双子
夜の森というのはとても不気味だ。
不気味だけど神秘的。
月明かりに照らされた森は俺にとって、とても神秘的だ。
そんな森に足を踏み入れてから誰かの視線を感じる。
それは黒い生き物だと一瞬だけ見えた。
そして現在、俺はその生き物に追われていた。
深く森に踏み込んで判ったことだが、森のもっと奥に明かりがみえる。そしてその周辺に人が何人かいる。俺はそれを目指してスピードをあげた。
俺がスピードをあげると黒い生き物もスピードをあげる。
「いいっ、、、かげんっにしろ!」
息が切れてしまった、、、。
いつの間にか明かりの近くに来ていたようでその周りにいた何人かが驚いたような顔をしてこちらを見ていた。
「、、、?」
首を傾げ、「誰だろう」というのが伝わってくる。
俺はそのうちの1人、ブルーのワンピースを着た少女に声をかけていた。
「奈保、、、」
「、、、?」
少女は奈保ではないみたいで首をより傾げた。
奈保でないなら「アリス?」
思ったこと声が一緒に出ていたみたいだ。
「確かに私はアリスだけれど、、、」
アリス、、、帽子屋がこの〈ハザマの國〉のカギと言っていた少女。そして、、、
「俺は直保という。帽子屋に連れてこられた」
「、、、外の人ね。この子と同じ、、、」
そう言ってアリスが指差した方には光の中へ何か話している奈保がいた。
「奈保、、、!」
声をかけたが反応がない。何回か声をかけやっとこちらを向く。
奈保がこちらを向いた時、はじめて彼女は奈保であって奈保でないという疑問をもった。
「、、、誰だ?」
俺の質問に奈保であって奈保でない誰かが答えた。
「奈保です」
声と話し方で確信する。
「お前は奈保ではない。もう一度言う。お前は誰だ」
「ですから、私は奈保ですよ」
「いや、違う。奈保はそんな話し方をしない」
アリスの近くにいた二足歩行の猫が話しかけてきた。
「白銀の王の側近だと思うよ。確信はもてないけど、、、」
段々と声が小さくなっていくので自信をもてないのは確かだろう。
「白銀の王の側近がなぜ奈保の身体を乗っ取っている」
「分からない、、、」
その猫は首を横にふる。
、、、奈保の気配はまだ微かだがある。
目を閉じて奈保に呼びかける。
『奈保、、、。居るなら返事をしてくれ』
これは双子だから出来ること。
双子というのは古来から畏怖や禁忌の対象にされやすい。、、、不思議な力をもっていても不思議はない。
古書で読んだことがあるが、とある双子が中心となったとても不気味な事件があった。
現在、その力を使う時はない。まあ、使うようなことがあったらそれはとても重大なことだ。
俺はもう一度呼びかけてみた。
『奈保、、、!』
この呼びかけが奈保に届いているのか謎だが、やってみないと分からない。
ちなみにこれは双子の不思議な力の一つであるが、双子でない人も出来ることだ。ただ一般人はそれを無意識にやっている。
、、、「今、誰かに呼ばれた気がする」というのがそれだ。その誰かが確実に判るのが双子だという。それも過去の話だが、、、。
『、、、保』
「応えたな」今、少しだが奈保が答えた気がした。
さっきよりも気配がはっきりしてきた。
呼びかけを続けよう。
『奈保、奈保!』
「くっ、、、!」
側近が苦しみ始める。きっと奈保が頑張っている。
「奈保を返せ。白銀の王っ!」
「@?>〇∧’>#∵~!?ゞゝ〆」
「何を言っているのかさっぱり分からない!」
「・・゜〆々々!、、、」
「話を聞いてるのか、貴様は!」
交渉は無理だなと思いきや、
「、、、こほん!今、吾を侮辱したのは誰だ」
「侮辱した?誰が」
「この意味不明な声、吾を侮辱したのは貴様だな!」
「何、勘違いしている。俺は侮辱したつもりはない」
「はっ?貴様は現在も吾を侮辱しているでないか!」
「侮辱というのはおかしい。俺は侮辱するようなことをなにも言っていない」
「っんだと、貴様ぁ!」
「はあ、その光から出られないのに威勢はいいんだな」
「貴様!やはり吾を侮辱しているな!」
「王、少し落ち着いてください。今は療養してもらいませんとこの娘、、、」
「、、、んん、そうだな。器に馴染むためにもな」
「貴様、、、奈保を今、器と言ったな」
「?ああ、そうだが?この器は若いから馴染むのに時間がかかる。だが、しかしこの娘、奈保といったか、大人しく馴染むのにそう時間はかからないだろう」
奈保を器といい、馴染むのに時間がかかると言った。白銀の王は奈保の身体を乗っ取ろうとしている。
「直保、落ち着いて」
アリスが呼吸の荒くなった俺を落ち着かせようとしていた。目の前に移動したアリスに気付かなかったとは、、、相当苛立っていたのは確かだ。
「白銀の王はとても珍しい王だから何をするのか分からない。でも今、光から出られないのは確か」
「ボクらが閉じ込めたからね♪」
「初めまして、ボクらは幸と運。森の精霊みたいなもの。ボクらが能力を使って閉じ込めたの♪だからほら!光の中へ行こうとしている側近は何かをペタペタ触ってるだけ♪」
「あれはボクらの能力で作った見えない壁♪」
確かに、側近は何かをペタペタと触っている。
王は光の中で困ったような顔をみせた(実際には見えないけど、そんな感じがした)。
「やっと、、、追い付いた」




