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勇介君は巨乳が嫌い  作者: 諏部たぬき
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9話 デート

「いい天気だ」


 公園でベンチに座り、空を見上げながらポツリと呟く。


 本日は晴天なり。

 残暑も和らいできた日曜日の午前10時前。俺、高野勇介は待ち合わせ時間までの暇つぶしに、何故か雲を数えたりしている。


 「弁当のお礼が必要でしょ」と川原に押し切られる形で安達を映画に誘い、現在、その安達を待っている状況だ。


 しかし、「友達として」昼食をとるといつのまにかデートのような真似をすることになっているこの状況、不思議だ。


 川原の日焼けした肌と白い歯のコントラスト、スポーツ少女らしい外見が目に浮かぶ。その外見からは想像できないほどの策士である。


 この流れを作る展開力。サッカーやるなら絶対ボランチだな。

 まあ悪い奴ではないんだろうけど、行動力がありすぎる。俺としては物事はもっと慎重に進めたいのだが。


「高野君、お待たせしました」


 約束の時間まで5分ほどになったところで、安達が現れた。


 白いワンピースに上着を羽織った清楚な服装は、安達に良く似合っている。革のベルトでウエストを締めているのがアクセントかな。多分、こうしないと太って見えてしまうのだろう。大きい胸も大変だ。

 薄めに化粧もしているし、学校で見るよりずいぶん大人っぽい。


「よし、じゃあ行くか」


 そう言って俺が歩き出すと「えい」と小さく気合を入れた安達が俺の腕に絡みついてきた。


「デートですから」

「い、いや、デートじゃないから!」


 俺は安達を振り払い距離をとる。


「え、でも渚ちゃんが……」


 すごくがっかりした表情。


 なんだ、俺が悪いのか?


 俺は弁当のお礼として映画に誘っただけでデートなんて一言もいってないんだが。

 安達のしょんぼりした表情にひどく罪悪感を覚える。


「わ、わかった。 デートでもいいけど腕を組むのは勘弁してくれ。その、は、恥ずかしいだろ?」


 俺がしどろもどろに伝えると安達も「そうですね、私も少し恥ずかしかったです」と納得してくれた。


 腕を組めというのは川原の指示だろうな、絶対。

 異性とのまともなデートが初めてな上に、始めからこれでは先行きに不安を覚える。


 ともあれ、こうして俺と安達の初デート?は始まった。


 しかし、最初はどうなることかと思っていたが、映画館に向う途中、見終わった後とも意外と会話は盛り上がった。

 話題はこれから見る映画の話と映画の感想ばかりだったけど、なるほど、デートで映画ってのは奇抜さはないけれど、あまり共通の話題がない相手と打ち解けるのにはかなり有効なものだ。


 映画を見終わると、俺たちはちょっと遅めの昼食を取る事にした。

 ちなみに映画は可もなく不可もなくのアクション映画だった。斬新なカメラワークが売りと某双子のオカマさんが言っていたが、本当にそれしか見所がなかった。確かにカメラワークはすごかったけど……


 さて、俺が普段利用する店といえばバイト先の牛丼屋なのだが、さすがにデートで牛丼は無いよなあ。


 ふむ、どうしたものか。


 散々迷ったが、安達が俺に任せると言うので、結局俺の好みでイタリアの国旗が飾ってある喫茶店に決めた。


 店に入ると、俺たちは4人掛けのテーブル席に案内された。

 当然、安達は俺の対面に座っている。

 安達が机の端にあるメニューへ手を伸ばす。少し距離があるため、体を前に傾けて。


 うお、安達が前かがみなると襟首が重力で下に広がり、角度的に服の中が……

 おかしい!俺は巨乳嫌いのはずなのに視線を外せない!


 俺の内心の葛藤を知ってか知らずか「んっ」と声を漏らしながら安達はさらに腕を伸ばし前かがみになる。


 く、巨乳嫌いでも同級生の女子の服の中という、未知の世界への欲求には勝てんのか。

 安達は無事メニューを引き寄せると、広げながら「へー、パスタってこんなに種類が多いんですね」と俺の視線に気付いた風もなく呟くのだが、俺の目には安達らしい上品な白いレースのブラが焼きついていた。

 ……妙な敗北感と共に。

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