那加町で乗った彼ら6人だ。
彼らは俺らの周りに座っていた。
「奈保ちゃん、お兄さまと仲良くね」
奈保はいつの間にか晴ちゃんと仲良くなったようで、恥ずかしそうに頷いた。
「なんで晴ちゃんは奈保ちゃんと仲良くなってんだよ!オレも仲良くなりてぇー」
「アンタは無理!ワタシは奈保ちゃんをアンタから守ってたのよ」
「そういうお前はどうなんだよ!直保さんにイタズラしようとしてたくせに!」
そう。俺と奈保は後ろに座った晴ちゃんと陵のせいでゆっくりとできなかった。
「すまなかった。あの2人の意見が珍しく一致してると思ったら、、、」
「俺は別に大丈夫だ。奈保は少し恐がっていたな」
「奈保ちゃんごめんね。陵、恐かったでしょ」
「晴紀さんが庇ってくれたので大丈夫です」
奈保は困ったような嬉しいような不思議な表情でそう答えた。
晴ちゃんと陵は言い合いをしている。
「あれ、、、大丈夫ですか?」
「ああ、いつものことだから気にしないで。おい、道端でケンカすんな!迷惑だろーが!」
良介は2人を止めに向かい、拳骨をくり出した。
「急いでるみたいだから行っていいよ。奈保ちゃんがそわそわしてる」
由紀は「妹みたい」と呟いて奈保の頭を撫でた。




