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薬利

ーー仕立屋が瘋のことを「大罪人」と言っていた。それは瘋が捕まったこととなにか関係してるのか気になった。でも、それを追及するのは【黄金の姫】と呼ばれるもののすることではない。ーー


「気になるのか?姫さんは」


仕立屋に横目でみられて黄金の背中がゾクッとなる。

「姫をみないでください」その言葉と同時に小刀を仕立屋の耳のすぐ上に飛ばした。


「お前が、俺に、命令できると思ってるんのか?」


「思ってませんよ。だから、命令ではなくお願いなんです」


「薬利ィ、俺はお前にお願いの仕方を教えたよなぁ」


今までより悪と思われるような話し方をした仕立屋を一瞬、睨んだ。


「その顔はなんだ」


「いえ、なんでもありません」


「だったらさっさとしろ!」


黄金は不安そうに瘋を見つめた。それに気づいた瘋は安心させるように優しく笑い、『お願いの仕方』つまり土下座をした。


深く強く、それでいてしなやかに行った。布の擦れる音も懐に仕込まれている刀の音も出さず静かにその姿勢をとる。


それは今まで(100年ぐらい)黄金が見たことのなかった瘋の姿だった。



黄金の隣にいる奈保が手をそっと握り、アリスが微笑む。2人とも黄金を安心させようとしているのが分かる。


「それにしても、瘋、薬利ってスゴいわね」


「どうして?」アリスが小声で言うので黄金もつられて小声になる。


「前に噂で聞いたことがあるのだけれど、仕立屋と洋服屋は、、、とくに仕立屋は瘋、当時は薬利ね。彼に酷い仕打ちをしたらしいの。それこそ戦になって捕虜として捕まったときに、今回の案を考えたのは薬利だ。だから俺らは見逃してくれ、って心当たりない?」


「、、、瘋に初めて会ったのが屋敷のなかだから分からないけど、赤の御姉様が瘋は牢の中でも一番傷付いていたって仰っていたわ」


「何を話してるのかな?」


3人の背筋が凍った。すぐ近くに洋服屋がいたからだ。


「まあどうせ、彼のことだろうけどね」

洋服屋が瘋の方を一瞬見る。


「黄金の姫は瘋のことを好いていると思うんだけど、違う?」


「だったら何よ」


「何もないさ。ただ、変わったなと思ってさ。仕立屋は変わらないけどね。薬利に対する恨みも憎しみも。あのままじゃ彼は壊れるよ」


「なんであんなに仕立屋は瘋を憎んでいるの?」


「さあね、それは2人の問題だから俺は関係ない。ただ、昔の薬利の態度が気にくわなかったっていうのもあると思うよ」


「あなたは瘋を恨んだりしてないの?」


「なんで俺が!?薬利はもう死んだ。それは代わりない。彼は黄金の姫が恋する1人の男だ。それ以上でも以下でもない」


瘋はいったい何をしたのだろう。


「あぁ。勘違いしてるようだけど、彼は薬利じゃないよ」


「あなたが言うと本当のことだと思えないのだけど、、、」


洋服屋は笑みを浮かべ消えていた。

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