表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/48

490年前

ー10年後ー


「ここにいたのか。利」

最上階のバルコニーから下を眺めていた男が振り返る。


「なんだ。洋か、、、」


「ここに来ても薬利は戻ってこないぞ」


「そんなこと、知ってる」

利は下を見下ろす。


「後3日で終戦条が結ばれるんだな」


「うん」

洋は利の隣で空を見る。


「終戦条の前にこの戦で死んだ者たちの位を上げるらしい。その発表は明日だ」


「、、、薬利や将軍様、立はどうなるんだろうな」


「、、、明日になんなきゃ分からない」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ー次の日ー


「利!」


「、、、洋」


生き残った者たちが上の(じょうのま)と呼ばれる城のなかで一番広い広間に集められた。


「いよいよ今日だな」


「洋は楽しそうだね」


「利のテンションが低いんだよ」


「、、、そうだね」



『位上げを行うとしよう』

広間のあちこちに置かれているスピーカーから声が発せられた。


「始まったな」


(りつ)仕立(したて)の名と屋の位を与える。お前はこれから仕立屋だ』


「ありがたき」


洋と利は目をあわせた。

あの日、薬利が父様と争う声を聞いた立はその場へ向かいそのまま居なくなった。

それなのに声がする。これは一体、、、


(よう)洋服(ようふく)の名と屋の位を与える。お前はこれから洋服屋だ』


「はっ!」


「洋、、、」


「なんか、呼ばれちゃった。屋の位ってなんだろ」苦笑いをした。


『そして最後、、、』

(とし)、薬利の名と明日行われる終戦条に参加しろ』


「は、はい!」

最後に呼ばれたこともあり、猫背よりだった背筋がピンっとのびた。


「薬利の名ってなんで?」


「分からない。それより終戦条に参加しろってなんなんだよ」


「僕だって分からないよ」


『以上で終了とする』

位上げ終了の声を聞くと利は放送が行われた場所へ駆け出した。


ドアをノックする。

中にはこの国の王がいるはずと思っていた。しかしその考えより王の方が上手だったのか部屋のなかには王の側近のような男とメイドが数名いただけだった。


「、、、いきなりなんですか」


「申し訳ありません。先程の位上げで気になったことがありまして」


「なるほど。気になったこと、とは?」


「はい。私が頂いた名前『薬利』ですが、あれは兄の名前です。兄の名前を位上げで使うのが不思議でたまらないのです」


「、、、なるほど。するとあなたは利ですね」


「え、はい。、、、!申し訳ありません!まだ名前を申してなくて、、、」


「いえ、それは大丈夫です。しかし、気を付けて下さいね」


男は深呼吸し続けた。

「あなたは何故、兄の『薬利』と命名されたのか。と聞きたいのですね」


「そうです」利は頷く。


「それは簡単な話です。あなたの兄は産まれてすぐ、『薬利』と命名された」


お分かりですね。「あなたの兄が亡くなったのだって薬利の、、、すいません。これは言ってはいけないものでした」


「薬利の名がどうしたんですか!?」


男は「申し訳ありません」と悲しそうに言うと利を帰した。



「薬利様、我主の気持ちを少しでも理解していただけたら幸いです」

メイドの1人が頭を下げて言う。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ドアをノックする音と共に開かれる。


「洋服屋殿、明日薬利様が着ていかれる服を仕立屋殿と共に仕立てていただきたい」


入ってきた人物を一瞬睨み付けてからため息をし「分かりました」と一言。


「ものわかりが良くて助かります。ではこちらへ」


洋服屋は老人の後をついていく。

老人は案内してる途中に何度も洋服屋を見て確認した。

階段を降り広間を通りすぎ中庭を通過しまた階段を降りる。


「こちらの部屋で作業をしていただきたい。仕立屋殿は既に作業をしています」

老人はそれだけ言うと進んできた道を帰っていく。


洋服屋はそれを見てから中で作業をしている仕立屋(立)の前へ行く。


仕立屋は洋服屋に気づかずに作業を続けていた。

「そこにある図面から作ってくれ」


洋服屋を一切見ずに窓側にある数十枚の紙を差して言った。



紙は全て違う構図だった。上から下から右から左から斜めから遠くから近くから、、、


「すごいな」思わず出てしまった。


仕立屋を見るが気付いてないようだ。


布を切ってミシンを使い服を作っていくが明らかに明日、薬利が着るようなものではない服が出来上がっていく。


「立、お前のこの図おかしくないか?」


「おかしくないがどうした。あと、俺は立じゃない」


「悪いな、今は仕立屋だったな。それより、これだと簡易服になるぞ」


「それでいいんだ」


「仕立屋、、、お前まさか薬利が明日の終戦条に呼ばれた理由を知ってるんじゃないか!?」


だったらどうした、と仕立屋は洋服屋を睨み付けた。


「10年前から、、、いや、全てはこの戦争が始まった時からこの結末が決められていた。多少の不具合はあったがな」


「それ、、、どういう意味だ?」

お前は知らなくていい。仕立屋の目がそう言っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ